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0章──それが恋に変わる時
11・変わりゆくだろう未来を
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****♡Side・爽一
「なかなかイケるんじゃないか?」
K学園の制服は全体に灰色系統の配色に、黒みがかった落ち着いたえんじ色のタイが特徴だ。タイは細めだが、シャツも灰色系統なので大人が着てもあまり違和感がない。シャツの上に、カーディガンを羽織ると、
「先生?」
と愛しい彼の声が聞こえた。
「どうだ、若く見えるか?」
と、両手を広げてみせると、
「学生みたい」
と彼は笑いながら、予備のタイを爽一に差し出す。爽一はそれを受け取ると、首にかけながら、
「和馬と同級生か。悪くないな」
と冗談を言うが、彼は、
「同級生だったら、付き合ってくれました?」
と寂し気な笑みを浮かべる。
──なぜ、和馬はこんなにも……。
「そうだな」
爽一はあることを心に決めていた。
「よしじゃ、恋人ごっこ」
と言って彼に手を差し出す。
彼はためらいながらも、手を握り返した。
──俺は、もう和馬を傷つけたくない。
守ってやりたい。
「和馬」
「はい」
「俺が守ってやるよ、お前のこと」
「え?」
あの女から。
「もう、誰も和馬に触れさせたくない」
だから、と続ける。
「俺が守るから」
きっと、変わった恋人ごっこだと思っているに違いない。
「行こうか」
「先生……?」
爽一が楠に目を向けると、彼はとても嬉しそうな顔をしていた。こんな簡単なことで、彼を笑顔に出来たのかと思うと、爽一は複雑な気持ちになる。ずっと思い描いていた彼とは違う、彼。
昨日のことを思い出し、胸が痛んだ。自分が望んだことなのに。
『先生ッ……嫌だ……抜いて』
ポロポロと涙を溢し、嫌々というように首を左右に振る楠に覆い被さり、爽一はその髪を撫でる。メガネを外した彼は存外幼さが残っており、愛しさが増した。
『和馬は、好きな人とこういうことしたくないのか?』
『それは、付き合ってからすることじゃないの?』
赤くなった目元に、ちゅっと口づけると、
『俺が子供っぽいから先生は相手にしてくれないの?』
と彼が問う。
──身体だけの関係が大人の関係だと言うなら、日本は爛れている。
『和馬は、どんな恋愛がしたいんだよ』
大人っぽく見えていた彼は、とても純粋だった。
『手を繋いだり、デートしたりしたい』
好きな人と一緒に居たいと、彼は言う。
『和馬。俺は恋人とはさ、抱きたいし、抱かれたいんだよ』
彼がもし、この先も自分を好きでいてくれるなら。もし、卒業のその先も好きでいてくれるというのなら。ちゃんと知っていて欲しいと思った。
『和馬には、そう言う事できるのか?』
『できるなら、俺と付き合ってくれる?』
彼は痛いくらいに真っ直ぐで、純粋だった。
『和馬には無理だろ』
──こんなに嫌がって、全く感じやしない。
これじゃまるで、和馬の義姉としてること同じじゃないか。
『先生……俺、頑張るから。見捨てないで』
爽一はただぎゅっと彼を抱きしめる。彼が欲しいのは、愛情なんだとやっと気づく。何故彼が奏斗に憧れるのかも。
──俺は、どうしようもなく和馬のことが好きだ。
「なあ、和馬」
「はい?」
少しよそよそしいのは、爽一が彼から希望を奪うようなことを言ったからだ。
「デート、しようか」
「え?」
「和馬が卒業して、それでも俺と付き合いたいって思っていたら」
きっと、彼は後半年くらいと思っただろう。これから爽一がどう動くか分かっていない。知らせる気もない。
──和馬はきっと、勘違いして離れてしまうだろう。
でもこんなに真っ直ぐな想いから目を背けたら、俺はきっと後悔する。
これは、賭けでしかない。
「ほんとに?」
彼はすごく嬉しそうな顔をする。
「ああ。約束だ」
──中高生が教師に憧れるのは、大人に見えるからなんだ。
大学生になれば、世界は変わる。
