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7話 協力者たち
5 前提から考えられること
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「ねえ、戀くん」
「うん?」
あれから二人は陽菜の兄のマンションへ向かった。目的は彼が家から何か持ち出していないかを調べるため。
「いくら妹だからって兄の全てを知っているわけではないわ」
「それはわかってるよ」
だが、人が予め何日か家を空けようとしたなら決まった行動が何点かあるだろう。
駐車場へ着くと二人は車から降りて部屋へ向かうためにエレベーターに乗り込む。
「今から聞く質問に答えて欲しい。わかる範囲で良いから」
「わかったわ」
「例えば陽菜さんが以前から旅行を計画していたとする。前提は一人暮らし」
「ええ」
「何を準備して置くと思う?」
人にも差はあるとは思うが必要な準備をしておくはずだ。旅行に慣れていたとしたなら荷物は軽装になると思うが、最低限必要なことやものは決まってくる。スマホ決済や電子マネーが使えるところが多くなったとはいえ、全ての店ではない。いくらかの現金は必要となるだろうし、それを入れる財布くらいは持ち出すはずだ。
それが長期を見込んでいるとするならば、必要なものは増えてくるだろう。
2年間一度も戻ってないことを考えると気になるのは税金関係。口座の自動引き落とし設定などはwebでもできるようだが。住民税は前の年の収入によって決まる。世帯主かどうかでも金額は変わってくる。
フランスのように住民税をなくしたら良いのにと思いながら、決して安いとは言えない住民税の金額のことを思い出す。今の政治に何の希望も持てなかったとしても、外国人観光客の言う”日本は綺麗”と言う言葉を聞くと日本はマシなのだと思ってしまう。
ゴミだらけの街でルールも守れないような人種と生きて行けるかと問われたら即、否と答えるだろう。マナーを守れない人は多くいる。しかし日本人はどちらかと言うと空気を読むことを元まれる国。人の邪魔になるようなことは極力避ける。それが国民性とも言えなくもない。
「そうね。日数にもよるけれど、わたしならゴミは捨てて置くと思うわ。特に生ごみとか」
一日くらいならそのまま出かける人もいるだろう。それが数日となれば、ある程度の片づけはしておく人の方が多いかもしれない。それはどちらかと言うと家庭環境にもよるだろうが。
「お兄さんはどんな人だった?」
以前彼のマンションに入った時、定期的に換気と簡単な掃除をしていると聞いた。とてもシンプルで片付いた部屋だと思っていたが、それは片づけた後だったのかもしれない。
「ここへは何度か来たことがあって。もちろん兄がいた時にね」
兄妹仲はきっと良好だったに違いない。
「ライターになってからはあまり家にいないことが多くて、雑誌や資料は増えていったけれどシンプルな部屋で片付いている方だったと思う」
「料理とかは」
「家にいる時は自炊していると言ってた」
「そっか」
エレベーターから降り、目的の部屋まで来た二人。彼女は鍵を開けながら思い出したように言う。
「そう言えば、まとめたゴミがそのままだったわ」
「何ゴミ?」
この辺ではゴミ袋はごみの種類で袋が決まっており、色分けがなされていた。
「燃えるゴミだった気がする。ここのゴミ出しの日程だと、燃えるゴミは火曜日と金曜日」
陽菜に続いて中に入ろうとしていた戀は立ち止まる。
2年前の11月22日は確か月曜日。翌火曜日は祝日だったが、基本どこの地域でも燃えるゴミは回収に来た気がした。年のため、スマホにて検索してみるが年末年始以外の祝日は回収とある。
仮にいなくなったのが11月22日の月曜日でなかったとしても、ゴミ出しをするために戻るつもりはあったのだろうと思う。そうでなければゴミをまとめたりはしないだろう。
「ざっと見、何かがなくなっているようには見えないわ」
立ち尽くす戀のところに寝室から出てきた陽菜が告げる。その声にハッとして靴を脱ぐ戀。
「確証はあるの?」
