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2話『手探りで進む二人の初恋』

8・承認欲求の行方【微R】

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****♡Side・副社長(皇)

 思い切って自分のコンプレックスを話して良かったと思う。
 いや、もっと早く言っておくべきだったのだ。
 疲れてしまったのか、胸の中で眠る恋人の髪を優しく撫でる。
 身体の相性は最高だったように思う。
 

 恋人になるまで、凄く苦労したのだ。
 社内での注目度NO.1だったはずの自分。それまでは、つきあおうと言えば、誰とでもつきあえたはずだ。若くて見目麗しく、副社長である自分。
 だが塩田はそんな自分に見向きもしなかった。彼にとっては他の人間と変わらない。ただ、業務を手伝ってくれる上司に他ならなかったと思う。

 初めてだった。
 自分に興味を持たない相手は。
 それまでは良くも悪くも他人から興味を持たれた自分。
 金も権力も、見た目も。
 塩田以往の気を引く材料にはならない。

 かつて実の父より人間として扱ってもらえなかった自分は、承認欲求を塩田に向けた。副社長ではなく、ただ一人の人間として彼に好かれたかったのだ。

『塩田はほんと、何にも興味が無いんだな』
 ため息とともに吐かれた言葉に、
『何にでも反対する両親を持てば、誰だってそうなるだろ』
と言った。
 だからこそ、同僚の板井と電車でんまが彼にとってどれだけ特別な存在なのかを知る。

 そんな彼の心が欲しかった。
 たった一つのポジションが欲しかった。

『俺だけでいいじゃん』
 元恋人にヤキモチを妬く彼が可愛くて、更にその身体を求めた。
『やあ……ッ』
 塩田の両股の裏に手を差し入れ、大きく開くと彼自身を口に含む。
『もうでな……ッ。んんんッ』
 塩田は感情を我慢しない。偽らない。
 彼自身を吸い上げ、その元を撫であげれば快感に身を捩る。
 まだ濡れそぼつ蕾に指を差し入れ、中から刺激を与えながら絶頂へ導く。
『んんッ……』

 どんなに抱いても抱き足りない。
 もっと感じていたい、その温もりを。

『飲んでやるから、出せ。塩田』
『何言って……』
 涙目でやめろと訴える彼を制し、執拗に攻め立て解放へ促した。
 きやすくなっているその身体は、皇の与える快感に従順で驚くほどすんなりと、その熱を皇の口の中に放つ。

『やだって言った』
 塩田の放った愛液を飲み干し、口をすすげば塩田の恨みの言葉が背中に投げかけられた。
 どんな言葉ですら愛しい。
『なんで飲むんだよ』
『欲しかったから』
 言って皇は隣に潜り込むと塩田を抱きしめる。
『お前の全てが欲しいよ、塩田』
『ん』
 彼は皇の胸にすり寄ると、いつの間にか寝息をたて寝てしまった。

 元々性欲は強い方ではない。
 塩田だから欲しいのだ。

──ヤキモチ、可愛かったな。

 実のところ、恋人が欲しいとさえ思ったことはなかったのだ。
 父に認めて貰えず、そのことのせいで歪んだ承認欲求を持ち続けた皇。
 その欲求が誰でもいい誰かではなく、塩田一人に向くころ。
 初めて恋人という存在の大きさに気づく。

 塩田と恋人同士になりたい。
 その瞳に映るのが自分だけなら良いと願った。

──俺の願いはちゃんと叶った。

「皇……好き」
 小さな寝言に、笑みが零れる。
 彼の髪にちゅっと口づけ、
「愛しているよ」
と囁いた。
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