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0章──それが恋に変わる時
12・和馬と奏斗
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****♡Side・奏斗
あの日、楠にカバンを届けに行った日。
彼から真実を聞かされた。彼が自分に何故、近づいたのかを。
『白石、ごめん』
黙っていれば良いものを、どうして彼はカミングアウトしてしまうのか。
『和馬』
奏斗は彼の腕を掴むと胸に引き寄せ、抱きしめた。自分が感じていたよりもずっと弱くて、繊細な彼。ポンポンと優しく背中を撫でてやる。
『俺、和馬のこと親友だと思ってるよ』
『白石……』
『辛いこと話してくれて、ありがとう』
──正直、俺は和馬のこと好きになりかけてた。
自分の気持ちを止めたのは、彼の好きな相手が”岸倉先生”だと知ったから。先生なんて好きになったところで、叶わない恋。彼は、一人で気持ちを抱えることが出来なくなったように見えた。
──今、和馬は先生と二人きり。
余計なことをしてしまっただろうか?
本当は二人きりになどさせたくない。
先日の光景がよみがえる。爽一が一体どういうつもりで、楠にあんなことをしていたのか分かっていない。傷ついた彼が自分にカミングアウトをしたのは、頼れる相手が奏斗しかいなかったからだと思っている。
『親友って思ってくれて、ありがとう』
嬉しそうにくしゃっと笑う彼を、奏斗は目を細め見つめていた。
飄々としているように見えていた彼が、すごく近くに感じて。
『うん?』
『和馬の髪、艶々だな』
その前髪にそっと触れる。
『和馬は染めたりしないのか?』
『俺は似合わないから』
ストレートの黒髪に眼鏡。いかにも真面目そうな彼。時々意地悪で、でも繊細で。
計画的に近づいてきた彼は、自分自身を”腹黒い”だなんて言うけれど、奏斗にはそうは思えなかった。ただ彼は、”岸倉先生”の視界に入りたかっただけなのだ。
──邪魔……したい。
良くない感情が奏斗を包む。
”岸倉先生”よりも自分のほうが、もっとずっと彼を大切に出来るのにと思ってしまう。だが、楠が愛されたい相手はあの人なのだ。
──先生の良さは、自分だって知ってるじゃないか。
自分が一番つらい時に、信じて支えてくれたのは他でもない”岸倉先生”だ。
「白石、どうかしたのか?」
一人で悶々としていると、それまで無言で腕を組み正門の柵に寄り掛かっていた大崎 圭一が、心配そうにこちらを見ていた。
「え?」
そこで奏斗は我に返る。
そして自分の気持ちに気づいてしまった。
──俺は、和馬を独り占めしたいんだ。
子供みたいな独占欲。
以前一緒に買い物に行ったときに、複雑な気持ちになったことを思い出す。
帰っていいよと言ったのは自分なのに、先に帰るといったことが気に入らなかったのだ。この学園の者なら、奏斗の悪い噂のことを知らないものは居ないのに、彼は一度だってその噂について自分から触れたことはなかった。
初めからまったく気にしていない、というスタンスがとても気になっている。
──知りたい。
何故なのか。
あの日、楠にカバンを届けに行った日。
彼から真実を聞かされた。彼が自分に何故、近づいたのかを。
『白石、ごめん』
黙っていれば良いものを、どうして彼はカミングアウトしてしまうのか。
『和馬』
奏斗は彼の腕を掴むと胸に引き寄せ、抱きしめた。自分が感じていたよりもずっと弱くて、繊細な彼。ポンポンと優しく背中を撫でてやる。
『俺、和馬のこと親友だと思ってるよ』
『白石……』
『辛いこと話してくれて、ありがとう』
──正直、俺は和馬のこと好きになりかけてた。
自分の気持ちを止めたのは、彼の好きな相手が”岸倉先生”だと知ったから。先生なんて好きになったところで、叶わない恋。彼は、一人で気持ちを抱えることが出来なくなったように見えた。
──今、和馬は先生と二人きり。
余計なことをしてしまっただろうか?
本当は二人きりになどさせたくない。
先日の光景がよみがえる。爽一が一体どういうつもりで、楠にあんなことをしていたのか分かっていない。傷ついた彼が自分にカミングアウトをしたのは、頼れる相手が奏斗しかいなかったからだと思っている。
『親友って思ってくれて、ありがとう』
嬉しそうにくしゃっと笑う彼を、奏斗は目を細め見つめていた。
飄々としているように見えていた彼が、すごく近くに感じて。
『うん?』
『和馬の髪、艶々だな』
その前髪にそっと触れる。
『和馬は染めたりしないのか?』
『俺は似合わないから』
ストレートの黒髪に眼鏡。いかにも真面目そうな彼。時々意地悪で、でも繊細で。
計画的に近づいてきた彼は、自分自身を”腹黒い”だなんて言うけれど、奏斗にはそうは思えなかった。ただ彼は、”岸倉先生”の視界に入りたかっただけなのだ。
──邪魔……したい。
良くない感情が奏斗を包む。
”岸倉先生”よりも自分のほうが、もっとずっと彼を大切に出来るのにと思ってしまう。だが、楠が愛されたい相手はあの人なのだ。
──先生の良さは、自分だって知ってるじゃないか。
自分が一番つらい時に、信じて支えてくれたのは他でもない”岸倉先生”だ。
「白石、どうかしたのか?」
一人で悶々としていると、それまで無言で腕を組み正門の柵に寄り掛かっていた大崎 圭一が、心配そうにこちらを見ていた。
「え?」
そこで奏斗は我に返る。
そして自分の気持ちに気づいてしまった。
──俺は、和馬を独り占めしたいんだ。
子供みたいな独占欲。
以前一緒に買い物に行ったときに、複雑な気持ちになったことを思い出す。
帰っていいよと言ったのは自分なのに、先に帰るといったことが気に入らなかったのだ。この学園の者なら、奏斗の悪い噂のことを知らないものは居ないのに、彼は一度だってその噂について自分から触れたことはなかった。
初めからまったく気にしていない、というスタンスがとても気になっている。
──知りたい。
何故なのか。
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