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5話『動き出す、運命の輪』
2 いやいや、誤解です
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****♡side・β(カイル)
「ま、待ってよレン」
レンはカイルが止めるのも聞かずに、ズンズンと中へ入っていく。正直、こういうコーナーに足を踏み入れるのは初めてだ。レンの発情期にはそう言うことを一応している、という事にはなるのだが。
────レンには言ってなかったけれど、俺レンが初めての相手だったし。
ただ、あの行為には愛も心も存在はしない。意志さえも。ひたすらαを求める彼を、気休め程度に慰めるのが自分の役目であり、使命。あの日以来、少しずつβ同士の恋人のような関係に近づいている。だから期待もしてしまうし、発情期以外のレンとそういうことがしたくないかと聞かれたら、否定はできない。
────レンとイチャイチャしたいに決まってる。
だって、最近の彼は可愛い。自分から触れてくれるし、笑顔も見せてくれるようになった。正直、自分は彼に恋をしている。もっと自分だけに心を向けて欲しいと望んでしまっていた。
「え」
一人で悶々としていると、レンが数作のDVDを持ってカイルの前を通り過ぎる。こういう作品はBlu-rayが出来ても、DVDが主流なようだ。
「そ、そんなに借りるの?」
「うん。勉強しないと。それに、この子カイルに雰囲気似てるから」
彼が持っているのはβ男性同士の作品だ。そこでカイルは彼の生体のことを思い出す。
────レンは俺に欲情することは出来るんだろうか?
αがラット状態以外の時に、全くの不能だと言う事は知っている。
しかしΩは未知数だ。発情自体を嫌う者が多く、βとΩの間に子を持つことが不可能な為、発情期以外はプラトニックな関係な者が大多数を占めている。
Ωが妊娠できるのは、相手がαの時だけ。一緒にいるβも、発情期の時のΩにショックを受けるものが多く、あえてそんな関係になりたがらないようだ。
────確かに、あれだけ目の前でαを求められたら自信なくすよな…。
それでもレンと、そういうことをしたいと思ってしまう自分はおかしいのだろうか。抱き合って温もりを分け合って、愛を感じたい。
「借りてくるね」
ぼんやりと考え事をしているカイルに、ニコッと微笑むと彼はレジに行ってしまった。レンはどっちなのだろうか、とカイルは想像する。自分はどちらでもいい。彼が望むまま、愛し合いたいと考えてしまっていた。
────なんだよ、レンにあんな態度取ってるくせに、やる気満々じゃないかよ。恥ずかしい。
「どうしたの?」
恥ずかしさに両手で顔を覆っていたカイルが、彼に声をかけられ顔をあげる。
「真っ赤だよ」
「ちょっとのぼせたかな」
「変なものばかり見てるからだよ」
彼がチラリとカイルの立っている前の棚に目を向けると、そこにはおもちゃが山積みになっていた。
「ちがっ……これ見ていたわけじゃ」
「はいはい」
「レンっ」
「次は本屋に行きたいな」
どんなに言い訳しても、疑いの眼差しを向けられるのだった。
「ま、待ってよレン」
レンはカイルが止めるのも聞かずに、ズンズンと中へ入っていく。正直、こういうコーナーに足を踏み入れるのは初めてだ。レンの発情期にはそう言うことを一応している、という事にはなるのだが。
────レンには言ってなかったけれど、俺レンが初めての相手だったし。
ただ、あの行為には愛も心も存在はしない。意志さえも。ひたすらαを求める彼を、気休め程度に慰めるのが自分の役目であり、使命。あの日以来、少しずつβ同士の恋人のような関係に近づいている。だから期待もしてしまうし、発情期以外のレンとそういうことがしたくないかと聞かれたら、否定はできない。
────レンとイチャイチャしたいに決まってる。
だって、最近の彼は可愛い。自分から触れてくれるし、笑顔も見せてくれるようになった。正直、自分は彼に恋をしている。もっと自分だけに心を向けて欲しいと望んでしまっていた。
「え」
一人で悶々としていると、レンが数作のDVDを持ってカイルの前を通り過ぎる。こういう作品はBlu-rayが出来ても、DVDが主流なようだ。
「そ、そんなに借りるの?」
「うん。勉強しないと。それに、この子カイルに雰囲気似てるから」
彼が持っているのはβ男性同士の作品だ。そこでカイルは彼の生体のことを思い出す。
────レンは俺に欲情することは出来るんだろうか?
αがラット状態以外の時に、全くの不能だと言う事は知っている。
しかしΩは未知数だ。発情自体を嫌う者が多く、βとΩの間に子を持つことが不可能な為、発情期以外はプラトニックな関係な者が大多数を占めている。
Ωが妊娠できるのは、相手がαの時だけ。一緒にいるβも、発情期の時のΩにショックを受けるものが多く、あえてそんな関係になりたがらないようだ。
────確かに、あれだけ目の前でαを求められたら自信なくすよな…。
それでもレンと、そういうことをしたいと思ってしまう自分はおかしいのだろうか。抱き合って温もりを分け合って、愛を感じたい。
「借りてくるね」
ぼんやりと考え事をしているカイルに、ニコッと微笑むと彼はレジに行ってしまった。レンはどっちなのだろうか、とカイルは想像する。自分はどちらでもいい。彼が望むまま、愛し合いたいと考えてしまっていた。
────なんだよ、レンにあんな態度取ってるくせに、やる気満々じゃないかよ。恥ずかしい。
「どうしたの?」
恥ずかしさに両手で顔を覆っていたカイルが、彼に声をかけられ顔をあげる。
「真っ赤だよ」
「ちょっとのぼせたかな」
「変なものばかり見てるからだよ」
彼がチラリとカイルの立っている前の棚に目を向けると、そこにはおもちゃが山積みになっていた。
「ちがっ……これ見ていたわけじゃ」
「はいはい」
「レンっ」
「次は本屋に行きたいな」
どんなに言い訳しても、疑いの眼差しを向けられるのだった。
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