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0章──それが恋に変わる時
0・プロローグ
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『ねえ、先生』
『うん?』
彼は風紀委員会の腕章をつけると、頬杖をつきこちらに目を向けた。
『先生は運命って信じる?』
爽一は、教師の職に就いて今年で二年目。初任にして生徒会の顧問を押し付けられ、断り切れず引き受けた。そのため、顧問としても二年目だった。彼は昨年生徒会副会長を務めていた大崎 圭一である。
『随分とロマンチックなことを聞くんだな』
正直意外だった。彼は、大崎グループの時期副社長であり、二十歳となると同時に就任するという噂がある。
──産まれながらに将来が約束されているというのも、運命と言えるのかもな。
だけど……。
きっと、彼の言う”運命”はそういう意味合いではない。
『先生?』
『俺は……』
──俺はあの時、何と答えただろうか?
不慣れな自分に手を差し伸べてくれた彼。
高校生とは思えないほどしっかりしていた彼に、いけないと思いながらも惹かれてしまった。彼にはしっかりしなければならない事情があったことも知らずに。
昨年一年間の間に、彼についていろんなことを知る。その結果、住む世界が違うと感じた。
彼はセレブで、大会社の副社長になる人間。
それだけでも、雲の上の人なのに……。
何があったのか突然、大里グループ令嬢の大里 ミノリと付き合い始めた。K学園で二大セレブといえば、彼らのこと。知らないものなんていない。しかもミノリは、圭一の同級生で幼馴染みの美少女だ。誰も文句のつけようがないくらい、お似合いの二人だった。
『大崎は、ずっと想ってる相手がいるんだよね』
圭一の親友である古川は、昨年は風紀員会の副委員長をやっており、今年度は生徒会長を務めている。初等部のころからの友人だという彼は、大崎邸にも出入りしてしていたという。
そんな彼だからこそ知る事情なのかもしれない。その話を聞いた時、二人は本当に恋人なのだろうかと疑った。
「先生、何そんなに見つめてるんですか?」
爽一は、聞きなれない生徒の声にドキリとする。
見上げれば、爽一が受け持っているクラスの隣のクラスの生徒である、楠 和馬であった。
「あ、いや……なんでも……」
爽一は、正門のところで何やら話をしている圭一を眺めていたのだが、とっさに誤魔化そうとする。
疚しいことがあるわけでもないのに。
「ん?……大崎?」
──待て、なんでこの距離でわかるんだ!
「あいつも大変だよなあ……学校では風紀委員長として頑張って。傍ら社長秘書だろ? その上、休日には大里とデートだって」
「デート……」
「羨ましい……って思ったこともあったけど。あんな多忙じゃあな」
敬語を忘れていたことにハッとした彼がこちらに視線を移したが、爽一は床を見つめていた。
青ざめた顔で。
「先生?」
『うん?』
彼は風紀委員会の腕章をつけると、頬杖をつきこちらに目を向けた。
『先生は運命って信じる?』
爽一は、教師の職に就いて今年で二年目。初任にして生徒会の顧問を押し付けられ、断り切れず引き受けた。そのため、顧問としても二年目だった。彼は昨年生徒会副会長を務めていた大崎 圭一である。
『随分とロマンチックなことを聞くんだな』
正直意外だった。彼は、大崎グループの時期副社長であり、二十歳となると同時に就任するという噂がある。
──産まれながらに将来が約束されているというのも、運命と言えるのかもな。
だけど……。
きっと、彼の言う”運命”はそういう意味合いではない。
『先生?』
『俺は……』
──俺はあの時、何と答えただろうか?
不慣れな自分に手を差し伸べてくれた彼。
高校生とは思えないほどしっかりしていた彼に、いけないと思いながらも惹かれてしまった。彼にはしっかりしなければならない事情があったことも知らずに。
昨年一年間の間に、彼についていろんなことを知る。その結果、住む世界が違うと感じた。
彼はセレブで、大会社の副社長になる人間。
それだけでも、雲の上の人なのに……。
何があったのか突然、大里グループ令嬢の大里 ミノリと付き合い始めた。K学園で二大セレブといえば、彼らのこと。知らないものなんていない。しかもミノリは、圭一の同級生で幼馴染みの美少女だ。誰も文句のつけようがないくらい、お似合いの二人だった。
『大崎は、ずっと想ってる相手がいるんだよね』
圭一の親友である古川は、昨年は風紀員会の副委員長をやっており、今年度は生徒会長を務めている。初等部のころからの友人だという彼は、大崎邸にも出入りしてしていたという。
そんな彼だからこそ知る事情なのかもしれない。その話を聞いた時、二人は本当に恋人なのだろうかと疑った。
「先生、何そんなに見つめてるんですか?」
爽一は、聞きなれない生徒の声にドキリとする。
見上げれば、爽一が受け持っているクラスの隣のクラスの生徒である、楠 和馬であった。
「あ、いや……なんでも……」
爽一は、正門のところで何やら話をしている圭一を眺めていたのだが、とっさに誤魔化そうとする。
疚しいことがあるわけでもないのに。
「ん?……大崎?」
──待て、なんでこの距離でわかるんだ!
「あいつも大変だよなあ……学校では風紀委員長として頑張って。傍ら社長秘書だろ? その上、休日には大里とデートだって」
「デート……」
「羨ましい……って思ったこともあったけど。あんな多忙じゃあな」
敬語を忘れていたことにハッとした彼がこちらに視線を移したが、爽一は床を見つめていた。
青ざめた顔で。
「先生?」
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