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5話『動き出す、運命の輪』

1 レンの行きたいところ

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****♡Side・Ω(レン)

 いつだってカイルは、遠慮しなくて良いと言ってくれるけれど。Ω性の者を連れて外出することがどれだけ気を張らなきゃいけないことなのか、レンには分かっていた。
 買いものならインターネットがあるし、外に出られなくても窓から外を眺めればいい。家に居ることが一番安全で、迷惑をかけないのだ。

────カイルはこんな僕でも、対等に扱ってくれる。

 確かにβたちは、Ωを虐げたりはしない。だが、レンにとってカイルは、特別だった。何処に行くにも誘ってくれるし、いつだってレンを優先してくれる。そこまでしてくれる人の時間を、これ以上奪いたくはない。

────でも今回は、どうしても行きたいところがあるんだ。確かにネットでも買えないことはないけれど、なんだか怪しいし。

「レン」
何か言いかけた彼の言葉を遮り、
「だって、カイルには自由がないでしょ?」
と問う。
 仕事で外出する以外はずっと傍にいて、相手をしようとするカイル。レンが退屈しないように、気にかけてくれるのは嬉しい。しかしそれが負担になってしまっているように感じ、不安になる。
「そんなことない。行きたいところがあればレンに、付き合ってもらっているじゃないか」
 彼はそう反論するが、その行き先のチョイスだって、レン優先だ。レンが困った顔をしていると、
「俺は行きたいところにレンをつき合わせている。だから、レンの行きたいところに俺をつき合わせてよ」
 ”それなら対等で、平等でしょ?”と彼は言うが。

────僕優先で行き先を決めている時点で、平等には感じないのだけれど。

 納得のいかないレンであったが、ふと、もし自分がちゃんと行きたいところを告げることができたなら。彼も自分の行きたいところを、主張し易くなるのではないかと思いなおす。
 それに今回行きたいところは、率直に告げれば反対されそうである。そう考えれば好都合だ。

「カイルは優しすぎる」
 レンがそう言ってニコッと微笑むと、彼は照れたように笑う。
「じゃあ、今回は甘えるね、行きたいところあるから」
「いつも甘えてよ」
と、彼。
「そんなこと言っていると、後悔すると思うけど」
 レンの言葉に彼は”どういう意味?”と不思議そうな顔。しかし現地に着き、彼が悲鳴を上げることは間違いない。


「えええええええ!ちょっま……」
「何処でもいいって言ったし、ほら見て」
「いや、目のやり場に困るんだけど」
 レンとカイルの目の前には、肌色が占める垂れ幕。
「十八歳になったら入るべしって書いてあるよ」
と、垂れ幕を指さしレンが言うと、
「いや、そんなことは何処にも書いてない。十八歳以下は禁止って書いてある」
「つまり、十八歳になったら来いって意味でしょ?」
 二人はレンタル屋の大人のコーナー入口に居たのである。
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