11 / 51
0章──それが恋に変わる時
9・好きになった日
しおりを挟む
****♡Side・楠
いいなって思ってた、ずっと。
羨ましいなって思っていた。
──自分には本音で話せる人はいない。
ただ上辺で付き合って、無事に高等部を卒業し、大学部へ上がって。なんとなく人に紛れて器用に生きて行けばいいと思っていた。
”白石 奏斗”
他校生の彼女がいて、仲のいい妹がいて。幸せそうに見えていた同級生が、ある日突然、どん底に落ちたのを知る。彼は”こっち側”の人間になったんだと思った。
──でも、違ったんだ。
彼には手を差し伸べてくれる人がいた。自分は我慢して来たのに。誰にも頼らなかったのに。どうして彼には味方がいて、自分にはいないのだろう。彼と自分は何が違うんだろう?
そんな時、奏斗が頼りにしている先生が、生徒に想いを寄せていることに気づいた。
──俺はあの時、ただ……白石に嫉妬して、先生の気持ちを自分に向けたかっただけで。
初めは本気じゃなかったんだ。
でも自分は爽一を観察しているうちに、この人はあの生徒のことを諦めたら、奏斗のことを好きになるんだろうか?と思った。
──白石に取られたくないって……思ってしまったんだ。
話してみたら優しい人で、生徒をわけるような人じゃなかった。
もしかしたら、自分の悩みも聞いてくれるかもしれない、そう感じた……。
だが、現実はどうだ。先生の眼中に自分は居ない。どんなに好きだと言っても、届かない。振ったくせに、なぜこんなことをするんだろう?
──俺は、都合のいい性欲処理の道具なの?
「和馬」
優しい声で、名前を呼ばないで。
勘違いしてしまうから。
白石の代わりは嫌だ。
「!」
悶々としながらも、一切抵抗しなかった楠は、爽一の指がある一点に触れた時、血の気が引いた。
「先生、なんで……そんなとこ」
「男同士はここを使うことぐらい、お前だって知ってるだろう?」
爽一の言葉に楠は瞳を揺らす。
──怖い……。
「俺に告白して来たんだ、知っていて、とうぜ……知らないのか?」
楠は返事の代わりに瞬きをする。知らなければ許されるものだと思っていた。
「お前……ホントに初めてなんだな」
「遊んでるように見えるんですか?」
「いや。力抜いてろよ?」
小さく笑んだ彼から笑みが消え、トロッとした何かと共に彼の指先が蕾を突《つつ》く。
「やだ……何して」
「解さなきゃ入らないだろ」
「入る? 何を入れるんです?」
パニックになる楠に、
「和馬。今に分かる」
と告げる彼。
「いやだ! 先生っ……やめて……」
抵抗むなしく、彼の指はくぷぷっと蕾に挿入される。
「和馬、今によくなる」
「いやだぁっ……なんでこんなことっ」
胸を押しのけようとするが、逆に押さえつけられてしまう。
「和馬、俺はお前のことが……だから」
───なんて言ったの?
聞えない。
キコエナイヨ……。
──誰も俺を救ってはくれない。
「いやだあああああッ」
「和馬!」
「なんで……なんでこんな酷いことするの? 俺が先生を好きなったからいけないの?」
震える声で、問いかける。充分に解されたそこを、爽一自身が貫いていた。屈辱的な行為に涙が止まらない。
「和馬、これで最後にするから。一緒に気持ちいいことしよう?」
「最後? 最後って何?」
自分にこんな酷いことをしておいて、いなくなるとでも言うのか?
人の心をボロボロにして置いて、想う事すら……見ていることすら許さないというのか?
「そのままの意味だ」
「先生、辞めちゃうの?」
返事の代わりにちゅっと優しい口づけをくれる。
「好きなのに……先生っ」
「傍に居ても、酷いことしかできない」
「どうして俺の傍にはいてくれないの?」
「何を言ってるんだ?」
すれ違い続けた二人の間には、もはや交差する地点すら存在しない。
「先生が贔屓するのは、白石ばかり」
「なんでそうなるんだよ」
互いに何を思い違いをしているのかも分からないまま。
「このこと誰にも言わないから。だから……辞めるとか言わないで」
どれだけ爽一に愛されているのかわからないまま。
「あと、半年なんだよ?」
爽一は、瞬きを一つして楠の頬を撫でる。教師を辞め気持ちを伝えたいと思っているのに、何故か反対されているのだ。
「先生のこと、諦めるから。ねえ、辞めないで」
諦めて欲しくなんかないのに、言う事も出来ない。爽一はただ切なげに眉を寄せた。
「どうして俺の願いは何も聞いてくれないの?」
なんと答えたらいいのか分からないまま、爽一は楠を抱きしめる。
「和馬、俺にとってお前は特別だ」
楠は、その言葉を聞いて自分の想い通りにできるから、と解釈した。
「何故、それがわからない?」
そもそも言わなくてもわかると思っていることが大間違いである。
──わからない?
わかっている。
先生は白石が大切で、俺のことは自分に好意を持っている上に弱みを握っているから、思い通りになると思っている。
そういうことだろ?
