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3【世界で一番愛しい君に】過去編2

2 『優人の兄と姉』

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 優人には二個上の姉と五個上の兄がいる。二人とも現在大学生であり、兄は来年から社会人だった。兄は来年は家を出ると言って、最近はバイトばかりしている。そんなこともあってか不在がちであった。

 結愛と別れ家路に着くと、その不在がちな兄が珍しく家にいて”お帰り”とダイニングキッチンから顔を出す。
「ただいま。珍しいね」
 と返事をすれば姉の声で、
「優人の誕生日が近いでしょう? お兄ちゃん、優人の帰り待ってたのよ」
 と言うのが聞こえた。
 どうやら二人で夕飯の支度をしているらしい。
「余計なこというなよ」
 と、兄。
「はいはーい」
 姉は笑いながら返事をしている。三兄弟は普段からとても仲が良かった。

「優人。部屋にプレゼント、置いてあるから」
 いつもは表情が豊かな方ではない兄が、そう言ってニコッと笑う。
「ちょっと、お兄ちゃん。あんまり優人を甘やかさないで頂戴よ?」
 と今度はランドリールームの方から母の声がする。
 つまり”甘やかしていると思われるような価格のもの”がプレゼントなのだ。
「それに、春からは何かと物入りなんでしょ」
 と、手を拭きながらランドリールームから母が出てくる。
 優人は母に”ただいま”と告げると、兄に礼を言って自分の部屋に向かった。

「兄さん、さすが!」
 部屋に戻ると、そこにあったのはデスクトップパソコン。
 ノートパソコンは持ってはいるが、大学へ上がるとレポートの作成なども多くなる。兄や姉を見ていた優人は、大きいモニター画面のものが欲しいと思っていたのだ。
「やっぱり、使いやすいキーボードの方が捗るしね」
 独り言を言いながらバッグを学習机の横にかけると、早速パーソナルコンピューターことPCの電源を入れる。
「初期設定済んでるから」
 机に片手をつき、マウスを操作していると背後から声がして、そちらを振り返る。

 父似で黒髪ストレートに端正な顔し、あまり運動をしないためか、少し華奢な兄が入り口で腕組をし壁に寄りかかってこちらを伺っていた。
「電気くらいつけたらどうだ?」
 と言いながら、入り口のスイッチに手を伸ばして。
「目を悪くするぞ」
「うん。兄さん、ありがとう」
 兄は軽く手をあげる。照れているのだろうか。

「そういえば、彼女とはうまくいっているのか?」
 兄は前の彼女とのことを知っていた。
 上手くいかなくて、一時期あまり家族とも話さなくなった優人のことを誰よりも心配してくれていたのは兄。姉はただ静かに見守ってくれていた。
 その頃よく母と喧嘩をしたので、母は優人を甘やかすなと兄に言うのである。
「どうかな」
 優人は結愛と上手くいっているとは言い難かった。
「なんだ。またかよ」
 と兄はやれやれと言うように、肩を竦めたのだった。
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