戀の言葉に陽菜は再び寝室に足を踏み入れると、”ちょっと来て”とでも言うように手招きをしたのだった。
「うん?」
あれから二人は陽菜の兄のマンションへ向かった。目的は彼が家から何か持ち出していないかを調べるため。
「いくら妹だからって兄の全てを知っているわけではないわ」
「それはわかってるよ」
だが、人が予め何日か家を空けようとしたなら決まった行動が何点かあるだろう。
駐車場へ着くと二人は車から降りて部屋へ向かうためにエレベーターに乗り込む。
「今から聞く質問に答えて欲しい。わかる範囲で良いから」
「わかったわ」
「例えば陽菜さんが以前から旅行を計画していたとする。前提は一人暮らし」
「ええ」
「何を準備して置くと思う?」
人にも差はあるとは思うが必要な準備をしておくはずだ。旅行に慣れていたとしたなら荷物は軽装になると思うが、最低限必要なことやものは決まってくる。スマホ決済や電子マネーが使えるところが多くなったとはいえ、全ての店ではない。いくらかの現金は必要となるだろうし、それを入れる財布くらいは持ち出すはずだ。
それが長期を見込んでいるとするならば、必要なものは増えてくるだろう。
2年間一度も戻ってないことを考えると気になるのは税金関係。口座の自動引き落とし設定などはwebでもできるようだが。住民税は前の年の収入によって決まる。世帯主かどうかでも金額は変わってくる。
フランスのように住民税をなくしたら良いのにと思いながら、決して安いとは言えない住民税の金額のことを思い出す。今の政治に何の希望も持てなかったとしても、外国人観光客の言う”日本は綺麗”と言う言葉を聞くと日本はマシなのだと思ってしまう。
ゴミだらけの街でルールも守れないような人種と生きて行けるかと問われたら即、否と答えるだろう。マナーを守れない人は多くいる。しかし日本人はどちらかと言うと空気を読むことを元まれる国。人の邪魔になるようなことは極力避ける。それが国民性とも言えなくもない。
「そうね。日数にもよるけれど、わたしならゴミは捨てて置くと思うわ。特に生ごみとか」
一日くらいならそのまま出かける人もいるだろう。それが数日となれば、ある程度の片づけはしておく人の方が多いかもしれない。それはどちらかと言うと家庭環境にもよるだろうが。
「お兄さんはどんな人だった?」
以前彼のマンションに入った時、定期的に換気と簡単な掃除をしていると聞いた。とてもシンプルで片付いた部屋だと思っていたが、それは片づけた後だったのかもしれない。
「ここへは何度か来たことがあって。もちろん兄がいた時にね」
兄妹仲はきっと良好だったに違いない。
「ライターになってからはあまり家にいないことが多くて、雑誌や資料は増えていったけれどシンプルな部屋で片付いている方だったと思う」
「料理とかは」
「家にいる時は自炊していると言ってた」
「そっか」
エレベーターから降り、目的の部屋まで来た二人。彼女は鍵を開けながら思い出したように言う。
「そう言えば、まとめたゴミがそのままだったわ」
「何ゴミ?」
この辺ではゴミ袋はごみの種類で袋が決まっており、色分けがなされていた。
「燃えるゴミだった気がする。ここのゴミ出しの日程だと、燃えるゴミは火曜日と金曜日」
陽菜に続いて中に入ろうとしていた戀は立ち止まる。
2年前の11月22日は確か月曜日。翌火曜日は祝日だったが、基本どこの地域でも燃えるゴミは回収に来た気がした。年のため、スマホにて検索してみるが年末年始以外の祝日は回収とある。
仮にいなくなったのが11月22日の月曜日でなかったとしても、ゴミ出しをするために戻るつもりはあったのだろうと思う。そうでなければゴミをまとめたりはしないだろう。
「ざっと見、何かがなくなっているようには見えないわ」
立ち尽くす戀のところに寝室から出てきた陽菜が告げる。その声にハッとして靴を脱ぐ戀。
「確証はあるの?」
戀の言葉に陽菜は再び寝室に足を踏み入れると、”ちょっと来て”とでも言うように手招きをしたのだった。
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