7 / 10
『圭一、わたくしの奴隷におなりなさい』
第4話side:圭一
しおりを挟む「圭一、わたくしの従者におなり!」
「は?なんで」
ビシッと指を突きつけ宣言するので、予想通りの返答をする。
「そんなの、必殺技を出すためよ」
圭一はゆっくりと肘掛けに頬杖をつくと一つため息をつき、愛花を見つめ呆れながら
「必殺技は出ないから」
と当然のことを口にした。
「何ですって?!」
愛花は、気合いと根性出しなさいよ!と無茶なことを言い始める始末だ。中二病が悪化したな、などと思いながら久隆の頭を撫でる。
さて、どうしたものかと考えを巡らしていたら良いことを思いつく。
「俺、召喚獣なら出せる」
ニッコリ微笑んで愛花に告げると案の定食いついた。
「しょ、召喚獣ですって?!正気ですの?」
「うん、出せるよ」
そう、答えると圭一はスマホを取り出した。
なかなか、名案だな。などと思いながら電話帳を開く。
「まさか、画面に出すとかじゃありませんわよね?」
「ううん、ここに出すよ」
圭一はそういうと操作を終えてスマホを傍らに置いた。直後、愛花のスマホから不穏な曲が聴こえてきたのである。それは..そう、ダース・ベ○ダーの曲。
「きゃああああああ!最凶の召喚獣うううう!」
愛花は、絶叫した。
****
「ミノリを呼ぶなんて!」
動揺して部屋の中を行ったり来たりしている愛花を面白そうに眺めていると、リンゴーンとチャイムがなる。膝の上の久隆が目を輝かせて圭一を振り返った。
手に持っているのは“マ○オパーティ”のソフトである。どうやら四人で遊べると思っているらしい。
「お兄ちゃんっ、誰か来た!」
はしゃぐ久隆を抱き上げ部屋の外へでる。2階の手すりから玄関を見下ろすと..
ん?
なんでだ?
「やっほー!大崎」
ミノリだけかと思ったら、何故か友人の古川こがわが一緒にいた。ま、いっか。と二人を二階へ手招きすると、久隆が
「お兄ちゃんっ!」
二人を指差しながら大興奮している。遊んで貰えることがよっぽど嬉しいらしい。
可愛いではないか、我が弟よ
(誰だよ!)
「あ、大崎の弟くん?俺、古川。よろしくね」
誰にでも愛想の良い古川が圭一に抱っこされている久隆の頭を撫でた。その行動に圭一はムッとする。
いたいけな弟を、さては手込めにするつもりか!?
ならん!ならんぞ!
許すまじ、古川
(そんなつもりはない)
****
「圭一は、わたくしの従者。お分かり?一緒に必殺技を出すんですの」
と、愛花。
「圭一くんはね、将来旦那様になるの!素敵でしょ?将来は親戚。ミノリお姉ちゃんって呼んでくれていいのよ?」
と、ミノリ。
「大崎は、大親友。大親友っていうのは、ピンチの時に助けてくれるんだよ。簡単に言うと、メ○ゾーマをマホ○ンタで跳ね返してくれる人」
と、古川。
それぞれ好き勝手なことを言っているが、久隆に自己紹介をしている。
むしろ、事故紹介が近いが。
「うーん、お兄ちゃんは魔法使い?」
久隆が圭一を見上げる。
「は?魔法使いにはまだ遠いぞ?」
(圭一のそれは下ネタである)
「わかった!チートだぁ」
久隆がきゃっきゃっと喜ぶ。
「誰だよ、久隆にこんな言葉教えたの」
圭一の言葉に三人はスッと視線を反らした。
「おまえら..」
「ね!お兄ちゃん、お姉ちゃん早く遊ぼー!」
無邪気な久隆に救われ、何事もなかったかのように三人は好きなところに腰掛け、楽しい時間の幕開けとなった。
****
「うわああああん」
大泣きする弟にさすがの愛花たちも困り果てた顔をする。それは、楽しい時間が終わり帰る時のことであった。
「やだあ!帰っちゃやだあ!」
久隆は、甘えん坊ではあったが、わがままを言わない子であったので、圭一すらどうしたらいいのかわからない。
「久隆、泣かないの」
学校では友だちがおらず(大里弟は友達ではないらしい)恐らくわいわい遊ぶなどしたこともないのであろう、今日のはしゃぎっぷりと来たらあまりの可愛さに圭一がムービーをとったほどである。
(すでに、父親気分)
「お、俺。泊まっていこうかなぁー」
古川が圭一に助け船を出したつもりであった。
「お、弟に何をする気だ!」
(古川にはそんなつもりはない)
こ、古川め!
いたいけな俺の弟に『あーれー、お代官様お許しをー』的なことをするわけではあるまいな!?
(そもそも、圭一は久隆と添い寝しているので気づくはず)
「何?って何するんだよ、一緒にご飯食べたり?」
古川が困った表情をする。
「たり?!」
「なんで、そんな食いつくんだ!大崎」
「私《わたくし》も泊まりますわ、圭一くん」
今度はミノリが助け船のようなものを出した。
すると
「あなた、圭一に何する気?」
と、愛花が青ざめる。ややこしいことになってきた。
「は?俺にも何かする気なのか?」
「え?何かして良いのです?」
と、ミノリ。
どうにもややこしい展開になってきたのである。
****
「お泊まり?!ホント?」
圭一は『帰れ!』と言いたがったが、泣いていた弟が嬉しそうな顔をするので黙るしかなかった。
なんと嘆かわしい!
いたいけな我が弟が古川の毒牙にかかるやも知れぬと言うのに!
嗚呼、拙者は無力ゆえ弟を救えぬというのか!
こうなれば、古川と一騎討ちしかござらん
母上、先立つ不幸を..
(時代劇の見すぎである)
「圭一、ちょっと、大丈夫ですの?」
圭一は目を閉じ、ギリギリと歯ぎしりをしながら拳を握りしめていた。
(愛花は、圭一よりも古川の命の心配をした方が良さそうである)
「大丈夫ではない、拙者は..」
「はぁ?!いつから、拙者とか言うようになったのよ」
愛花は圭一にツッコミを入れる。すると、
「ん?ああ..」
圭一は自分の世界から帰還した。
いかん
このままでは、家族が増えてしまう!
古川が家族に..
オーマイガッ!
(どれだけ、古川を恨んでいるんだ、圭一)
何か打開策は..
そうだ、あの手があったか
「ちょっと、圭一ってば!何か変なこと考えていないでしょうね?」
「久隆が寂しがるのはゲーム仲間がいないからだ」
「え?」
いきなりの結論に愛花もポカンとする。
「つまりだ、従業員全員にゲーム機を持たせよう。3D○LLを!」
「いくらするのよ!」
圭一はスマホを取り出しビジネスマンさながらビシッと電卓を打つ。
「仮に19800なら、消費税10%を上乗せして述べ435600円だな。なんてことはない」
「まって、相場は23000よ?」
「何だと?!」
これがきっかけで、大崎邸ではゲームブームが到来することとなった。もちろん出したのは大崎グループ会長、つまり圭一の祖父である。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です


淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる