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2話『手探りで進む二人の初恋』
2・ムードは皆無なんですか?
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****♡Side・副社長(皇)
「早くこっちにおいで」
取っておいた部屋に着くと、廊下からすでに一面ガラス張りの夜景が広がっていた。皇は先に奥へ進むと、塩田に声をかける。彼は入り口で立ち尽くしていたが、皇が手を伸ばすとゆっくりと近寄って来た。
「綺麗だろ?」
暖色系の間接照明が部屋を優しく照らし、窓の向こうには光の海。
「なんだよ、夜景よりハグの方がいいのか?」
ぎゅっと抱き着かれ、彼の背中に腕を回す。彼は皇の肩に顔を埋めた。
──可愛い!
「ディナーはここで食べようか。二人でゆっくりと」
話を聞いているのか、いないのか。キスを強請る彼に口づけると、窓際のテーブルに彼をいざなう。顔には出さないが、皇は少し緊張していた。
フロントに連絡を入れ、ベッドルームに向かえばアンティークで豪奢な造りにため息が出る。
──最高の夜にしたいけれど、自分に自信がない。
やはり不安だ。
ベッドに腰かけると、彼が甘えたように皇の首に腕を回し、膝に乗り上げてきた。上着を脱いだ彼から伝わる体温に、理性が崩壊しそうになる。
「皇」
「うん?」
それでも暴走しそうな己を理性で押さえつけ、彼の瞳を覗き込む。
「好き」
彼の身体から香るボディソープの良い匂い。
「俺も好きだよ」
笑みを浮かべ想いに答えてやれば、彼が嬉しそうに笑う。
──ダメだ、襲いたい。
皇は塩田の背中に腕を滑らすと、首筋に口づける。
「ご飯は?」
背中を這う手に異変を感じたのか、塩田が不思議そうにこちらを見つめていた。
「あ、うん。食べるけど」
食事が運ばれてくるまでには少し時間がある。中途半端なこの時間をどうしたものかと皇は曖昧な笑みを浮かべた。正直、今すぐ襲ってしまいたい。
だが初めての夜なのだ。雰囲気は大切にしたいし、甘くとろける様な演出をしたいと思っていた。
「先に風呂に行こうか」
と提案すれば、彼が素直に頷く。
皇はベッドから降りると、彼の手を掴む。
──そういえば、一緒に入るの初めてだな。
塩田の裸……やばい、鼻血出そう。
「皇って着やせするんだな」
脱衣所で皇がシャツを脱ぎ捨てると、こちらを見ていた彼がそんなことを言う。皇は週末にはジムに行って鍛えている。今まで塩田の前で脱ぐことはなかったが、身体には自信があった。男らしく服を脱ぎ捨てる皇に対し、塩田は脱ぐのを躊躇っているようだ。
恥ずかしがるようなタイプではないので、少し意外に感じた。
「脱がないのか?」
と皇が問うと、
「俺、そんな良い身体してないよ?」
と彼。
食が細いわけではないが、さっぱりとした和食を好む彼は抱きしめた感じからも、華奢なことは気づいていた。皇の身体を見て自信を無くしたようだ。
「そんなこと、気にしなくていいよ」
皇は微笑んで、彼のシャツに手を伸ばす。皇はプチプチと三つほどボタンを外し、その手を止めた。そして鼻を抑える。
「どうかしたのか?」
と彼。
まるで絹のような滑らかな手触りに皇は欲情してしまい、
「鼻血出しそう」
と答えれば、怪訝な顔をされる。
そして、
「頻繫に鼻を抑えるのは、鼻血が出る呪いにでもかかっているのか?」
と言われてしまう。
「なんだ、その呪いは」
「こっちが聞きたい」
「あ、いや。塩田が俺の理性を崩壊させるんだ」
「は?」
”何言ってるんだ、一体”という顔をされ、”そりゃそうだ”と思いながら彼に口づけると、再び彼のシャツに手をかける。
皇が唇を離すと、
「早くご飯食べてエッチしたい」
と言われてしまう。
「塩田にはムードというものはないのか?」
皇が思わず笑いながらそう返すと、
「俺は欲求不満なんだ」
とムッとされるのだった。
──クソ可愛いな。
「早くこっちにおいで」
取っておいた部屋に着くと、廊下からすでに一面ガラス張りの夜景が広がっていた。皇は先に奥へ進むと、塩田に声をかける。彼は入り口で立ち尽くしていたが、皇が手を伸ばすとゆっくりと近寄って来た。
「綺麗だろ?」
暖色系の間接照明が部屋を優しく照らし、窓の向こうには光の海。
「なんだよ、夜景よりハグの方がいいのか?」
ぎゅっと抱き着かれ、彼の背中に腕を回す。彼は皇の肩に顔を埋めた。
──可愛い!
「ディナーはここで食べようか。二人でゆっくりと」
話を聞いているのか、いないのか。キスを強請る彼に口づけると、窓際のテーブルに彼をいざなう。顔には出さないが、皇は少し緊張していた。
フロントに連絡を入れ、ベッドルームに向かえばアンティークで豪奢な造りにため息が出る。
──最高の夜にしたいけれど、自分に自信がない。
やはり不安だ。
ベッドに腰かけると、彼が甘えたように皇の首に腕を回し、膝に乗り上げてきた。上着を脱いだ彼から伝わる体温に、理性が崩壊しそうになる。
「皇」
「うん?」
それでも暴走しそうな己を理性で押さえつけ、彼の瞳を覗き込む。
「好き」
彼の身体から香るボディソープの良い匂い。
「俺も好きだよ」
笑みを浮かべ想いに答えてやれば、彼が嬉しそうに笑う。
──ダメだ、襲いたい。
皇は塩田の背中に腕を滑らすと、首筋に口づける。
「ご飯は?」
背中を這う手に異変を感じたのか、塩田が不思議そうにこちらを見つめていた。
「あ、うん。食べるけど」
食事が運ばれてくるまでには少し時間がある。中途半端なこの時間をどうしたものかと皇は曖昧な笑みを浮かべた。正直、今すぐ襲ってしまいたい。
だが初めての夜なのだ。雰囲気は大切にしたいし、甘くとろける様な演出をしたいと思っていた。
「先に風呂に行こうか」
と提案すれば、彼が素直に頷く。
皇はベッドから降りると、彼の手を掴む。
──そういえば、一緒に入るの初めてだな。
塩田の裸……やばい、鼻血出そう。
「皇って着やせするんだな」
脱衣所で皇がシャツを脱ぎ捨てると、こちらを見ていた彼がそんなことを言う。皇は週末にはジムに行って鍛えている。今まで塩田の前で脱ぐことはなかったが、身体には自信があった。男らしく服を脱ぎ捨てる皇に対し、塩田は脱ぐのを躊躇っているようだ。
恥ずかしがるようなタイプではないので、少し意外に感じた。
「脱がないのか?」
と皇が問うと、
「俺、そんな良い身体してないよ?」
と彼。
食が細いわけではないが、さっぱりとした和食を好む彼は抱きしめた感じからも、華奢なことは気づいていた。皇の身体を見て自信を無くしたようだ。
「そんなこと、気にしなくていいよ」
皇は微笑んで、彼のシャツに手を伸ばす。皇はプチプチと三つほどボタンを外し、その手を止めた。そして鼻を抑える。
「どうかしたのか?」
と彼。
まるで絹のような滑らかな手触りに皇は欲情してしまい、
「鼻血出しそう」
と答えれば、怪訝な顔をされる。
そして、
「頻繫に鼻を抑えるのは、鼻血が出る呪いにでもかかっているのか?」
と言われてしまう。
「なんだ、その呪いは」
「こっちが聞きたい」
「あ、いや。塩田が俺の理性を崩壊させるんだ」
「は?」
”何言ってるんだ、一体”という顔をされ、”そりゃそうだ”と思いながら彼に口づけると、再び彼のシャツに手をかける。
皇が唇を離すと、
「早くご飯食べてエッチしたい」
と言われてしまう。
「塩田にはムードというものはないのか?」
皇が思わず笑いながらそう返すと、
「俺は欲求不満なんだ」
とムッとされるのだった。
──クソ可愛いな。
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