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『圭一、わたくしの奴隷におなりなさい』
第4話side:圭一
しおりを挟む「圭一、わたくしの従者におなり!」
「は?なんで」
ビシッと指を突きつけ宣言するので、予想通りの返答をする。
「そんなの、必殺技を出すためよ」
圭一はゆっくりと肘掛けに頬杖をつくと一つため息をつき、愛花を見つめ呆れながら
「必殺技は出ないから」
と当然のことを口にした。
「何ですって?!」
愛花は、気合いと根性出しなさいよ!と無茶なことを言い始める始末だ。中二病が悪化したな、などと思いながら久隆の頭を撫でる。
さて、どうしたものかと考えを巡らしていたら良いことを思いつく。
「俺、召喚獣なら出せる」
ニッコリ微笑んで愛花に告げると案の定食いついた。
「しょ、召喚獣ですって?!正気ですの?」
「うん、出せるよ」
そう、答えると圭一はスマホを取り出した。
なかなか、名案だな。などと思いながら電話帳を開く。
「まさか、画面に出すとかじゃありませんわよね?」
「ううん、ここに出すよ」
圭一はそういうと操作を終えてスマホを傍らに置いた。直後、愛花のスマホから不穏な曲が聴こえてきたのである。それは..そう、ダース・ベ○ダーの曲。
「きゃああああああ!最凶の召喚獣うううう!」
愛花は、絶叫した。
****
「ミノリを呼ぶなんて!」
動揺して部屋の中を行ったり来たりしている愛花を面白そうに眺めていると、リンゴーンとチャイムがなる。膝の上の久隆が目を輝かせて圭一を振り返った。
手に持っているのは“マ○オパーティ”のソフトである。どうやら四人で遊べると思っているらしい。
「お兄ちゃんっ、誰か来た!」
はしゃぐ久隆を抱き上げ部屋の外へでる。2階の手すりから玄関を見下ろすと..
ん?
なんでだ?
「やっほー!大崎」
ミノリだけかと思ったら、何故か友人の古川こがわが一緒にいた。ま、いっか。と二人を二階へ手招きすると、久隆が
「お兄ちゃんっ!」
二人を指差しながら大興奮している。遊んで貰えることがよっぽど嬉しいらしい。
可愛いではないか、我が弟よ
(誰だよ!)
「あ、大崎の弟くん?俺、古川。よろしくね」
誰にでも愛想の良い古川が圭一に抱っこされている久隆の頭を撫でた。その行動に圭一はムッとする。
いたいけな弟を、さては手込めにするつもりか!?
ならん!ならんぞ!
許すまじ、古川
(そんなつもりはない)
****
「圭一は、わたくしの従者。お分かり?一緒に必殺技を出すんですの」
と、愛花。
「圭一くんはね、将来旦那様になるの!素敵でしょ?将来は親戚。ミノリお姉ちゃんって呼んでくれていいのよ?」
と、ミノリ。
「大崎は、大親友。大親友っていうのは、ピンチの時に助けてくれるんだよ。簡単に言うと、メ○ゾーマをマホ○ンタで跳ね返してくれる人」
と、古川。
それぞれ好き勝手なことを言っているが、久隆に自己紹介をしている。
むしろ、事故紹介が近いが。
「うーん、お兄ちゃんは魔法使い?」
久隆が圭一を見上げる。
「は?魔法使いにはまだ遠いぞ?」
(圭一のそれは下ネタである)
「わかった!チートだぁ」
久隆がきゃっきゃっと喜ぶ。
「誰だよ、久隆にこんな言葉教えたの」
圭一の言葉に三人はスッと視線を反らした。
「おまえら..」
「ね!お兄ちゃん、お姉ちゃん早く遊ぼー!」
無邪気な久隆に救われ、何事もなかったかのように三人は好きなところに腰掛け、楽しい時間の幕開けとなった。
****
「うわああああん」
大泣きする弟にさすがの愛花たちも困り果てた顔をする。それは、楽しい時間が終わり帰る時のことであった。
「やだあ!帰っちゃやだあ!」
久隆は、甘えん坊ではあったが、わがままを言わない子であったので、圭一すらどうしたらいいのかわからない。
「久隆、泣かないの」
学校では友だちがおらず(大里弟は友達ではないらしい)恐らくわいわい遊ぶなどしたこともないのであろう、今日のはしゃぎっぷりと来たらあまりの可愛さに圭一がムービーをとったほどである。
(すでに、父親気分)
「お、俺。泊まっていこうかなぁー」
古川が圭一に助け船を出したつもりであった。
「お、弟に何をする気だ!」
(古川にはそんなつもりはない)
こ、古川め!
いたいけな俺の弟に『あーれー、お代官様お許しをー』的なことをするわけではあるまいな!?
(そもそも、圭一は久隆と添い寝しているので気づくはず)
「何?って何するんだよ、一緒にご飯食べたり?」
古川が困った表情をする。
「たり?!」
「なんで、そんな食いつくんだ!大崎」
「私《わたくし》も泊まりますわ、圭一くん」
今度はミノリが助け船のようなものを出した。
すると
「あなた、圭一に何する気?」
と、愛花が青ざめる。ややこしいことになってきた。
「は?俺にも何かする気なのか?」
「え?何かして良いのです?」
と、ミノリ。
どうにもややこしい展開になってきたのである。
****
「お泊まり?!ホント?」
圭一は『帰れ!』と言いたがったが、泣いていた弟が嬉しそうな顔をするので黙るしかなかった。
なんと嘆かわしい!
いたいけな我が弟が古川の毒牙にかかるやも知れぬと言うのに!
嗚呼、拙者は無力ゆえ弟を救えぬというのか!
こうなれば、古川と一騎討ちしかござらん
母上、先立つ不幸を..
(時代劇の見すぎである)
「圭一、ちょっと、大丈夫ですの?」
圭一は目を閉じ、ギリギリと歯ぎしりをしながら拳を握りしめていた。
(愛花は、圭一よりも古川の命の心配をした方が良さそうである)
「大丈夫ではない、拙者は..」
「はぁ?!いつから、拙者とか言うようになったのよ」
愛花は圭一にツッコミを入れる。すると、
「ん?ああ..」
圭一は自分の世界から帰還した。
いかん
このままでは、家族が増えてしまう!
古川が家族に..
オーマイガッ!
(どれだけ、古川を恨んでいるんだ、圭一)
何か打開策は..
そうだ、あの手があったか
「ちょっと、圭一ってば!何か変なこと考えていないでしょうね?」
「久隆が寂しがるのはゲーム仲間がいないからだ」
「え?」
いきなりの結論に愛花もポカンとする。
「つまりだ、従業員全員にゲーム機を持たせよう。3D○LLを!」
「いくらするのよ!」
圭一はスマホを取り出しビジネスマンさながらビシッと電卓を打つ。
「仮に19800なら、消費税10%を上乗せして述べ435600円だな。なんてことはない」
「まって、相場は23000よ?」
「何だと?!」
これがきっかけで、大崎邸ではゲームブームが到来することとなった。もちろん出したのは大崎グループ会長、つまり圭一の祖父である。
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