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3話『運命を背負いし者』
4 君を笑顔に
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****♡Side・β(カイル)
カイルは珍しく浮かれていた。無理もない。今までどんなに望んでも、叶わないと思っていたことが叶ったのだから。とはいえ、問題が解決したわけではないことをカイルは忘れていた。決して、レンの発情期に対する不安と苦痛が和らいだわけではないということを。
「ねえ、美味しい?」
レンはフルーツを好んだ。新鮮な果実を。
「うん」
テーブルの上にはフルーツの盛り合わせ。甘いものが好きというわけではない。彼は生ものを好み、凝った味付けは好きではないようだ。育ちのせいかとも思ったが、どうやらその生態に関係しているという結論のほうが納得できる。中でも水分を多く含ものが好きなようで、キウイを頬張る彼が可愛らしい。
「カイルはフルーツは嫌い?」
「嫌いではないけれど。俺はゼリーの方が好きなんだ」
不思議なことに正反対とまでは言わないが、カイルはゼリーのような加工食品を好む。中でも元の形の分からないものが好きで、具のないスープなどは大好物。レンには変わっているねと言われるが、固形物がどうも苦手だ。その為、同年代のβと比べるとカイルは少し細身なほうであった。
ピンクがかったレンの肌は、いつでも艶めいている。触れれば滑らかできめ細かく、吸い付くようであった。
「カイルはあまり、元の形のわかるもの食べないよね」
「うん。なんかダメなんだ。想像力が豊かだからかな」
肉で言えば、カイルはハンバーグやつくねのようなモノが好きであり、レンはステーキや丸焼きのようなモノが好き。
「あ、でも茶わん蒸しは好きだよ」
外国から入ってきた食文化の中に含まれる料理。日本という国で良く食べられるものらしい。
「あれって、エビくらいしか原型わかるもの入ってないよね」
と彼は、イチゴを口に含みながら。
「日本食はいいね。刺身も頭がなければ分からないし、卵豆腐も好きだよ」
というカイルの言葉に、彼は笑う。
「何食べてるか、わからないじゃない」
「それが良いんだ」
人間は他の命を奪って生きている。それだけじゃない。αは、Ωの命を自由にしているのだ。同じ人間なのに。
カイルは彼らのことを考えるたび心が痛み、妹のことを思い出す。
「カイル、どうしたの?」
「ううん。ちょっと昔のことを思い出してしまって」
心配そうに、彼は向かいの席から手を伸ばすと、カイルの頬に触れた。今までしたことのない彼の行動に、カイルはびくりと肩を揺らす。ほんのり頬を染めて。
「辛そうな顔してる。これからは僕がカイルを笑顔にしてあげたいな」
想定外の優しい言葉に思わず、涙が零れた。それは悲しみの涙ではなく、感動の涙であった。
カイルは珍しく浮かれていた。無理もない。今までどんなに望んでも、叶わないと思っていたことが叶ったのだから。とはいえ、問題が解決したわけではないことをカイルは忘れていた。決して、レンの発情期に対する不安と苦痛が和らいだわけではないということを。
「ねえ、美味しい?」
レンはフルーツを好んだ。新鮮な果実を。
「うん」
テーブルの上にはフルーツの盛り合わせ。甘いものが好きというわけではない。彼は生ものを好み、凝った味付けは好きではないようだ。育ちのせいかとも思ったが、どうやらその生態に関係しているという結論のほうが納得できる。中でも水分を多く含ものが好きなようで、キウイを頬張る彼が可愛らしい。
「カイルはフルーツは嫌い?」
「嫌いではないけれど。俺はゼリーの方が好きなんだ」
不思議なことに正反対とまでは言わないが、カイルはゼリーのような加工食品を好む。中でも元の形の分からないものが好きで、具のないスープなどは大好物。レンには変わっているねと言われるが、固形物がどうも苦手だ。その為、同年代のβと比べるとカイルは少し細身なほうであった。
ピンクがかったレンの肌は、いつでも艶めいている。触れれば滑らかできめ細かく、吸い付くようであった。
「カイルはあまり、元の形のわかるもの食べないよね」
「うん。なんかダメなんだ。想像力が豊かだからかな」
肉で言えば、カイルはハンバーグやつくねのようなモノが好きであり、レンはステーキや丸焼きのようなモノが好き。
「あ、でも茶わん蒸しは好きだよ」
外国から入ってきた食文化の中に含まれる料理。日本という国で良く食べられるものらしい。
「あれって、エビくらいしか原型わかるもの入ってないよね」
と彼は、イチゴを口に含みながら。
「日本食はいいね。刺身も頭がなければ分からないし、卵豆腐も好きだよ」
というカイルの言葉に、彼は笑う。
「何食べてるか、わからないじゃない」
「それが良いんだ」
人間は他の命を奪って生きている。それだけじゃない。αは、Ωの命を自由にしているのだ。同じ人間なのに。
カイルは彼らのことを考えるたび心が痛み、妹のことを思い出す。
「カイル、どうしたの?」
「ううん。ちょっと昔のことを思い出してしまって」
心配そうに、彼は向かいの席から手を伸ばすと、カイルの頬に触れた。今までしたことのない彼の行動に、カイルはびくりと肩を揺らす。ほんのり頬を染めて。
「辛そうな顔してる。これからは僕がカイルを笑顔にしてあげたいな」
想定外の優しい言葉に思わず、涙が零れた。それは悲しみの涙ではなく、感動の涙であった。
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