でも、好きな人から性欲処理の道具にされるのはいやだ。
「なあ、和馬はどうして俺がこんなことするかわからないのか?」
──白石には手を出せないから。
だから……。
「分からないから……こうなってるんだよな」
爽一は深いため息をついて楠の背中を撫で、肩口に顔を埋めた。
「俺はずっとこうしていたいと思ってるよ」
それは温もりを分け合いたいという意味なのだが。
──俺は早く抜いて欲しい。
こんなの、もう、いやだ。
全く噛み合っていなかったのである。
いいなって思ってた、ずっと。
羨ましいなって思っていた。
──自分には本音で話せる人はいない。
ただ上辺で付き合って、無事に高等部を卒業し、大学部へ上がって。なんとなく人に紛れて器用に生きて行けばいいと思っていた。
”白石 奏斗”
他校生の彼女がいて、仲のいい妹がいて。幸せそうに見えていた同級生が、ある日突然、どん底に落ちたのを知る。彼は”こっち側”の人間になったんだと思った。
──でも、違ったんだ。
彼には手を差し伸べてくれる人がいた。自分は我慢して来たのに。誰にも頼らなかったのに。どうして彼には味方がいて、自分にはいないのだろう。彼と自分は何が違うんだろう?
そんな時、奏斗が頼りにしている先生が、生徒に想いを寄せていることに気づいた。
──俺はあの時、ただ……白石に嫉妬して、先生の気持ちを自分に向けたかっただけで。
初めは本気じゃなかったんだ。
でも自分は爽一を観察しているうちに、この人はあの生徒のことを諦めたら、奏斗のことを好きになるんだろうか?と思った。
──白石に取られたくないって……思ってしまったんだ。
話してみたら優しい人で、生徒をわけるような人じゃなかった。
もしかしたら、自分の悩みも聞いてくれるかもしれない、そう感じた……。
だが、現実はどうだ。先生の眼中に自分は居ない。どんなに好きだと言っても、届かない。振ったくせに、なぜこんなことをするんだろう?
──俺は、都合のいい性欲処理の道具なの?
「和馬」
優しい声で、名前を呼ばないで。
勘違いしてしまうから。
白石の代わりは嫌だ。
「!」
悶々としながらも、一切抵抗しなかった楠は、爽一の指がある一点に触れた時、血の気が引いた。
「先生、なんで……そんなとこ」
「男同士はここを使うことぐらい、お前だって知ってるだろう?」
爽一の言葉に楠は瞳を揺らす。
──怖い……。
「俺に告白して来たんだ、知っていて、とうぜ……知らないのか?」
楠は返事の代わりに瞬きをする。知らなければ許されるものだと思っていた。
「お前……ホントに初めてなんだな」
「遊んでるように見えるんですか?」
「いや。力抜いてろよ?」
小さく笑んだ彼から笑みが消え、トロッとした何かと共に彼の指先が蕾を突《つつ》く。
「やだ……何して」
「解さなきゃ入らないだろ」
「入る? 何を入れるんです?」
パニックになる楠に、
「和馬。今に分かる」
と告げる彼。
「いやだ! 先生っ……やめて……」
抵抗むなしく、彼の指はくぷぷっと蕾に挿入される。
「和馬、今によくなる」
「いやだぁっ……なんでこんなことっ」
胸を押しのけようとするが、逆に押さえつけられてしまう。
「和馬、俺はお前のことが……だから」
───なんて言ったの?
聞えない。
キコエナイヨ……。
──誰も俺を救ってはくれない。
「いやだあああああッ」
「和馬!」
「なんで……なんでこんな酷いことするの? 俺が先生を好きなったからいけないの?」
震える声で、問いかける。充分に解されたそこを、爽一自身が貫いていた。屈辱的な行為に涙が止まらない。
「和馬、これで最後にするから。一緒に気持ちいいことしよう?」
「最後? 最後って何?」
自分にこんな酷いことをしておいて、いなくなるとでも言うのか?
人の心をボロボロにして置いて、想う事すら……見ていることすら許さないというのか?
「そのままの意味だ」
「先生、辞めちゃうの?」
返事の代わりにちゅっと優しい口づけをくれる。
「好きなのに……先生っ」
「傍に居ても、酷いことしかできない」
「どうして俺の傍にはいてくれないの?」
「何を言ってるんだ?」
すれ違い続けた二人の間には、もはや交差する地点すら存在しない。
「先生が贔屓するのは、白石ばかり」
「なんでそうなるんだよ」
互いに何を思い違いをしているのかも分からないまま。
「このこと誰にも言わないから。だから……辞めるとか言わないで」
どれだけ爽一に愛されているのかわからないまま。
「あと、半年なんだよ?」
爽一は、瞬きを一つして楠の頬を撫でる。教師を辞め気持ちを伝えたいと思っているのに、何故か反対されているのだ。
「先生のこと、諦めるから。ねえ、辞めないで」
諦めて欲しくなんかないのに、言う事も出来ない。爽一はただ切なげに眉を寄せた。
「どうして俺の願いは何も聞いてくれないの?」
なんと答えたらいいのか分からないまま、爽一は楠を抱きしめる。
「和馬、俺にとってお前は特別だ」
楠は、その言葉を聞いて自分の想い通りにできるから、と解釈した。
「何故、それがわからない?」
そもそも言わなくてもわかると思っていることが大間違いである。
──わからない?
わかっている。
先生は白石が大切で、俺のことは自分に好意を持っている上に弱みを握っているから、思い通りになると思っている。
そういうことだろ?
でも、好きな人から性欲処理の道具にされるのはいやだ。
「なあ、和馬はどうして俺がこんなことするかわからないのか?」
──白石には手を出せないから。
だから……。
「分からないから……こうなってるんだよな」
爽一は深いため息をついて楠の背中を撫で、肩口に顔を埋めた。
「俺はずっとこうしていたいと思ってるよ」
それは温もりを分け合いたいという意味なのだが。
──俺は早く抜いて欲しい。
こんなの、もう、いやだ。
全く噛み合っていなかったのである。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる