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1章──本当のはじまり
7・その事情
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****♡Side・白石 奏斗
──岸倉先生と……誰だ?
和馬の視線の先には爽一がいた。
それだけならまだしも、彼の傍には若い女性が。見たところ、ブランドものの服を身に着けており、それなりの家庭の者……もしくはブランドものに自由に金をかけられる環境にある者であると予想がつく。
彼女は馴れ馴れしく爽一の腕に自分の腕を絡めている。身内か、それともそういう店の者か、あるいは……。
──いやいや。
岸倉先生は女には立たないって言っていたから、同伴ってことはないだろう。
友人、もしくは……。
奏斗はそこで和馬の方に視線を移す。
彼は二人を見て、凄く驚いていたように見えた。つまり、爽一が浮気をしているところを目撃したというよりは、その女性が知っている相手だから驚いたという方がしっくりくる。
──となると、例の義姉ってやつか?
「和馬、行こう」
奏斗は一旦ここから離れるべきだと思った。
爽一は煩悩教師だ。それも和馬に対し、尋常ではないくらいに執着している。きっと、彼女と一緒にいるのも何か理由があるに違いない。
奏斗は和馬の腕を掴み歩き出そうとしたが、彼は一向に動こうとはしない。それだけショックが大きかったということなのだろうか。
参ったなと思っていると、
「和馬、白石」
と不意に声をかけられた。
奏斗がそちらに目を向けると、和馬がショックを受けた元凶である爽一と連れの女性がいつの間にか傍まで来ている。
──は?
一体どういうつもりなんだ?
てっきり隠したいことなのだろうと思っていた。それが想定外の事態に陥っている。
「義姉さん、なんで先生と一緒に……?」
震える声で問う和馬。
奏斗はその手を強く握った。大丈夫だというように。
「岸倉さんは、大学のOB。サークルの先輩にあたるの。今日は参考資料を買うのに付き合ってもらっただけよ」
美声を響かせながら和馬に説明する彼女。
「そうなんだ」
納得したとは言い難い視線を向ける、和馬。
「おい、ちょっと」
奏斗は和馬から離れると、爽一の腕を掴み二人から引き離す。
「なんだ? 白石」
少し離れた場所に爽一を連れ出すと、
「どういうつもりなんだよ」
と、奏斗は小さな声で彼に問う。
「俺はちゃんと拒否したぞ?」
と爽一。
その言葉から、一緒に資料を買う約束のことかと思ったら、どうやら違うようだ。
「アイツが、白石を紹介して欲しいって」
「は? 俺?」
「俺は断ったぞ。相手は高校生だしって」
不服そうな爽一。
奏斗は二人の方を振り返る。話が終わったのか、彼女は奏斗と目が合うとひらひらと手を振った。
──状況が呑み込めない。
和馬の義姉さんが、何故紹介してくれというのか?
そもそも岸倉先生は何故、和馬の義姉と知り合いなことを今まで隠していたのか。
隠していたのにここで俺たちを無視をせず、コンタクトをとったのか?
聞きたいことは色々とあるが、今ここでということにはいかないようだ。
「なんで紹介してくれって?」
時間がない。
聞けても一つだな、と考えた奏斗は現状を把握するために質問を一つに絞った。物事とは繋がっているものだ。一つ解れば全体像を把握することに繋がる場合もある。
「タイプなんだってさ。白石が」
「はあ?!」
爽一は胸ポケットからスマホを取り出すと、爪先でトントンと叩きながら、
「詳しい話は追ってする」
と言った。
つまり、後で連絡するというジェスチャーだ。
彼は再びスマホを胸ポケットにしまうと、
「行こう」
と言って踵を返し歩き出す。
奏斗はため息をつくと彼に従ったのだった。
──岸倉先生と……誰だ?
和馬の視線の先には爽一がいた。
それだけならまだしも、彼の傍には若い女性が。見たところ、ブランドものの服を身に着けており、それなりの家庭の者……もしくはブランドものに自由に金をかけられる環境にある者であると予想がつく。
彼女は馴れ馴れしく爽一の腕に自分の腕を絡めている。身内か、それともそういう店の者か、あるいは……。
──いやいや。
岸倉先生は女には立たないって言っていたから、同伴ってことはないだろう。
友人、もしくは……。
奏斗はそこで和馬の方に視線を移す。
彼は二人を見て、凄く驚いていたように見えた。つまり、爽一が浮気をしているところを目撃したというよりは、その女性が知っている相手だから驚いたという方がしっくりくる。
──となると、例の義姉ってやつか?
「和馬、行こう」
奏斗は一旦ここから離れるべきだと思った。
爽一は煩悩教師だ。それも和馬に対し、尋常ではないくらいに執着している。きっと、彼女と一緒にいるのも何か理由があるに違いない。
奏斗は和馬の腕を掴み歩き出そうとしたが、彼は一向に動こうとはしない。それだけショックが大きかったということなのだろうか。
参ったなと思っていると、
「和馬、白石」
と不意に声をかけられた。
奏斗がそちらに目を向けると、和馬がショックを受けた元凶である爽一と連れの女性がいつの間にか傍まで来ている。
──は?
一体どういうつもりなんだ?
てっきり隠したいことなのだろうと思っていた。それが想定外の事態に陥っている。
「義姉さん、なんで先生と一緒に……?」
震える声で問う和馬。
奏斗はその手を強く握った。大丈夫だというように。
「岸倉さんは、大学のOB。サークルの先輩にあたるの。今日は参考資料を買うのに付き合ってもらっただけよ」
美声を響かせながら和馬に説明する彼女。
「そうなんだ」
納得したとは言い難い視線を向ける、和馬。
「おい、ちょっと」
奏斗は和馬から離れると、爽一の腕を掴み二人から引き離す。
「なんだ? 白石」
少し離れた場所に爽一を連れ出すと、
「どういうつもりなんだよ」
と、奏斗は小さな声で彼に問う。
「俺はちゃんと拒否したぞ?」
と爽一。
その言葉から、一緒に資料を買う約束のことかと思ったら、どうやら違うようだ。
「アイツが、白石を紹介して欲しいって」
「は? 俺?」
「俺は断ったぞ。相手は高校生だしって」
不服そうな爽一。
奏斗は二人の方を振り返る。話が終わったのか、彼女は奏斗と目が合うとひらひらと手を振った。
──状況が呑み込めない。
和馬の義姉さんが、何故紹介してくれというのか?
そもそも岸倉先生は何故、和馬の義姉と知り合いなことを今まで隠していたのか。
隠していたのにここで俺たちを無視をせず、コンタクトをとったのか?
聞きたいことは色々とあるが、今ここでということにはいかないようだ。
「なんで紹介してくれって?」
時間がない。
聞けても一つだな、と考えた奏斗は現状を把握するために質問を一つに絞った。物事とは繋がっているものだ。一つ解れば全体像を把握することに繋がる場合もある。
「タイプなんだってさ。白石が」
「はあ?!」
爽一は胸ポケットからスマホを取り出すと、爪先でトントンと叩きながら、
「詳しい話は追ってする」
と言った。
つまり、後で連絡するというジェスチャーだ。
彼は再びスマホを胸ポケットにしまうと、
「行こう」
と言って踵を返し歩き出す。
奏斗はため息をつくと彼に従ったのだった。
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