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3章──取り戻したいもの
1 真実への一歩
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****♡Side・和馬
用があるといってハンカチを渡しただけでいそいそと去っていく彼女。和馬はその人物に見覚えがあった。
──あれは奏斗の今カノ、大川結菜。
噂では面白い子ということだが。
自分はギャル系というものに対して『煩くて自意識過剰』というイメージを抱いてた。少なくとも、おどおどしているようなタイプのギャル系というのは想像がつかない。
だが冷静に考えてみれば、『ギャル系』とは主にファンションやスタイルという見た目に関して指しているのであって性格や思想を指しているわけでないことくらい分かるものだ。
だからギャル系ファンションをしていようが政治経済に関心を持ち投資している人もいるかもしれないし、国の政策に関して積極的に意見を交わしている人もいるに違いない。
メディアというものが都合よく『属性』というイメージとして人々に植え付けているだけなのだ。
──やっぱり俺はただのバカかもしれない。
見た目こそ派手に見えた奏斗の今カノは心配そうな表情をして控えめに和馬にハンカチを差し出した。
返さなくていいと発せられた声は、柔らかく落ち着いたものだった。
他人の言葉を真に受けて勝手なイメージを押し付けて好悪する。それが人間なのだ。自分だってそんなこと嫌というほどわかっていたはずなのに。
──また間違えたんだ。
奏斗の時と全く同じ過ちを繰り返している自分に嫌気がさす。真実なんてものは、自分で調べてつかみ取るもの。他人に振り回されて恨んでいるようじゃ無能でしかない。
──進歩ないな、俺。
和馬はため息を一つついて項垂れる。
あの頃は嫉妬に狂って義姉がどんな人物なのか知ろうともしていなかったように思う。彼女が自分にしたことが全てだと思い込み、噂を鵜呑みにした。
次から次へと男をとっかえひっかえする魔性の女。それが義姉に対しての噂だった。
とは言え、”火のない所に煙は立たぬ”と言うから全てが嘘というわけではなのだろう。しかし問題はその噂が本当かどうか知らずに信じて奏斗に対し酷いことをしてしまったことなのだ。
──人は見た目で他人を判断する。
奏斗が酷い噂を立てられていたのは、その容姿によるものがほとんど。
だがほとんどの人がその噂をただの逆恨みとして相手にしていなかった。それなのに彼の噂を鵜呑みにしていた自分は、実際に彼と話すようになってから事実と異なることを知ったはず。
バカだから学ばないのではない。
学ばないからバカなのだ。
反省してもその後に役立てることがなければ、反省した意味なんかない。
──奏斗は優しかった。
心変わりをしたからといって、平気で裏切るような人ではなかったはず。
そう、思いたいだけかもしれないけれど自分から知ろうとしなければ、真実は闇の中。
身近に義姉のことを知っている人がいるというのに。
奏斗のことを知っている人がいるというのに。
目を背けてきたのは自分。
何故奏斗が急に義姉と仲良くなったのか、その理由について知らねばならない。そして義姉の噂が事実なのか、も。
「待たせて悪い」
じっと床を見つめ二人のことを考えていた和馬は声をかけられて相手を見上げた。
「どうかしたのか? そんな思いつめた顔をして」
「せんせ」
歩きながら話そうと言うように手を差し出す爽一。和馬はハンカチをバッグにしまうとその手を掴んだ。
「先生にさ、聞きたいことがあるんだ」
図書館を出ると和馬はそう切り出す。
「ああ、なんだ? 車の中でもいいか? 話をするのは」
互いにいろいろと荷物を持ったままだ。そして駐車場はすぐそこ。落ち着いてからが良いと判断したのだろう。和馬は”もちろん”と小さく返事をする。
途中、自動販売機で飲み物を購入し、行き先を喫茶店に決めた。二人とも昼がまだだったためだ。
