74 / 145
11話『一時の安息と独立記念日』
1 ちょっと寂しくなった部屋で
しおりを挟む
****♡Side・Ω(レン)
「独立記念日が終わるまで、二人は屋敷に滞在してくださるそうだよ」
注文した受信機がカイルの屋敷に直接届くこともあり、クライスの祖父母とカイルは事前に話し合いをし、決めていたらしい。
レンはカイルの腕に自分の両腕を絡め、クライスに説明をする様子をニコニコして見ていた。
───家族が居るのはとても羨ましい。
けれど、クライスが幸せそうなのが凄く嬉しい。
「部屋を共にしてもいいし、クライスの使っている部屋の隣にある客間に滞在するのもいい。そこはクライスと三人で決めて欲しい」
夕食の後のことである。
クライスとその祖父母は、すっかり打ち解けていた。
どうするかはクライスの部屋で決めると言い残し、彼らは一旦彼の部屋へ向かうことにしたようだ。
さっきまで賑やかだったため、カイルと二人きりになると少し寂しい気持ちになる。
「どうしたの? レン」
カイルに優しく抱き寄せられ、レンは彼を見上げた。
「ちょっと寂しくなっちゃった」
彼は、”そっか”と言ってレンの髪にちゅっと口づけると、
「じゃあ、一緒にお風呂に入ろうか」
と提案してくれる。
恐らく狭いところなら密度があがり、寂しさを軽減できると考えたようだ。
とは言え、二人が入るには十分な広さがある。
βの独立国ではαの統治国家とは異なり、所帯を持つのが一般的。
バスルームは子を持った時のことを想定し、使いやすくするため広く設計されているのだ。
それは何も子供を持つのが当たり前と言う偏見ではない。大は小を兼ねると言うものに近い。なので、住宅も単身向けでありながら所帯を持っても十分暮らせるほどの広さのところが一般的だ。
それでいて家賃は高くない。
国が充分な資産を持っているため潤っており、国民が暮らしやすいよう住宅には補助が出ているためだ。
「うん。お風呂でイチャイチャしようよ、カイル」
レンは、カイルに悪戯する気満々であったが、
「お風呂は響くからダメだよ」
と言われてしまう。
「むうッ」
不満そうに頬を膨らませると何故か、
「レン、可愛い」
と彼の両手に頬を包まれる。
「ベッドでイチャイチャしようよ」
その言葉に、彼はいつだって優しいことを思い出す。
どんな我儘であっても、状況的に無理でなければ受け入れてくれる。
「ホント?」
「うん。でも静かにだよ?」
と、彼。
レンは大好きな彼にちょっとだけ意地悪をしてみたくなった。
最近、彼がクライスばかり構うので、甘えたい気持ちもあってのことだ。
「声出すのは、カイルだから僕は静かだよ」
とレンが言えば、途端に真っ赤になる彼。
「そ、そうだね。静かにするよ」
恥ずかしそうに、両手で顔を覆う彼がとても可愛い。
「じゃあ、お風呂行こう」
「背中洗ってあげるよ、レン」
「うふふ。じゃあ、前洗ってあげるッ」
「なんで!」
抗議するカイルの手を掴むと、レンは楽しそうに浴室へと向かうのだった。
「独立記念日が終わるまで、二人は屋敷に滞在してくださるそうだよ」
注文した受信機がカイルの屋敷に直接届くこともあり、クライスの祖父母とカイルは事前に話し合いをし、決めていたらしい。
レンはカイルの腕に自分の両腕を絡め、クライスに説明をする様子をニコニコして見ていた。
───家族が居るのはとても羨ましい。
けれど、クライスが幸せそうなのが凄く嬉しい。
「部屋を共にしてもいいし、クライスの使っている部屋の隣にある客間に滞在するのもいい。そこはクライスと三人で決めて欲しい」
夕食の後のことである。
クライスとその祖父母は、すっかり打ち解けていた。
どうするかはクライスの部屋で決めると言い残し、彼らは一旦彼の部屋へ向かうことにしたようだ。
さっきまで賑やかだったため、カイルと二人きりになると少し寂しい気持ちになる。
「どうしたの? レン」
カイルに優しく抱き寄せられ、レンは彼を見上げた。
「ちょっと寂しくなっちゃった」
彼は、”そっか”と言ってレンの髪にちゅっと口づけると、
「じゃあ、一緒にお風呂に入ろうか」
と提案してくれる。
恐らく狭いところなら密度があがり、寂しさを軽減できると考えたようだ。
とは言え、二人が入るには十分な広さがある。
βの独立国ではαの統治国家とは異なり、所帯を持つのが一般的。
バスルームは子を持った時のことを想定し、使いやすくするため広く設計されているのだ。
それは何も子供を持つのが当たり前と言う偏見ではない。大は小を兼ねると言うものに近い。なので、住宅も単身向けでありながら所帯を持っても十分暮らせるほどの広さのところが一般的だ。
それでいて家賃は高くない。
国が充分な資産を持っているため潤っており、国民が暮らしやすいよう住宅には補助が出ているためだ。
「うん。お風呂でイチャイチャしようよ、カイル」
レンは、カイルに悪戯する気満々であったが、
「お風呂は響くからダメだよ」
と言われてしまう。
「むうッ」
不満そうに頬を膨らませると何故か、
「レン、可愛い」
と彼の両手に頬を包まれる。
「ベッドでイチャイチャしようよ」
その言葉に、彼はいつだって優しいことを思い出す。
どんな我儘であっても、状況的に無理でなければ受け入れてくれる。
「ホント?」
「うん。でも静かにだよ?」
と、彼。
レンは大好きな彼にちょっとだけ意地悪をしてみたくなった。
最近、彼がクライスばかり構うので、甘えたい気持ちもあってのことだ。
「声出すのは、カイルだから僕は静かだよ」
とレンが言えば、途端に真っ赤になる彼。
「そ、そうだね。静かにするよ」
恥ずかしそうに、両手で顔を覆う彼がとても可愛い。
「じゃあ、お風呂行こう」
「背中洗ってあげるよ、レン」
「うふふ。じゃあ、前洗ってあげるッ」
「なんで!」
抗議するカイルの手を掴むと、レンは楽しそうに浴室へと向かうのだった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説





両片思いのI LOVE YOU
大波小波
BL
相沢 瑠衣(あいざわ るい)は、18歳のオメガ少年だ。
両親に家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら毎日を何とか暮らしている。
そんなある日、大学生のアルファ青年・楠 寿士(くすのき ひさし)と出会う。
洋菓子店でミニスカサンタのコスプレで頑張っていた瑠衣から、売れ残りのクリスマスケーキを全部買ってくれた寿士。
お礼に彼のマンションまでケーキを運ぶ瑠衣だが、そのまま寿士と関係を持ってしまった。
富豪の御曹司である寿士は、一ヶ月100万円で愛人にならないか、と瑠衣に持ち掛ける。
少々性格に難ありの寿士なのだが、金銭に苦労している瑠衣は、ついつい応じてしまった……。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる