68 / 145
10話『君への愛情が芽生える時』
2 ずっと言えなかったこと
しおりを挟む
****♡Side・Ω(レン)
───いいなあ……クライス。
「レン?」
頬杖をつきクライスを見つめていると、彼が不思議そうな顔をする。自分が知らず知らずのうちに、寂しそうな顔をしていたことに気付かなかった。
「そんな顔して、どうしたの?」
心配そうにレンの顔をのぞき込む、彼。
カイルには言えないことを、彼になら言えそうな気がした。
「僕、両親に会ったことないんだ。いいなって思って」
ずっと思っている。
パパやママに甘えるってどんな感じなのだろうかと想像していた。
彼はハッとした表情をする。どうやら、先日学んだこの国の法律を思い出しているように見えた。
「それって……」
「うん。僕はΩであることが直ぐにわかって、国に預けられたんだ」
産まれてから判別がつきづらいのは、Ω女性体とβ女性体のみである。他の性には分かりやすい特徴がある。
特にΩ男性体は男性機能の他に卵巣を持っている為、身体をスキャンすればすぐに分かってしまう。
そうやってレンは両親から引き離されたのだ。
「僕は……いらない子だったのかな……」
カイルを悲しませてしまうから、言えなかった想い。
クライスはぎゅっとレンの手を包み込んだ。彼の方が泣きそうな顔をしていて驚く。
「ねえ、レン」
手から伝わる彼の体温。
言葉にしてしまったら胸が苦しくなって、俯く。
「αの俺が言うのは、おこがましいかも知れないけれど。レンの両親は、レンことが本当に大切だったから国に預けたんだと思うよ」
その言葉に、俯いていたレンは再び彼の方を見上げた。
「Ω男性体は、ほんとに希少な存在だ。もし、αに連れ去られたりしたら。発情期に噛まれたりしたらって思ったんだと思う」
確かにどんなに金持ちの家でも、Ω男性体の子を自分で育てる夫婦は少ない。それだけ希少で守らなければいけない存在なのだ。
もしαに連れ去られでもすれば、αの統治国家で卵巣が使い物にならなくなるまで、ただ卵子を取り出すだけの道具とされる。
βは愛を持つ者だ。愛しい我が子に、そんな人生を歩ませたいはずがない。
「レンの両親はさ。レンが大人になって、自分で選んだ道を歩むことが出来るようにと願って、国に預けたんじゃないのかな。レンのことを愛していたからこそ」
彼の言葉に、レンの瞳から自然と涙が転げ落ちる。
「レン」
いつの間にか傍に来ていたカイルがウッドデッキを跨いで座ると、
「カイル」
声を殺して泣くレンを抱きしめた。
「寂しかったの?」
と、尋ねるカイル。
その手は優しく背中を撫でてくれる。レンは素直に頷いた。
「気づいてあげられなくて、ごめんねレン」
「うぅ……」
「もう少し、我慢していて。それまでは、俺がレンの両親の分まで愛してあげるから」
───そうか……二十歳になったら会えるんだ。
パパとママに……。
何故か向かい側の席のクライスがもらい泣きしている。そんな彼にハンカチを渡す執事の姿が、レンの視界の端には映りこんでいたのだった。
───いいなあ……クライス。
「レン?」
頬杖をつきクライスを見つめていると、彼が不思議そうな顔をする。自分が知らず知らずのうちに、寂しそうな顔をしていたことに気付かなかった。
「そんな顔して、どうしたの?」
心配そうにレンの顔をのぞき込む、彼。
カイルには言えないことを、彼になら言えそうな気がした。
「僕、両親に会ったことないんだ。いいなって思って」
ずっと思っている。
パパやママに甘えるってどんな感じなのだろうかと想像していた。
彼はハッとした表情をする。どうやら、先日学んだこの国の法律を思い出しているように見えた。
「それって……」
「うん。僕はΩであることが直ぐにわかって、国に預けられたんだ」
産まれてから判別がつきづらいのは、Ω女性体とβ女性体のみである。他の性には分かりやすい特徴がある。
特にΩ男性体は男性機能の他に卵巣を持っている為、身体をスキャンすればすぐに分かってしまう。
そうやってレンは両親から引き離されたのだ。
「僕は……いらない子だったのかな……」
カイルを悲しませてしまうから、言えなかった想い。
クライスはぎゅっとレンの手を包み込んだ。彼の方が泣きそうな顔をしていて驚く。
「ねえ、レン」
手から伝わる彼の体温。
言葉にしてしまったら胸が苦しくなって、俯く。
「αの俺が言うのは、おこがましいかも知れないけれど。レンの両親は、レンことが本当に大切だったから国に預けたんだと思うよ」
その言葉に、俯いていたレンは再び彼の方を見上げた。
「Ω男性体は、ほんとに希少な存在だ。もし、αに連れ去られたりしたら。発情期に噛まれたりしたらって思ったんだと思う」
確かにどんなに金持ちの家でも、Ω男性体の子を自分で育てる夫婦は少ない。それだけ希少で守らなければいけない存在なのだ。
もしαに連れ去られでもすれば、αの統治国家で卵巣が使い物にならなくなるまで、ただ卵子を取り出すだけの道具とされる。
βは愛を持つ者だ。愛しい我が子に、そんな人生を歩ませたいはずがない。
「レンの両親はさ。レンが大人になって、自分で選んだ道を歩むことが出来るようにと願って、国に預けたんじゃないのかな。レンのことを愛していたからこそ」
彼の言葉に、レンの瞳から自然と涙が転げ落ちる。
「レン」
いつの間にか傍に来ていたカイルがウッドデッキを跨いで座ると、
「カイル」
声を殺して泣くレンを抱きしめた。
「寂しかったの?」
と、尋ねるカイル。
その手は優しく背中を撫でてくれる。レンは素直に頷いた。
「気づいてあげられなくて、ごめんねレン」
「うぅ……」
「もう少し、我慢していて。それまでは、俺がレンの両親の分まで愛してあげるから」
───そうか……二十歳になったら会えるんだ。
パパとママに……。
何故か向かい側の席のクライスがもらい泣きしている。そんな彼にハンカチを渡す執事の姿が、レンの視界の端には映りこんでいたのだった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説




両片思いのI LOVE YOU
大波小波
BL
相沢 瑠衣(あいざわ るい)は、18歳のオメガ少年だ。
両親に家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら毎日を何とか暮らしている。
そんなある日、大学生のアルファ青年・楠 寿士(くすのき ひさし)と出会う。
洋菓子店でミニスカサンタのコスプレで頑張っていた瑠衣から、売れ残りのクリスマスケーキを全部買ってくれた寿士。
お礼に彼のマンションまでケーキを運ぶ瑠衣だが、そのまま寿士と関係を持ってしまった。
富豪の御曹司である寿士は、一ヶ月100万円で愛人にならないか、と瑠衣に持ち掛ける。
少々性格に難ありの寿士なのだが、金銭に苦労している瑠衣は、ついつい応じてしまった……。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる