22 / 28
最終章:佳奈と哉太編
1 現在の佳奈
しおりを挟む
佳奈は、久々に友人女性と例の喫茶店で待ち合わせをしていた。
近況報告を兼ねての食事会だ。
「佳奈、ひさしぶり」
遅れてやってきた彼女は、相変わらず美人で元気そうに見えた。
「忙しいのに、ありがとう」
「ううん。アイツとやっと終われたって聞いたら、お祝いするっきゃないでしょ?」
彼女は仕事が忙しい中、わざわざ佳奈の為に時間を作ってくれたのだった。
「今日はゆっくりできるの?」
と佳奈が問うと、彼女はピースサインを作って見せる。
「そっか、良かった。ところで、この店の店員さん変わった?」
佳奈には先ほどから気になっていたことがあった。
「え?」
彼女は佳奈の質問に明らかに動揺したように感じたが、すぐにその表情も消える。
「全然気づかなかった」
という言葉に佳奈は違和感を持った。
しかし触れられたくないことなのかと、それ以上その話に触れることは出来なかった。
「で、あの彼とはどうするの?」
彼女は某メッセージアプリでのやり取りで、哉太のことも知っている。
「どうもこうもないわ。あれからもう一年以上経っているんだし」
哉太とは喧嘩してから一方的に連絡を絶った。
互いに酷いことを言い合い、すれ違ったまま。
せめて酷いことを言ってしまったことについては、謝罪したいと思ったこともあったが。一方的に連絡を絶った上、今さら謝罪されたところで相手も困るだけだろう。
「そっか。佳奈はもうその彼のことは好きじゃないの?」
「うーん。前にも言ったけど、彼の変わり方は怖いなって思う。わたしが好きだったのは、わたしに対して恋愛感情を持っていなかった彼、だったんじゃないかなって思う」
好きになった途端、態度の変わる人はたくさんいる。
それは、当たり前のことなのかもしれない。
その心理の中には、好きだから大切にしたいという陽の気持ちもあれば、好きだから嫌われたくないという、どちらかと言えば陰の気持ちも。
ただ、その時人がどう動くかが問題なのだ。
嫌われたくないから相手に合わせるのか、自分の思い通りにしようと支配しようとするのか、ただ自分の本当の姿を隠すのか。
誰しも好きな人には好かれていたいものだ。
だが間違った方向に行けば、確実に相手の心は離れていくだろう。
最悪、我を見失いストーカー行為に走ってしまうこともある。
恋とは人を簡単に狂わせてしまうモノなのだ。
「意外と相手のほうは、今でも佳奈のこと好きかもよ?」
「え?」
ちゃんと終わった関係は、その時は辛いかもしれないが引きづることはない。しかし、曖昧なまま終わった恋はいつまでも深く心に残り引きづってしまうモノだと彼女は言う。
「もし、そうだったらどうする?」
彼の幸せは願っているが佳奈は、その選択肢について考えたことはなかったのである。
近況報告を兼ねての食事会だ。
「佳奈、ひさしぶり」
遅れてやってきた彼女は、相変わらず美人で元気そうに見えた。
「忙しいのに、ありがとう」
「ううん。アイツとやっと終われたって聞いたら、お祝いするっきゃないでしょ?」
彼女は仕事が忙しい中、わざわざ佳奈の為に時間を作ってくれたのだった。
「今日はゆっくりできるの?」
と佳奈が問うと、彼女はピースサインを作って見せる。
「そっか、良かった。ところで、この店の店員さん変わった?」
佳奈には先ほどから気になっていたことがあった。
「え?」
彼女は佳奈の質問に明らかに動揺したように感じたが、すぐにその表情も消える。
「全然気づかなかった」
という言葉に佳奈は違和感を持った。
しかし触れられたくないことなのかと、それ以上その話に触れることは出来なかった。
「で、あの彼とはどうするの?」
彼女は某メッセージアプリでのやり取りで、哉太のことも知っている。
「どうもこうもないわ。あれからもう一年以上経っているんだし」
哉太とは喧嘩してから一方的に連絡を絶った。
互いに酷いことを言い合い、すれ違ったまま。
せめて酷いことを言ってしまったことについては、謝罪したいと思ったこともあったが。一方的に連絡を絶った上、今さら謝罪されたところで相手も困るだけだろう。
「そっか。佳奈はもうその彼のことは好きじゃないの?」
「うーん。前にも言ったけど、彼の変わり方は怖いなって思う。わたしが好きだったのは、わたしに対して恋愛感情を持っていなかった彼、だったんじゃないかなって思う」
好きになった途端、態度の変わる人はたくさんいる。
それは、当たり前のことなのかもしれない。
その心理の中には、好きだから大切にしたいという陽の気持ちもあれば、好きだから嫌われたくないという、どちらかと言えば陰の気持ちも。
ただ、その時人がどう動くかが問題なのだ。
嫌われたくないから相手に合わせるのか、自分の思い通りにしようと支配しようとするのか、ただ自分の本当の姿を隠すのか。
誰しも好きな人には好かれていたいものだ。
だが間違った方向に行けば、確実に相手の心は離れていくだろう。
最悪、我を見失いストーカー行為に走ってしまうこともある。
恋とは人を簡単に狂わせてしまうモノなのだ。
「意外と相手のほうは、今でも佳奈のこと好きかもよ?」
「え?」
ちゃんと終わった関係は、その時は辛いかもしれないが引きづることはない。しかし、曖昧なまま終わった恋はいつまでも深く心に残り引きづってしまうモノだと彼女は言う。
「もし、そうだったらどうする?」
彼の幸せは願っているが佳奈は、その選択肢について考えたことはなかったのである。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
完結【異性恋愛】『世界で一番愛しい君』
crazy’s7@体調不良不定期更新中
恋愛
まとめました。
主人公には、何年経っても忘れられない相手が居る。
前に進みたくても失敗する元カノと、それを見守る一途な元彼の切ない物語。
『世界で一番愛しい君へ』
【あらすじ】
主人公の『優人』には、別れてからもずっと好きな相手が居る。
忘れることが出来ないのは、その彼女が自分の都合で自分を呼び出すから。それなのに優人の連絡には応じない。
彼女がちゃんと前に進むためには、自分の存在は邪魔でしかない。
分っているが、どうにもできないでいる。
そんな優人に、彼女が逢いたいと言ってきて───?
【完結】タイムトラベル・サスペンス『君を探して』
crazy’s7@体調不良不定期更新中
ミステリー
過去からタイムトラベルをし逃げてきた兄弟が、妹の失踪事件をきっかけに両親が殺害された事件の真相に挑むミステリー
────2つの世界が交差するとき、真実に出逢う。
5×××年。
時を渡る能力を持つ雛本一家はその日、何者かに命を狙われた。
母に逃げろと言われ、三兄弟の長男である和宏は妹の佳奈と弟の優人を連れ未来へと飛んだ。一番力を持っている佳奈を真ん中に、手を繋ぎ逃げ切れることを信じて。
しかし、時を渡ったその先に妹の姿はなかったのだ。
数年後、和宏と優人は佳奈に再会できることを信じその時代に留まっていた。
世間ではある要人の命が狙われ、ニュースに。そのことを発端にして、和宏たちの時代に起きた事件が紐解かれていく。
何故、雛本一家は暗殺されそうになったのだろうか?
あの日の真実。佳奈は一体どこへ行ってしまったのか。
注意:この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
【解説】
この物語は、タイムトラベルして事件の真相を暴くのではなく、縛りがあってタイムトラベルすることのできない兄弟が、気づきと思考のみで真相に辿り着くという話。
なので殺害方法とかアリバイなどの難しいことは一切でない。知恵で危機を乗り越えていく。
雛本三兄弟シリーズとは、登場人物(性格などベース)だけは変わらずに色んな物語を展開していくパラレルシリーズです。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
ドクターダーリン【完結】
桃華れい
恋愛
女子高生×イケメン外科医。
高校生の伊吹彩は、自分を治療してくれた外科医の神河涼先生と付き合っている。
患者と医者の関係でしかも彩が高校生であるため、周囲には絶対に秘密だ。
イケメンで医者で完璧な涼は、当然モテている。
看護師からは手作り弁当を渡され、
巨乳の患者からはセクシーに誘惑され、
同僚の美人女医とは何やら親密な雰囲気が漂う。
そんな涼に本当に好かれているのか不安に思う彩に、ある晩、彼が言う。
「彩、 」
初作品です。
よろしくお願いします。
ムーンライトノベルズ、エブリスタでも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる