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11話『一時の安息と独立記念日』
3 どんなに恨んでも
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****♡Side・α(クライス)
「クライス。あなた、好いた方は居るの?」
ずっと一緒に居られるわけではないという事実があるため、滞在中は同じ部屋で過ごそうと決めたクライスとその祖父母。
恋などしないαの中で愛情を持つことの出来る”奇跡の子”。
もちろん、恋愛の話になるのは当然といえた。
「うん。俺、カイルのことが好きなんだ」
クライスの言葉に二人は顔を見合わせる。その意味は分かっていた。ずっと気になっていた、レンとカイルの関係。
二人が法の下に定められた恋人同士であり、実際にも愛し合う仲であることを知った。それでも変わらずカイルのことが好きだった。
───カイルは、俺がカイルを好きなことを知っている。
彼らは恋人同士であることを打ち明けてくれたが、だからといってクライスの気持ちに触れることはなかった。
恐らくβ同士の恋愛でありクライスがβであったなら、恋人がいるからと、クライスの気持ちに終止符を打たせるような言葉がかけられるのだろう。
しかしカイルは何も言わない。
クライスの気持ちを”恋”と受け取っていない、というわけではない。その理由について直接聞いたわけではないが、ある一つの結論に到った。
───αはラット状態にならない限り、性欲というものがないからだ。
そしてラット状態になっても、その欲望はΩにしか向けられることはないから。
仮に二股状態になってもクライスとは清い交際以外、不可能。
もちろん、あの凌辱されたαのようにカイルが求めるならば話は違ってしまうが。
あくまでも、好意を寄せているのはクライスの方。受け止めても問題がないから、カイルは何も言わないのだという結論に到る。そして恐らくその想像は正しい。
祖父母が顔を見合わせたのを見て、確信した。
───βをいくら好きになっても、どうこうできない。
でも、カイルへの想いは変わらない。
傍にいたい、笑顔が見たい、名前を呼んで欲しい。ハグがしたい。
そう、彼を傍に感じていたいのだ。
レンが羨ましくないというのは嘘にしかならないが。
自分の持って産まれた性ばかりは、どうにもならない。
「どうにもならないことは、わかってるよ」
せめて自分がレンのように小柄で可愛らしかったなら、カイルに欲情させることが出来るかもしれないし、抱かれることもできたかもしれない。
だが育ってしまった身長は縮めることなんてできないのだ。
───俺がΩだったら……せめてβだったならな。
望まれて産まれて来たことは理解しているが、こんな時はやはりそんなことを考えてしまう。
クライスは、あの可愛らしいレンがカイルを抱く方なのだという事を知らなかったためである。
しかし近い将来その事を知り、先入観で生きている自分を反省することになるのだった。
「クライス。あなた、好いた方は居るの?」
ずっと一緒に居られるわけではないという事実があるため、滞在中は同じ部屋で過ごそうと決めたクライスとその祖父母。
恋などしないαの中で愛情を持つことの出来る”奇跡の子”。
もちろん、恋愛の話になるのは当然といえた。
「うん。俺、カイルのことが好きなんだ」
クライスの言葉に二人は顔を見合わせる。その意味は分かっていた。ずっと気になっていた、レンとカイルの関係。
二人が法の下に定められた恋人同士であり、実際にも愛し合う仲であることを知った。それでも変わらずカイルのことが好きだった。
───カイルは、俺がカイルを好きなことを知っている。
彼らは恋人同士であることを打ち明けてくれたが、だからといってクライスの気持ちに触れることはなかった。
恐らくβ同士の恋愛でありクライスがβであったなら、恋人がいるからと、クライスの気持ちに終止符を打たせるような言葉がかけられるのだろう。
しかしカイルは何も言わない。
クライスの気持ちを”恋”と受け取っていない、というわけではない。その理由について直接聞いたわけではないが、ある一つの結論に到った。
───αはラット状態にならない限り、性欲というものがないからだ。
そしてラット状態になっても、その欲望はΩにしか向けられることはないから。
仮に二股状態になってもクライスとは清い交際以外、不可能。
もちろん、あの凌辱されたαのようにカイルが求めるならば話は違ってしまうが。
あくまでも、好意を寄せているのはクライスの方。受け止めても問題がないから、カイルは何も言わないのだという結論に到る。そして恐らくその想像は正しい。
祖父母が顔を見合わせたのを見て、確信した。
───βをいくら好きになっても、どうこうできない。
でも、カイルへの想いは変わらない。
傍にいたい、笑顔が見たい、名前を呼んで欲しい。ハグがしたい。
そう、彼を傍に感じていたいのだ。
レンが羨ましくないというのは嘘にしかならないが。
自分の持って産まれた性ばかりは、どうにもならない。
「どうにもならないことは、わかってるよ」
せめて自分がレンのように小柄で可愛らしかったなら、カイルに欲情させることが出来るかもしれないし、抱かれることもできたかもしれない。
だが育ってしまった身長は縮めることなんてできないのだ。
───俺がΩだったら……せめてβだったならな。
望まれて産まれて来たことは理解しているが、こんな時はやはりそんなことを考えてしまう。
クライスは、あの可愛らしいレンがカイルを抱く方なのだという事を知らなかったためである。
しかし近い将来その事を知り、先入観で生きている自分を反省することになるのだった。
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