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1章──本当のはじまり
12・変化していく彼
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****♡Side・爽一(教師)
「ねえ、先生」
お昼休み、いつものように和馬が一緒にお昼を食べようと現国の準備室へやってきた。
甘えるように話しかけてくる和馬に鼻の下は下がりっぱなしだが、内容は甘くないようだ。
「どうかしたのか?」
「奏斗が最近オカシイ」
「なんだそれは。クレイジーな感じなのか?」
生徒が暴れているという情報は入っていない。おそらく”トチ狂った”方向性なのだろうと思いながら、話の先を待つ。
「なんでそうなるの……」
「You crazy(君おかしいよ)ってことじゃないのか?」
”違う!”とムッとする和馬。大変かわいらしい。
「そうじゃなくて、最近スマホばっかり見てるし。ここに誘っても来ないし」
爽一としては二人きりなのは大変嬉しいが、話の内容がこれではあまり嬉しくはない。
「白石も人付き合いとかあるんじゃないのか? もしくはスマホゲームにハマっているとか」
「奏斗はゲームなんてしないよ」
ため息をつく和馬。爽一は頬杖をつくと彼の髪を弄ぶ。
「本人に聞いてみたらどうだ? ちょうど来たようだし」
「え?」
奏斗は寒いのか、いつもはワイシャツの上にはカーディガンといういで立ちだが、今日はニットベストにブレザーだった。
「あ、いた。五限は自習だってよ、和馬」
入り口から楠に声をかける奏斗。爽一に対しては軽く片手をあげたのみ。
「日直か?」
爽一は和馬が声をかけやすいように引きとめてやる。我ながら大人だなと思っているあたり、大人にはなり切れていない。
「うん」
と奏斗。
やけに素直な返答である。だが気になるのはそこではなく、どことなく気怠そうな感じのするところ。
奏斗が花穂とつき合い始めてから一か月が経つ。二人がどんなつき合い方をしているのか知らないが、以前の花穂の態度が頭を過る。
──まさかとは思うが、ヤッちゃってるとか?
いや、覚悟するって言ってたしな、そうなっていてもおかしくはないが。
なんだか複雑な気持ちになりながら、会話を交わす二人を眺めていた。
「奏斗、最近つき合い悪くない?」
「そう?」
傍まで歩いてきた彼は棚に寄りかかり、和馬を見下ろしている。
すこし緩められた首元から色気を感じた。
──雰囲気変わったな。こりゃ絶対、お手付きってやつだな。
頬杖をついたままぼんやりと奏斗を眺めていると、目が合い苦笑いされる。
「あ、ごめん。電話」
K学園でスマホの使用は禁止されていない。もちろん授業中に使用するような非常識な行動は注意を受けるが。
つまり学校に校則が多いのは”若者は常識良識をわきまえてない”からであろう。良いこと悪いことが分かり、人として正しい行動ができるなら社会にルールは必要ない。学校に多数ルールが存在するのは、学生に良し悪しの判断が出来ないこと、限度が分からないこと、教育側の利便性などが理由だろう。
逆を返せば教育が行き届き”良識、常識、限度”を理解しているのであれば、自由な校風にすることが可能ということだ。
K学園には例にたがわず制服が存在する。
男子学生の場合はワイシャツにブレザーにネクタイ。カーディガン、ベスト、ニットベストなど学校指定のものが多数存在するが組み合わせはもちろん自由。この学園に制服があるのは、格差によるいじめを防ぐ意味から。
制服にはいろんな意味合いがあると思う。
例えば社会においては経済力がないために自ら用意できない人たちを補助する意味合いもあるだろうし、会社のブランドイメージをつけるためなど。
見ただけでどこの社員なのかわかるというのは、それだけで宣伝効果にもなっているはずだ。その社員に品性を感じればなおさら会社にとってはプラスとなるだろう。
「先生、どう思う?」
部屋を出ていく奏斗を見ながら和馬が言葉を漏らす。
「趣味友でもできたんじゃないのか? あいつ、映画好きだしな」
「俺じゃダメなのかな……」