大人だと思っていた相手が、自分と大して変わらないことを知って幻滅するモノなんだ。
そして、年の近い相手と交際する。和馬もきっと……。
「なかなかイケるんじゃないか?」
K学園の制服は全体に灰色系統の配色に、黒みがかった落ち着いたえんじ色のタイが特徴だ。タイは細めだが、シャツも灰色系統なので大人が着てもあまり違和感がない。シャツの上に、カーディガンを羽織ると、
「先生?」
と愛しい彼の声が聞こえた。
「どうだ、若く見えるか?」
と、両手を広げてみせると、
「学生みたい」
と彼は笑いながら、予備のタイを爽一に差し出す。爽一はそれを受け取ると、首にかけながら、
「和馬と同級生か。悪くないな」
と冗談を言うが、彼は、
「同級生だったら、付き合ってくれました?」
と寂し気な笑みを浮かべる。
──なぜ、和馬はこんなにも……。
「そうだな」
爽一はあることを心に決めていた。
「よしじゃ、恋人ごっこ」
と言って彼に手を差し出す。
彼はためらいながらも、手を握り返した。
──俺は、もう和馬を傷つけたくない。
守ってやりたい。
「和馬」
「はい」
「俺が守ってやるよ、お前のこと」
「え?」
あの女から。
「もう、誰も和馬に触れさせたくない」
だから、と続ける。
「俺が守るから」
きっと、変わった恋人ごっこだと思っているに違いない。
「行こうか」
「先生……?」
爽一が楠に目を向けると、彼はとても嬉しそうな顔をしていた。こんな簡単なことで、彼を笑顔に出来たのかと思うと、爽一は複雑な気持ちになる。ずっと思い描いていた彼とは違う、彼。
昨日のことを思い出し、胸が痛んだ。自分が望んだことなのに。
『先生ッ……嫌だ……抜いて』
ポロポロと涙を溢し、嫌々というように首を左右に振る楠に覆い被さり、爽一はその髪を撫でる。メガネを外した彼は存外幼さが残っており、愛しさが増した。
『和馬は、好きな人とこういうことしたくないのか?』
『それは、付き合ってからすることじゃないの?』
赤くなった目元に、ちゅっと口づけると、
『俺が子供っぽいから先生は相手にしてくれないの?』
と彼が問う。
──身体だけの関係が大人の関係だと言うなら、日本は爛れている。
『和馬は、どんな恋愛がしたいんだよ』
大人っぽく見えていた彼は、とても純粋だった。
『手を繋いだり、デートしたりしたい』
好きな人と一緒に居たいと、彼は言う。
『和馬。俺は恋人とはさ、抱きたいし、抱かれたいんだよ』
彼がもし、この先も自分を好きでいてくれるなら。もし、卒業のその先も好きでいてくれるというのなら。ちゃんと知っていて欲しいと思った。
『和馬には、そう言う事できるのか?』
『できるなら、俺と付き合ってくれる?』
彼は痛いくらいに真っ直ぐで、純粋だった。
『和馬には無理だろ』
──こんなに嫌がって、全く感じやしない。
これじゃまるで、和馬の義姉としてること同じじゃないか。
『先生……俺、頑張るから。見捨てないで』
爽一はただぎゅっと彼を抱きしめる。彼が欲しいのは、愛情なんだとやっと気づく。何故彼が奏斗に憧れるのかも。
──俺は、どうしようもなく和馬のことが好きだ。
「なあ、和馬」
「はい?」
少しよそよそしいのは、爽一が彼から希望を奪うようなことを言ったからだ。
「デート、しようか」
「え?」
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きっと、彼は後半年くらいと思っただろう。これから爽一がどう動くか分かっていない。知らせる気もない。
──和馬はきっと、勘違いして離れてしまうだろう。
でもこんなに真っ直ぐな想いから目を背けたら、俺はきっと後悔する。
これは、賭けでしかない。
「ほんとに?」
彼はすごく嬉しそうな顔をする。
「ああ。約束だ」
──中高生が教師に憧れるのは、大人に見えるからなんだ。
大学生になれば、世界は変わる。
大人だと思っていた相手が、自分と大して変わらないことを知って幻滅するモノなんだ。
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