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5【世界で一番愛しい君を】未来編2
9 『愛しき当たり前の日々』
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──数か月後
「ゆあちが事務って意外だなあ」
「まあ、そうだね」
ダイニングテーブルで三人、結愛の就職先について話していた。
最終的に結愛が選んだのは、優人の勤める会社の事務。
ギャルっぽい格好を好む彼女には、おおよそ不釣り合いにも思える。
「これからの人生、何が一番かなって考えたら、優人だったの」
「ほー」
結愛の告白に平田が感心したような声を出す。
「職場結婚なら分かるけれど、年がら年中一緒にいて飽きないわけ?」
感心だけではなく、呆れてもいるようだ。
こういう時は口を出さないに限ると、優人は我関せずと言った風に優雅に紅茶を飲んでいた。本人が選んだ道だ、とやかく言う必要もない。
「だって見張ってないと、いつ他の女がちょっかい出すか分からないでしょ!」
と結愛。
優人は思わずお茶を吹いた。
「大丈夫?」
平田が横に置いてあったタオルを渡してくれる。
「それなら事務じゃなくて、警備員になればよかったのに」
と平田。
優人はさらにむせた。
──何を言っているんだ、こいつらは。
「警備員は制服が可愛くないから」
と結愛。
「そこ?!」
ナイスツッコミ、平田。
「だからね。結愛がいつも、じいいいいいって優人を見張っているの」
「他の女じゃなく?」
「そう! 優人を」
「ま、せいぜいクビにならないようにな、ゆあち」
なにしに来る気なんだ会社にと思いながらテーブルを拭く優人。
先が思いやられそうである。
「ところで優人ってなんでモテるの?」
と結愛。
「さあ?」
と平田。
酷い言われようである。
「おまえら、いい加減にしろよ。結愛も平田も告って来たのそっちじゃないかよ!」
流石の優人も手を握り、決断力のポーズをキメた。
「だってえ。優人って告られたらすぐつきあっちゃうでしょ? 他の人に取られるのは嫌なの」
と結愛。
「優人って誰と付き合っても上手くいかないだろ? そのくせすっごい落ち込むし。俺ならって思っちゃうんだよねえ」
と平田。
どこが良いとかでないあたり、複雑な心境だ。
「まあ、隙がある人はモテるって言うしねえ」
「何それ、結愛と付き合ってても優人が幸せじゃナイみたいじゃない」
ぷくっと膨れる結愛に、優人と平田は顔を見合わせる。
「ちょ、なに?! 二人して、無自覚なの? みたいなそのアイコンタクト」
「いや、何も言ってないでしょ?」
と平田。
「うん、幸せだよ」
と優人。
「優人! 覚えてなさいよね。今夜は寝かせないんだから!」
手を握り殴るふりをする結愛に、
「声は抑えてね」
と平田。
「いっぱい聞かせてやるんだから! 聞き耳立ててね平田」
もう、何が何やらわからない。
**
色んなことがあったけれど。
いつの間にか自分の日常に君が溶け込んで。
それがいつか当たり前になっていた。
きっとこれからも色々あるだろう。
そんな時は二人で、乗り越えて行けたらいいなと思う。
『世界で一番愛しい君を』
「ゆあちが事務って意外だなあ」
「まあ、そうだね」
ダイニングテーブルで三人、結愛の就職先について話していた。
最終的に結愛が選んだのは、優人の勤める会社の事務。
ギャルっぽい格好を好む彼女には、おおよそ不釣り合いにも思える。
「これからの人生、何が一番かなって考えたら、優人だったの」
「ほー」
結愛の告白に平田が感心したような声を出す。
「職場結婚なら分かるけれど、年がら年中一緒にいて飽きないわけ?」
感心だけではなく、呆れてもいるようだ。
こういう時は口を出さないに限ると、優人は我関せずと言った風に優雅に紅茶を飲んでいた。本人が選んだ道だ、とやかく言う必要もない。
「だって見張ってないと、いつ他の女がちょっかい出すか分からないでしょ!」
と結愛。
優人は思わずお茶を吹いた。
「大丈夫?」
平田が横に置いてあったタオルを渡してくれる。
「それなら事務じゃなくて、警備員になればよかったのに」
と平田。
優人はさらにむせた。
──何を言っているんだ、こいつらは。
「警備員は制服が可愛くないから」
と結愛。
「そこ?!」
ナイスツッコミ、平田。
「だからね。結愛がいつも、じいいいいいって優人を見張っているの」
「他の女じゃなく?」
「そう! 優人を」
「ま、せいぜいクビにならないようにな、ゆあち」
なにしに来る気なんだ会社にと思いながらテーブルを拭く優人。
先が思いやられそうである。
「ところで優人ってなんでモテるの?」
と結愛。
「さあ?」
と平田。
酷い言われようである。
「おまえら、いい加減にしろよ。結愛も平田も告って来たのそっちじゃないかよ!」
流石の優人も手を握り、決断力のポーズをキメた。
「だってえ。優人って告られたらすぐつきあっちゃうでしょ? 他の人に取られるのは嫌なの」
と結愛。
「優人って誰と付き合っても上手くいかないだろ? そのくせすっごい落ち込むし。俺ならって思っちゃうんだよねえ」
と平田。
どこが良いとかでないあたり、複雑な心境だ。
「まあ、隙がある人はモテるって言うしねえ」
「何それ、結愛と付き合ってても優人が幸せじゃナイみたいじゃない」
ぷくっと膨れる結愛に、優人と平田は顔を見合わせる。
「ちょ、なに?! 二人して、無自覚なの? みたいなそのアイコンタクト」
「いや、何も言ってないでしょ?」
と平田。
「うん、幸せだよ」
と優人。
「優人! 覚えてなさいよね。今夜は寝かせないんだから!」
手を握り殴るふりをする結愛に、
「声は抑えてね」
と平田。
「いっぱい聞かせてやるんだから! 聞き耳立ててね平田」
もう、何が何やらわからない。
**
色んなことがあったけれど。
いつの間にか自分の日常に君が溶け込んで。
それがいつか当たり前になっていた。
きっとこれからも色々あるだろう。
そんな時は二人で、乗り越えて行けたらいいなと思う。
『世界で一番愛しい君を』
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