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9話『事件を追う者ども』
7 独立国への入国審査事情
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****♡Side・β(カイル)
───そんなに俺に逢いたかったんだ。可愛い。
αらしくないとは、人間らしいという事を知る。
怯える彼を可愛いと思うのだから、自分はどうかしているのだろう。
「クライス、大丈夫だよ。俺たちが守るから」
カイルはレンと目を合わせ、互いに頷く。
同じ目標を持つことでなんだかレンとの絆が深くなった気がする。
レンは先日クライスのことを、
『友人かな』
と言っていた。
愛しいレンに友人と思える人が出来ることは、素直に嬉しい。クライスに出逢って自分もレンも少し変わった気がする。
「怒ってないの?」
と、クライス。
しかし正直なところ、不正な手段で入国許可証を手に入れて入国してくるものは、珍しくないのだ。ただこれには一度目と二度目では対偶が異なる。
この国に正規ルートで入国する者は、ほぼ仕事関係。
入(出)国許可証を出し渋っているのはβの独立国ではなく、αの統治国家の方なのだ。
書類審査を終えαの統治国家からβの独立国へ申請がなされ、βの独立国から許可証が送られてくる。それを当人へ郵送する手はずになっていた。
大手の企業の場合は一括で申請されるため面倒はないのだが、個人となるとそうもいかない。
つまりお役所が手一杯で、書類審査すらしてもらえないという事が起きる。
だがこれは仕方のないことなのだ。
βの独立国に比べαの統治国家は、圧倒的に人口が少なくアンドロイドがそれを補ってはいるが、国家間ともなると間違いが起こっては困るため、手作業となる。
そんな背景からも初入国に関しての入国許可証については、入管が目をつぶっている節があるのだ。
この国ではそんなモノよりも、ラットが抑制できるかどうかの方が重要という事。
では二度目はどうかと言えば、全く対応が違う。
一度目の入国で問題が無ければ、次からはβの独立国の入管へ入国審査が委託されるシステムとなっている。
入国させるかしないかは、この国次第という事。つまり不正入国を行うのは許可されていないから、という結論となる。
よって以降その者はブラックリストに載り、入国禁止。
こうして全体を眺めれば、βの独立国はαにとことん厳しい国……と言うわけでもないのだ。それはどんなに仲が悪かろうとも、持ちつ持たれつの部分があるからである。
カイルはその辺の入国に関する事情を彼に説明した。
この国から出ることのないレンも、この事情については知っている。クライスは自分の無知さを恥じたが、そもそも公にされていない内容だ。
「ねえ、カイル」
「うん?」
「俺、この国に居る祖父母に手紙を出したいのだけれど」
彼はぎゅっとロケットを握って。
───そう言えば、彼の母はこの国の人だったな。
ポストはすぐそこだが彼が直接手紙を出すことが出来ないことに気づき、カイルは快く頷いたのだった。
───そんなに俺に逢いたかったんだ。可愛い。
αらしくないとは、人間らしいという事を知る。
怯える彼を可愛いと思うのだから、自分はどうかしているのだろう。
「クライス、大丈夫だよ。俺たちが守るから」
カイルはレンと目を合わせ、互いに頷く。
同じ目標を持つことでなんだかレンとの絆が深くなった気がする。
レンは先日クライスのことを、
『友人かな』
と言っていた。
愛しいレンに友人と思える人が出来ることは、素直に嬉しい。クライスに出逢って自分もレンも少し変わった気がする。
「怒ってないの?」
と、クライス。
しかし正直なところ、不正な手段で入国許可証を手に入れて入国してくるものは、珍しくないのだ。ただこれには一度目と二度目では対偶が異なる。
この国に正規ルートで入国する者は、ほぼ仕事関係。
入(出)国許可証を出し渋っているのはβの独立国ではなく、αの統治国家の方なのだ。
書類審査を終えαの統治国家からβの独立国へ申請がなされ、βの独立国から許可証が送られてくる。それを当人へ郵送する手はずになっていた。
大手の企業の場合は一括で申請されるため面倒はないのだが、個人となるとそうもいかない。
つまりお役所が手一杯で、書類審査すらしてもらえないという事が起きる。
だがこれは仕方のないことなのだ。
βの独立国に比べαの統治国家は、圧倒的に人口が少なくアンドロイドがそれを補ってはいるが、国家間ともなると間違いが起こっては困るため、手作業となる。
そんな背景からも初入国に関しての入国許可証については、入管が目をつぶっている節があるのだ。
この国ではそんなモノよりも、ラットが抑制できるかどうかの方が重要という事。
では二度目はどうかと言えば、全く対応が違う。
一度目の入国で問題が無ければ、次からはβの独立国の入管へ入国審査が委託されるシステムとなっている。
入国させるかしないかは、この国次第という事。つまり不正入国を行うのは許可されていないから、という結論となる。
よって以降その者はブラックリストに載り、入国禁止。
こうして全体を眺めれば、βの独立国はαにとことん厳しい国……と言うわけでもないのだ。それはどんなに仲が悪かろうとも、持ちつ持たれつの部分があるからである。
カイルはその辺の入国に関する事情を彼に説明した。
この国から出ることのないレンも、この事情については知っている。クライスは自分の無知さを恥じたが、そもそも公にされていない内容だ。
「ねえ、カイル」
「うん?」
「俺、この国に居る祖父母に手紙を出したいのだけれど」
彼はぎゅっとロケットを握って。
───そう言えば、彼の母はこの国の人だったな。
ポストはすぐそこだが彼が直接手紙を出すことが出来ないことに気づき、カイルは快く頷いたのだった。
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