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6【世界で一番愛しい君が】love編(微R)

7 『長い付き合い』

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「ゆあちは?」
「出かけた」
 優人がいつもの場所で膝を抱えていると、帰宅した平田に問われる。
「へえ。珍しいね」
 壁に車のキーをかけると、ケーキの箱をキッチンへ持って行く平田。
「食べるでしょ?」
 と問われ、力なく頷いた。

 海の見える出窓。ここが気に入ってこのマンションを借りることにしたのだ。平田とはもう六年くらいの付き合いになるのだなと思っていると、ケーキを皿に乗せた平田が近づいて来る。
「一人で出かけたの?」
「友人に会うとかって」
 ケーキの皿を受け取りながら優人が返事をすると、彼は非常に驚いた顔をする。
「友達いたの?! ゆあち」
「いる……らしい」
 結愛に女友達がいること自体がびっくりだが。
 それよりも、相手が女だということが嘘でなければいいなと思う。

「心配?」
 隣に腰かけながら問う、平田。
「いや」
 結愛は思い込みが激しく同性に嫌われてはいるが、ああ見えても一途。仮に相手が女性でなくても浮気はしないだろう。
 それに、昨日はあんなにしたんだしと思いながらケーキをつつく。
「ま、ゆあちがちやほやされたいのと浮気は別の話しだしね」
 平田は長年一緒にいただけあって、よく解っているなと思う。
「で、優人はなんで浮かない顔してんの」
 ”してる?”と問い返せば、”してる”と言われる。
「結愛のことが理解できないから。嫌だと言ってるのに、毎晩身体求められる」
 ケーキ皿を脇に置き、片膝を引き寄せ顔を埋めると、平田が優人の背中を同情するように撫でた。

「女子みたいな悩みだなって、笑ってんだろ?」
 優人がむくれた顔をし、視線だけ平田に向ければ彼は肩を竦めやれやれのポーズをしている。
「学ばないねえ。優人は」
 今日はなんだと思っていると、
「すれ違いを正さない限り、そのままよ?」
「すれ違い?」
 優人が聞き返せば、彼は下唇を突きだし軽く頷く。

「ゆあちと優人の恋愛観は違い過ぎるんだからさ」
 結愛は肉体的なものも含んで恋愛という。
 優人は精神的なものを恋愛と言う。
 だから結愛が愛だと思うことを、優人が愛だと思えないのは仕方のないこと。互いに話し合って妥協点を見つけなければ変わらないと彼はいう。

 平田は正しい。
 そして大人だ。
 少なくとも自分よりは。

「平田は最近恋人とかいないのかよ」
 話を変えたくて口に出したが、彼は一瞬驚いた顔をする。
「好きな人はいるよ? ちっとも振り向いてくれないけど」
 優人はその意味を察し、
「どこがいいの?」
 と問う。
「なんで好きとかではなく? そうなあ。馬鹿なとこ?」
「殴るよ」
 優人は拳を作って見せた。
「自分なら幸せにできるのにって思っちゃうとこかな。男ってそういうもんでしょ」
 苦笑いする平田に優人は複雑な心境になる。

 ──俺はそんなに不幸そうなのか?
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