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7話『βの国の独立記念日』
2 豊かな独立国
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****♡Side・Ω(レン)
───魂の番……。
この国ではΩが魂の番に出逢ったという話は、聞いたことがない。
仮にいたところで、世界のどこにいるかもわからない。そんな奇跡が果たして、自分の身に起こるだろうか?
気になることは他にもある。それはカイルの反応だ。
最初に尋ねて来た人がβである可能性については、納得できたし異論はないが、カイルが何か隠しているような気がしてならない。
───もしかして、心当たりがあるんじゃ?
レンは食後、定位置で段々と街に明かりが灯る様子を眺めていた。日が落ち、世界に闇がかかる。夕方に寂しさを感じるものの、街に灯がともり始めると温かさを感じた。不思議な時間だ。
「レン」
部屋の明かりを間接照明に切り替えた彼は、ワイングラスにフルーツを入れたものをレンの前に置くと隣に腰かけた。
「お仕事は終わり?」
食後、彼は仕事の書類を整理すると言って書斎へ。
日課のようなもので、ものの一時間もすればレンの元へ戻ってくる。ちゃんとした恋人同士となった今、傍に居られないのは寂しいが、我慢することも大切だと思っていた。
「明日、ここへ来るαってどんな人かな」
レンはαと直接、接したことがない。一般にα性の者は容姿が整っており、頭の回転が速く、自意識過剰で奢り高ぶった者が多いと聞く。
それでもβの国に入国してくる者は、ビジネスとしての入国なので礼儀正しく、本来の気性を前面に出すものは滅多にいない。
「捜査協力をしてくれ、わざわざ俺の要望にも応えてくれるというから、一般のαよりも話の分かるやつなのかも知れない」
「うーん。でも、元々カイルに仕事の用で入国した人でしょ?」
カイルに恩を売って置けば交渉がスムーズに行くと考えている打算的な人かも知れない、とレンが進言すると、
「俺もそれは考えたんだが……」
何故かカイルは眉を寄せ、
「俺の扱っている商品は、何処にでもあるようなものなんだ」
と言う。
「つまり?」
「仮に俺との交渉が決裂しても、代わりの相手はいくらでもいるということだ」
───ん?
ということは、そのαは”カイル自体”に価値を見出しているということ?
カイルが皇子であったのはだいぶ前のことである。
カイルがこの国の第一皇子であったことを国民は皆知っているが、彼が交易の仕事を始めたのはレンと暮らし始めてから。
つまり皇子であることを剥奪されてから。αの統治国家で交易をするのに、わざわざ”元皇子”などと言いはしない。
ならばカイルに見出した価値とは、なんだろうとレンは考える。
「カイルって仕事で評判が良かったりするの?」
それは素朴な疑問であった。
「どうだろうね。この国のβというのは交易で相手を騙したり、ぼったくりをする者はいなから」
この国では、そんなことをする必要はないのだ。物価は安いし、国がいろんな補助をしてくれる。国自体に相当な財力があるためだ。
わざわざ危険な真似をし小銭を稼ぐくらいなら、国に申請して補助を受ける方が確実なのだ。
「それに、αはいちいち個人の評判なんて気にしないだろう?」
他人に興味を持たない。それがαの特性だ。
レンは益々分からなくなるのだった。
───魂の番……。
この国ではΩが魂の番に出逢ったという話は、聞いたことがない。
仮にいたところで、世界のどこにいるかもわからない。そんな奇跡が果たして、自分の身に起こるだろうか?
気になることは他にもある。それはカイルの反応だ。
最初に尋ねて来た人がβである可能性については、納得できたし異論はないが、カイルが何か隠しているような気がしてならない。
───もしかして、心当たりがあるんじゃ?
レンは食後、定位置で段々と街に明かりが灯る様子を眺めていた。日が落ち、世界に闇がかかる。夕方に寂しさを感じるものの、街に灯がともり始めると温かさを感じた。不思議な時間だ。
「レン」
部屋の明かりを間接照明に切り替えた彼は、ワイングラスにフルーツを入れたものをレンの前に置くと隣に腰かけた。
「お仕事は終わり?」
食後、彼は仕事の書類を整理すると言って書斎へ。
日課のようなもので、ものの一時間もすればレンの元へ戻ってくる。ちゃんとした恋人同士となった今、傍に居られないのは寂しいが、我慢することも大切だと思っていた。
「明日、ここへ来るαってどんな人かな」
レンはαと直接、接したことがない。一般にα性の者は容姿が整っており、頭の回転が速く、自意識過剰で奢り高ぶった者が多いと聞く。
それでもβの国に入国してくる者は、ビジネスとしての入国なので礼儀正しく、本来の気性を前面に出すものは滅多にいない。
「捜査協力をしてくれ、わざわざ俺の要望にも応えてくれるというから、一般のαよりも話の分かるやつなのかも知れない」
「うーん。でも、元々カイルに仕事の用で入国した人でしょ?」
カイルに恩を売って置けば交渉がスムーズに行くと考えている打算的な人かも知れない、とレンが進言すると、
「俺もそれは考えたんだが……」
何故かカイルは眉を寄せ、
「俺の扱っている商品は、何処にでもあるようなものなんだ」
と言う。
「つまり?」
「仮に俺との交渉が決裂しても、代わりの相手はいくらでもいるということだ」
───ん?
ということは、そのαは”カイル自体”に価値を見出しているということ?
カイルが皇子であったのはだいぶ前のことである。
カイルがこの国の第一皇子であったことを国民は皆知っているが、彼が交易の仕事を始めたのはレンと暮らし始めてから。
つまり皇子であることを剥奪されてから。αの統治国家で交易をするのに、わざわざ”元皇子”などと言いはしない。
ならばカイルに見出した価値とは、なんだろうとレンは考える。
「カイルって仕事で評判が良かったりするの?」
それは素朴な疑問であった。
「どうだろうね。この国のβというのは交易で相手を騙したり、ぼったくりをする者はいなから」
この国では、そんなことをする必要はないのだ。物価は安いし、国がいろんな補助をしてくれる。国自体に相当な財力があるためだ。
わざわざ危険な真似をし小銭を稼ぐくらいなら、国に申請して補助を受ける方が確実なのだ。
「それに、αはいちいち個人の評判なんて気にしないだろう?」
他人に興味を持たない。それがαの特性だ。
レンは益々分からなくなるのだった。
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