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2話『独立国の第一皇子』
4 環境に支配されるΩ
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****♡Side・Ω(レン)
βの独立国には娯楽施設が多い。βは単体行動よりも誰かと行動することが好きらしく、友人、恋人、ファミリーなど小さな集合体となって行動する。恐らくそれは長い歴史の中で、αに虐げられてきたと言う事も要因の一つなのだろう。大切な人を守るため、寄り添って身を守るためなのかもしれない。残念ながら、Ωはその個体数の少なさから、自分たちで何かをするほどの力を持ってはいなかった。
────Ω性は環境に支配される。
幸も不幸も環境次第。自分の力だけでは、どうにもならない。その上、三か月に一度訪れる発情期は、Ωを憂鬱にさせた。特にΩ男性体は、排卵と共に発情期が来るものの体内で受精することはない。Ω女性体は子を宿している間は発情することはないが、Ω男性体にとっては休まる期間というモノが存在しないのだ。
春になれば家の外で、野良猫が発情している様子を見ることが出来る。自分は心神喪失状態な上に記憶もないが、カイルに対し狂ったように性を求めているのかもしれないと思うと、レンは気が塞いだ。彼からいろんなものを奪い、不幸にしているのに。これ以上迷惑をかけたくないと思ってしまうのだ。
────僕がネコなら、可愛かったのにな。
「レン、ここだよ」
と連れてこられたのは、小さな映画館であった。
彼はあまり騒がしいところが好きではないらしいく、大きな映画館も近くにはあるのだが活用しない。それが本当はレンの為であることを、レン自身は知らなかった。大きなパネルを見上げる、圧巻だ。役者たちのイラストは手書きの油絵、まるで写真のように見えるのだから、その道の職人とはすごいものだなと改めて感じる。
「チケット、二枚」
券売所でチケットを購入する彼。どんな物語なのだろうか、とポスターに目をやると、どうやら恋愛もののようである。レンは何度か彼に映画に連れてきてもらったことはあったが、動物モノや家族愛、ミステリーなどのジャンルが多く恋愛ものは初めてであった。何故、彼がこの作品を選んだのか。レンが知るのは、映画を観てからになるのだが、この経験はレンとカイルに大きな転機を与えることとなる。
「カイルが恋愛映画を選ぶのは、初めてだね」
いつもは口数の少ないレンであったが、彼のチョイスに驚き思わず声に出た。カイルはそんなレンに対し、目を細め優しい笑みを浮かべる。
「どうしてもレンと一緒に、この作品を観たかったんだ。今日は一緒に来てくれてありがとう」
お礼を言うべきなのは自分のほうなのに、とレンは恐縮してしまう。そしてこの後、彼の本心を知ることとなるのだった。
βの独立国には娯楽施設が多い。βは単体行動よりも誰かと行動することが好きらしく、友人、恋人、ファミリーなど小さな集合体となって行動する。恐らくそれは長い歴史の中で、αに虐げられてきたと言う事も要因の一つなのだろう。大切な人を守るため、寄り添って身を守るためなのかもしれない。残念ながら、Ωはその個体数の少なさから、自分たちで何かをするほどの力を持ってはいなかった。
────Ω性は環境に支配される。
幸も不幸も環境次第。自分の力だけでは、どうにもならない。その上、三か月に一度訪れる発情期は、Ωを憂鬱にさせた。特にΩ男性体は、排卵と共に発情期が来るものの体内で受精することはない。Ω女性体は子を宿している間は発情することはないが、Ω男性体にとっては休まる期間というモノが存在しないのだ。
春になれば家の外で、野良猫が発情している様子を見ることが出来る。自分は心神喪失状態な上に記憶もないが、カイルに対し狂ったように性を求めているのかもしれないと思うと、レンは気が塞いだ。彼からいろんなものを奪い、不幸にしているのに。これ以上迷惑をかけたくないと思ってしまうのだ。
────僕がネコなら、可愛かったのにな。
「レン、ここだよ」
と連れてこられたのは、小さな映画館であった。
彼はあまり騒がしいところが好きではないらしいく、大きな映画館も近くにはあるのだが活用しない。それが本当はレンの為であることを、レン自身は知らなかった。大きなパネルを見上げる、圧巻だ。役者たちのイラストは手書きの油絵、まるで写真のように見えるのだから、その道の職人とはすごいものだなと改めて感じる。
「チケット、二枚」
券売所でチケットを購入する彼。どんな物語なのだろうか、とポスターに目をやると、どうやら恋愛もののようである。レンは何度か彼に映画に連れてきてもらったことはあったが、動物モノや家族愛、ミステリーなどのジャンルが多く恋愛ものは初めてであった。何故、彼がこの作品を選んだのか。レンが知るのは、映画を観てからになるのだが、この経験はレンとカイルに大きな転機を与えることとなる。
「カイルが恋愛映画を選ぶのは、初めてだね」
いつもは口数の少ないレンであったが、彼のチョイスに驚き思わず声に出た。カイルはそんなレンに対し、目を細め優しい笑みを浮かべる。
「どうしてもレンと一緒に、この作品を観たかったんだ。今日は一緒に来てくれてありがとう」
お礼を言うべきなのは自分のほうなのに、とレンは恐縮してしまう。そしてこの後、彼の本心を知ることとなるのだった。
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