助手席に乗り込みながら、和馬は何から聞くべきかと思案していたのだった。
用があるといってハンカチを渡しただけでいそいそと去っていく彼女。和馬はその人物に見覚えがあった。
──あれは奏斗の今カノ、大川結菜。
噂では面白い子ということだが。
自分はギャル系というものに対して『煩くて自意識過剰』というイメージを抱いてた。少なくとも、おどおどしているようなタイプのギャル系というのは想像がつかない。
だが冷静に考えてみれば、『ギャル系』とは主にファンションやスタイルという見た目に関して指しているのであって性格や思想を指しているわけでないことくらい分かるものだ。
だからギャル系ファンションをしていようが政治経済に関心を持ち投資している人もいるかもしれないし、国の政策に関して積極的に意見を交わしている人もいるに違いない。
メディアというものが都合よく『属性』というイメージとして人々に植え付けているだけなのだ。
──やっぱり俺はただのバカかもしれない。
見た目こそ派手に見えた奏斗の今カノは心配そうな表情をして控えめに和馬にハンカチを差し出した。
返さなくていいと発せられた声は、柔らかく落ち着いたものだった。
他人の言葉を真に受けて勝手なイメージを押し付けて好悪する。それが人間なのだ。自分だってそんなこと嫌というほどわかっていたはずなのに。
──また間違えたんだ。
奏斗の時と全く同じ過ちを繰り返している自分に嫌気がさす。真実なんてものは、自分で調べてつかみ取るもの。他人に振り回されて恨んでいるようじゃ無能でしかない。
──進歩ないな、俺。
和馬はため息を一つついて項垂れる。
あの頃は嫉妬に狂って義姉がどんな人物なのか知ろうともしていなかったように思う。彼女が自分にしたことが全てだと思い込み、噂を鵜呑みにした。
次から次へと男をとっかえひっかえする魔性の女。それが義姉に対しての噂だった。
とは言え、”火のない所に煙は立たぬ”と言うから全てが嘘というわけではなのだろう。しかし問題はその噂が本当かどうか知らずに信じて奏斗に対し酷いことをしてしまったことなのだ。
──人は見た目で他人を判断する。
奏斗が酷い噂を立てられていたのは、その容姿によるものがほとんど。
だがほとんどの人がその噂をただの逆恨みとして相手にしていなかった。それなのに彼の噂を鵜呑みにしていた自分は、実際に彼と話すようになってから事実と異なることを知ったはず。
バカだから学ばないのではない。
学ばないからバカなのだ。
反省してもその後に役立てることがなければ、反省した意味なんかない。
──奏斗は優しかった。
心変わりをしたからといって、平気で裏切るような人ではなかったはず。
そう、思いたいだけかもしれないけれど自分から知ろうとしなければ、真実は闇の中。
身近に義姉のことを知っている人がいるというのに。
奏斗のことを知っている人がいるというのに。
目を背けてきたのは自分。
何故奏斗が急に義姉と仲良くなったのか、その理由について知らねばならない。そして義姉の噂が事実なのか、も。
「待たせて悪い」
じっと床を見つめ二人のことを考えていた和馬は声をかけられて相手を見上げた。
「どうかしたのか? そんな思いつめた顔をして」
「せんせ」
歩きながら話そうと言うように手を差し出す爽一。和馬はハンカチをバッグにしまうとその手を掴んだ。
「先生にさ、聞きたいことがあるんだ」
図書館を出ると和馬はそう切り出す。
「ああ、なんだ? 車の中でもいいか? 話をするのは」
互いにいろいろと荷物を持ったままだ。そして駐車場はすぐそこ。落ち着いてからが良いと判断したのだろう。和馬は”もちろん”と小さく返事をする。
途中、自動販売機で飲み物を購入し、行き先を喫茶店に決めた。二人とも昼がまだだったためだ。
助手席に乗り込みながら、和馬は何から聞くべきかと思案していたのだった。
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