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1話『君の気持ちがわからない』
1・突然の別れ宣言に、皇困惑?!
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****♡Side・副社長(皇)
「別れたい」
「は?」
それは唐突だった。今まで、そんな素振りはどこにもなかったはずだ。どんなに忙しくても、なるべく会う時間を作っていたはずだし。
──いや。うっとおしかったのか?
「待て、塩田。俺なにかしたか?」
尊大な態度は社内でだけ。社長の指示でしていること。彼もそれは理解しているはずだ。そんな自分が嫌だったのだろうか?
「ごめん」
塩田は理由を述べなかった。
──ちょ……待てよ。
塩田はこちらを見ようともしない。一年必死で頑張ってきたはずだった。無口であまり感情を出さない彼を観察し、理解しようと努めた。それもこれも好きだったから。意思の疎通が足りなかったのだろうか?
血の気が引いていくのを感じた。本気だったから、毎日話しかけ思い切って告白した。それもダメもとで。
『塩田。俺とお付き合いしないか?』
休憩時間は、板井といることの多い彼。たまたま一人でいたとき、チャンスだと思い声をかけたのだ。塩田に想いを寄せていた人は他にもいた。負けたくなかった。
『いいよ』
あの時、彼は柔らかく笑ったのだ。自分に好意を抱いていると思いあがっても無理はないだろう。
「なあ、嫌なところがあるなら直すから。そんなこと言わないでくれよ」
すがるのなんて、カッコ悪いと思っていた。しかしほんとに欲しいものがあるなら、必死にならなきゃいけないことくらい知っている。見誤るような無能でないと自負している。
「皇が悪いわけじゃない」
塩田はそういうと、床に視線を落とす。どうしても理由が知りたかった。
「俺は別れたくない」
そういうと、彼は少し驚いた顔をする。
──なんでそんな顔をするんだよ。
俺の気持ちは通じてないのか?
「俺といると、楽しくない?」
確かに、休みの日に突然接待ゴルフに駆り出されることもある。普通の恋人同士といかないこともあるだろう。
「もっと時間作るから」
「そういうことじゃない。俺の問題だから」
塩田は頑なだった。
「俺のこと嫌になった? それとも、他に好きな人でも……」
──いやだ。塩田は誰にも渡さない。
自分の中をどす黒いものが駆け抜ける。大事にしてきたつもりだった。思わず彼の腕を掴むと、近くの仮眠室に連れ込み鍵をかける。
「皇?」
彼の初めての恋人は自分。性的なことを知らないから、今まで手を出さなかった。しかし誰かに奪われてしまうくらいなら。瞳を揺らしこちらを見ている彼を仮眠室のベッドに押し倒すと、そのネクタイに手をかける。
「絞殺でもする気なのか?」
「自分のものにならないなら殺すって? バカ、そんなことするかよ」
皇は彼に覆いかぶさると、その唇に口づけた。彼は拒むこともなく、ただ眼を閉じる。
「愛してるよ、塩田」
今から酷いことをしようとしている自分。塩田は何故か、皇の首に腕を絡めた。まるで、自分もというように。
「別れたい」
「は?」
それは唐突だった。今まで、そんな素振りはどこにもなかったはずだ。どんなに忙しくても、なるべく会う時間を作っていたはずだし。
──いや。うっとおしかったのか?
「待て、塩田。俺なにかしたか?」
尊大な態度は社内でだけ。社長の指示でしていること。彼もそれは理解しているはずだ。そんな自分が嫌だったのだろうか?
「ごめん」
塩田は理由を述べなかった。
──ちょ……待てよ。
塩田はこちらを見ようともしない。一年必死で頑張ってきたはずだった。無口であまり感情を出さない彼を観察し、理解しようと努めた。それもこれも好きだったから。意思の疎通が足りなかったのだろうか?
血の気が引いていくのを感じた。本気だったから、毎日話しかけ思い切って告白した。それもダメもとで。
『塩田。俺とお付き合いしないか?』
休憩時間は、板井といることの多い彼。たまたま一人でいたとき、チャンスだと思い声をかけたのだ。塩田に想いを寄せていた人は他にもいた。負けたくなかった。
『いいよ』
あの時、彼は柔らかく笑ったのだ。自分に好意を抱いていると思いあがっても無理はないだろう。
「なあ、嫌なところがあるなら直すから。そんなこと言わないでくれよ」
すがるのなんて、カッコ悪いと思っていた。しかしほんとに欲しいものがあるなら、必死にならなきゃいけないことくらい知っている。見誤るような無能でないと自負している。
「皇が悪いわけじゃない」
塩田はそういうと、床に視線を落とす。どうしても理由が知りたかった。
「俺は別れたくない」
そういうと、彼は少し驚いた顔をする。
──なんでそんな顔をするんだよ。
俺の気持ちは通じてないのか?
「俺といると、楽しくない?」
確かに、休みの日に突然接待ゴルフに駆り出されることもある。普通の恋人同士といかないこともあるだろう。
「もっと時間作るから」
「そういうことじゃない。俺の問題だから」
塩田は頑なだった。
「俺のこと嫌になった? それとも、他に好きな人でも……」
──いやだ。塩田は誰にも渡さない。
自分の中をどす黒いものが駆け抜ける。大事にしてきたつもりだった。思わず彼の腕を掴むと、近くの仮眠室に連れ込み鍵をかける。
「皇?」
彼の初めての恋人は自分。性的なことを知らないから、今まで手を出さなかった。しかし誰かに奪われてしまうくらいなら。瞳を揺らしこちらを見ている彼を仮眠室のベッドに押し倒すと、そのネクタイに手をかける。
「絞殺でもする気なのか?」
「自分のものにならないなら殺すって? バカ、そんなことするかよ」
皇は彼に覆いかぶさると、その唇に口づけた。彼は拒むこともなく、ただ眼を閉じる。
「愛してるよ、塩田」
今から酷いことをしようとしている自分。塩田は何故か、皇の首に腕を絡めた。まるで、自分もというように。
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