「それじゃ、ここに来る時間が減るだろ」
「うん? ああ、うん」
あまり納得してはいなさそうだが、奏斗が気を遣ってくれているという意味合いで伝わったようだ。
「ねえ、先生」
お昼休み、いつものように和馬が一緒にお昼を食べようと現国の準備室へやってきた。
甘えるように話しかけてくる和馬に鼻の下は下がりっぱなしだが、内容は甘くないようだ。
「どうかしたのか?」
「奏斗が最近オカシイ」
「なんだそれは。クレイジーな感じなのか?」
生徒が暴れているという情報は入っていない。おそらく”トチ狂った”方向性なのだろうと思いながら、話の先を待つ。
「なんでそうなるの……」
「You crazy(君おかしいよ)ってことじゃないのか?」
”違う!”とムッとする和馬。大変かわいらしい。
「そうじゃなくて、最近スマホばっかり見てるし。ここに誘っても来ないし」
爽一としては二人きりなのは大変嬉しいが、話の内容がこれではあまり嬉しくはない。
「白石も人付き合いとかあるんじゃないのか? もしくはスマホゲームにハマっているとか」
「奏斗はゲームなんてしないよ」
ため息をつく和馬。爽一は頬杖をつくと彼の髪を弄ぶ。
「本人に聞いてみたらどうだ? ちょうど来たようだし」
「え?」
奏斗は寒いのか、いつもはワイシャツの上にはカーディガンといういで立ちだが、今日はニットベストにブレザーだった。
「あ、いた。五限は自習だってよ、和馬」
入り口から楠に声をかける奏斗。爽一に対しては軽く片手をあげたのみ。
「日直か?」
爽一は和馬が声をかけやすいように引きとめてやる。我ながら大人だなと思っているあたり、大人にはなり切れていない。
「うん」
と奏斗。
やけに素直な返答である。だが気になるのはそこではなく、どことなく気怠そうな感じのするところ。
奏斗が花穂とつき合い始めてから一か月が経つ。二人がどんなつき合い方をしているのか知らないが、以前の花穂の態度が頭を過る。
──まさかとは思うが、ヤッちゃってるとか?
いや、覚悟するって言ってたしな、そうなっていてもおかしくはないが。
なんだか複雑な気持ちになりながら、会話を交わす二人を眺めていた。
「奏斗、最近つき合い悪くない?」
「そう?」
傍まで歩いてきた彼は棚に寄りかかり、和馬を見下ろしている。
すこし緩められた首元から色気を感じた。
──雰囲気変わったな。こりゃ絶対、お手付きってやつだな。
頬杖をついたままぼんやりと奏斗を眺めていると、目が合い苦笑いされる。
「あ、ごめん。電話」
K学園でスマホの使用は禁止されていない。もちろん授業中に使用するような非常識な行動は注意を受けるが。
つまり学校に校則が多いのは”若者は常識良識をわきまえてない”からであろう。良いこと悪いことが分かり、人として正しい行動ができるなら社会にルールは必要ない。学校に多数ルールが存在するのは、学生に良し悪しの判断が出来ないこと、限度が分からないこと、教育側の利便性などが理由だろう。
逆を返せば教育が行き届き”良識、常識、限度”を理解しているのであれば、自由な校風にすることが可能ということだ。
K学園には例にたがわず制服が存在する。
男子学生の場合はワイシャツにブレザーにネクタイ。カーディガン、ベスト、ニットベストなど学校指定のものが多数存在するが組み合わせはもちろん自由。この学園に制服があるのは、格差によるいじめを防ぐ意味から。
制服にはいろんな意味合いがあると思う。
例えば社会においては経済力がないために自ら用意できない人たちを補助する意味合いもあるだろうし、会社のブランドイメージをつけるためなど。
見ただけでどこの社員なのかわかるというのは、それだけで宣伝効果にもなっているはずだ。その社員に品性を感じればなおさら会社にとってはプラスとなるだろう。
「先生、どう思う?」
部屋を出ていく奏斗を見ながら和馬が言葉を漏らす。
「趣味友でもできたんじゃないのか? あいつ、映画好きだしな」
「俺じゃダメなのかな……」
「それじゃ、ここに来る時間が減るだろ」
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