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2話『手探りで進む二人の初恋』

3・風呂場で大好きな彼と【微R】

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****♡Side・塩田

「はあ?!」
 皇が怒りに震えるのは、いつものこと。
 しかし塩田には、何が皇の地雷なのか分からなかった。その為、しょっちゅう地雷を踏んでいるのは否めない。
 むしろ、その怒りが自分に向くことがないので、ほったらかしにしているというほうが正しいのだろうか?

──また皇が怒り狂っている。
 俺は何か変なことを言っただろうか?
 事実を述べただけなのに。 

「どういうことだ、塩田」
 浴槽のなかで皇に詰め寄られ、
「どういうことって言われても、そういうことだよ」
 と返す他ない。

 それは塩田が……広めのジャグジーに皇と二人でゆったりと浸かりながら、
電車でんまとは、よく一緒に風呂に入る』
という話をしたのがきっかけだった。

「つまり電車は塩田の裸を堪能しているというわけか? 俺様よりも先に?!」
「堪能?」
 拳を握り締め、唇を噛みしめる皇をいぶかし気に見やる塩田。

──皇は何を言っているんだ、一体。

「俺様も塩田の身体を堪能する」
と皇は、トチ狂ったことを言い始めたのである。
「は? ちょ……やめッ」
 皇に股間を覗き込まれ、塩田はうろたえた。さすがに他人からそんなことをされた経験は一度もない。
 恥ずかしさというよりは、異常さと危険を感じ、彼を押しのけようとしたが、
「うっ……」
と彼は鼻を抑え、顔を逸らす。

 自分から覗き込んでおいて、失礼極まりない奴だなと思いながら、
「なんだよ」
と塩田が眉をひそめめると、
「いや、鼻血が出そうに……」 
と皇は顔を赤くする。
 どうやら興奮したらしい。
「ふうん」
 塩田はそんな彼に悪戯いたずらがしたくなった。
 悪戯っぽい笑みを浮かべ、
「あ、おいっ」
 皇の制止を無視して塩田は、彼のももの上に跨る。彼の首に両腕を回し密着すれば、彼自身が形を持ち始めた。
「はあ……」
 言っても無駄だと思ったのか、皇は塩田の背中に腕を回す。
「塩田にはかなわないな」
 彼はそういって、塩田に口づけたのだった。


「塩田」
「なんだ?」
 密着した腹の辺りに皇の硬いものを感じながら、特に何をするでもなく彼に抱き着いていた塩田が、名前を呼ばれ顔を上げる。
「せっかくのジャグジーなのに、この体勢はあまり意味がないんじゃないか?」
 確かにジェットバスは身体に当たると気持ちがいい。
 けれども、塩田にとってはそんなことはどうでも良かった。
「マッサージ効果を得たいのか? 年寄め」
と塩田がちゅっと首筋に口づけると、
「しっ……失敬な!」
と皇がプンスカしている。

「そんなこと言って、良いとこ攻めてあんあん言わせてや……」
 彼は負けず嫌いなのか、そんなことを言いだした。だが、最後までいい終える前に口をつぐんでしまう。
「なんだよ、急に元気なくして」
と塩田。
「いや、自信がなくて」
 皇はため息をつくと、優しく塩田の背中を撫でる。
 
 皇は、すぐいきり立つ性格ではあるが、彼の自信は並々ならぬ努力の上に成り立っていた。元々自信があって強気ではない。苦手なことは自信がなく、それを隠すことはしない。
 彼が社内で多大な人気を誇っているのは、容姿が優れているからでもなければ、若くして副社長となったからでもなく、その性格にあるのだと塩田は気づいていた。

「いいんじゃね? 人間、一つや二つ苦手なものがあってもさ」
 塩田はぎゅっと彼にしがみつきながら。
「いや待て。エッチが下手って致命傷じゃ……?」
と困惑する皇に塩田は、くくくと笑いながらそのうなじにちゅっとキスを落としたのだった。
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