63 / 145
9話『事件を追う者ども』
4 辿り着けない真実
しおりを挟む
****♡Side・β(カイル)
───心あたりがないわけじゃないが、あの人を疑うには早計過ぎる。
もし間違っていた時のことを考える。
相手に迷惑をかける上に、自惚れが過ぎるというものだ。だが確信したこともある。犯人はβに違いない。
でなければ体格を変える必要はないし、自分がわざわざαだと告げる必要もなかったはずなのだ。
───問題は”発情促進剤”を使って何をしたかったのか?
たぶんこれが事件のカギであろう。
αであるダメ押しがしたかったのか。いや違う、恐らくは”レンに魂の番”がいると思わせたかったのだ。
そこでもしやとカイルは思う。
”クライスが来たことが想定外……いや、計画を狂わせたのではないか?”
クライスに目撃されていなければ事件にならなかった可能性もある。
だがこの推理には少し無理がある。
魂の番がいると思わせることが出来たとしても、こちらで調べれば直ぐに分かってしまう。何故なら、この国に居るαの行動は入管や警察が把握済だからだ。
となると、瓶を持ち帰るつもりはなかったという可能性が浮上する。想定外の訪問者があったことから自分の素性がバレるのを恐れ、瓶を持ち帰ったのかもしれない。
「ホテルの従業員、入管の職員、警察関係者」
刑事はカイルが推理を組み立てている間にも、クライスから事情を聞いていた。どう考えても彼らが事件に関与しているとは思えないが、刑事はもう一度彼らの中から外部に情報が漏れていないか調査するという。
「ねえ、カイル」
「うん?」
考え事をしていたレンに声をかけられ、窓の外に目をやる。
彼がそちらをじっと見ていたからだ。
「クライスが来たことは偶然だとして、犯人がこの時期を狙っていたのは偶然じゃないよね」
それはカイルも思うところであった。
外からある程度監視をしていれば、このうちのΩの発情期の周期は簡単に分かってしまう。何故なら外部からの侵入を防ぐために特別な門を閉めるからだ。
発情期のΩのフェロモンは、通常のフェロモン対策ではβには不安が残る。もしもの時のために、まるで要塞で使われるようなイカツイ鋼鉄の門を閉めるのだ。
元々ある高い塀、ちょっとやそっそではびくともしない門。しかし逆を言えば、それは発情期が来ていると知らせるようなモノであったし、Ωが暮らしていると誰の目にも明らかなのである。
───発情期から外れた時でなければ、魂の番が居ることなど信じさせることは出来ない。
発情するはずない時にレンが発情してしまったから、カイルはその可能性を疑った。そして、もうすぐ”独立記念日”がやってくる。
独立記念日間近に犯行に及んだのは、決して偶然ではないはずだ。
クライスがこちらに向かっていることに気づきながらも、危険を冒してまで決行したのだから。
───ん?
クライスがこちらに向かうことに気づいていた?
カイルはもう一息のところで、真実にたどり着けなかったのである。
───心あたりがないわけじゃないが、あの人を疑うには早計過ぎる。
もし間違っていた時のことを考える。
相手に迷惑をかける上に、自惚れが過ぎるというものだ。だが確信したこともある。犯人はβに違いない。
でなければ体格を変える必要はないし、自分がわざわざαだと告げる必要もなかったはずなのだ。
───問題は”発情促進剤”を使って何をしたかったのか?
たぶんこれが事件のカギであろう。
αであるダメ押しがしたかったのか。いや違う、恐らくは”レンに魂の番”がいると思わせたかったのだ。
そこでもしやとカイルは思う。
”クライスが来たことが想定外……いや、計画を狂わせたのではないか?”
クライスに目撃されていなければ事件にならなかった可能性もある。
だがこの推理には少し無理がある。
魂の番がいると思わせることが出来たとしても、こちらで調べれば直ぐに分かってしまう。何故なら、この国に居るαの行動は入管や警察が把握済だからだ。
となると、瓶を持ち帰るつもりはなかったという可能性が浮上する。想定外の訪問者があったことから自分の素性がバレるのを恐れ、瓶を持ち帰ったのかもしれない。
「ホテルの従業員、入管の職員、警察関係者」
刑事はカイルが推理を組み立てている間にも、クライスから事情を聞いていた。どう考えても彼らが事件に関与しているとは思えないが、刑事はもう一度彼らの中から外部に情報が漏れていないか調査するという。
「ねえ、カイル」
「うん?」
考え事をしていたレンに声をかけられ、窓の外に目をやる。
彼がそちらをじっと見ていたからだ。
「クライスが来たことは偶然だとして、犯人がこの時期を狙っていたのは偶然じゃないよね」
それはカイルも思うところであった。
外からある程度監視をしていれば、このうちのΩの発情期の周期は簡単に分かってしまう。何故なら外部からの侵入を防ぐために特別な門を閉めるからだ。
発情期のΩのフェロモンは、通常のフェロモン対策ではβには不安が残る。もしもの時のために、まるで要塞で使われるようなイカツイ鋼鉄の門を閉めるのだ。
元々ある高い塀、ちょっとやそっそではびくともしない門。しかし逆を言えば、それは発情期が来ていると知らせるようなモノであったし、Ωが暮らしていると誰の目にも明らかなのである。
───発情期から外れた時でなければ、魂の番が居ることなど信じさせることは出来ない。
発情するはずない時にレンが発情してしまったから、カイルはその可能性を疑った。そして、もうすぐ”独立記念日”がやってくる。
独立記念日間近に犯行に及んだのは、決して偶然ではないはずだ。
クライスがこちらに向かっていることに気づきながらも、危険を冒してまで決行したのだから。
───ん?
クライスがこちらに向かうことに気づいていた?
カイルはもう一息のところで、真実にたどり着けなかったのである。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる