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1話『君の気持ちがわからない』
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****♡Side・副社長(皇)
若くして副社長となった皇 優一は何とも言えない気持ちで、新しく設立された”苦情係”の前にいた。
悪質クレーマー対策課、通称苦情係は新入社員三人と皇の営業部時代の先輩の四人で設立された部署である。
皇の先輩にあたる現在の苦情係の課長唯野 修二はこの課が設立される前、営業部から突然の人事によりいろんな課を回されることとなった。
どんな理由があったのかはわからない。
しかし皇はその人事に何か良くないものを感じていた。
苦情係ができ、その人事の意味をなんとなく把握はしたが、会社に慣れていない新入社員の三人が部下だというのに、彼はしょっちゅう社長に呼ばれる始末。見かねた皇はその場に同席した。
──あれは、パワハラだ。
彼が何故社長からパワハラを受けているのかわからない。だが、何か恨みを買っているように感じていた。
苦情係は商品部の奥に作られている。その為、商品部を通らないと入ることができない。
皇が商品部に併設されている商品部開発部に用があり廊下を歩いていると、商品部から出ていく唯野の姿を見かけた。
また社長に呼ばれたのだろうか?
つまり今は新入社員の三人で苦情係を回しているということになる。気になった皇は、商品部のドアを開け中に入っていった。
「副社長、どうされたのですか?」
商品部に足を踏み入れると商品部の部長に声をかけられる。でっぷりとした腹をし、愛想のよいバーコード禿の男性だ。彼はしょっちゅう部下を食事に連れていくことから、彼らに慕われていた。
「ちょっと苦情係の様子を見に」
「そうですか。今、苦情係はてんてこ舞いですよ」
彼にそう言われ、複雑な心境になりながら奥に歩いていく。
苦情係の入り口に着くと、最初に気づいたのは新入社員の板井 小指であった。
「副社長?」
彼は自分のことを知っているらしい。板井はがっちり体形の体育会系に見える、真面目で仕事の良くできる部下だと唯野から聞いていた。
そして、
「何か用か?」
とぞんざいな反応をする男。
彼はわが社の名物社員の塩田 以往である。ストレートの黒髪に、白いワイシャツに黒のスラックスというまるで学生のような見た目の新入社員。彼は上司だろうが客だろうが忖度なしの塩対応だと聞いていた。
「課長なら不在ですよ」
と三人目の新入社員。
彼の名は電車 紀夫。童顔金髪で明るい性格をしており唯野曰く、ムードメーカーになるだろうと。
この課は四人しかいないがヘルプが入ることを想定してか、デスクが六つ用意されている。
入り口に一番近い場所に板井。その正面に電車。板井の隣に唯野の席があり、その正面であり電車の隣が塩田の席らしい。
しかしどこに座るのも自由。たった四人しかいないためだ。
皇は無言で塩田の隣の席に腰かけると、ノートパソコンを開いた。
「何しているんだ?」
とこちらを覗き込む彼。
「手伝ってやる。データ寄こせ」
「は?」
塩田は酷く驚いた顔をした。それを見ていた板井は埴輪顔だ。恐らく板井は塩田の口の利き方に唖然としているのだろう。
────これが苦情係と皇のファーストコンタクトであった。
若くして副社長となった皇 優一は何とも言えない気持ちで、新しく設立された”苦情係”の前にいた。
悪質クレーマー対策課、通称苦情係は新入社員三人と皇の営業部時代の先輩の四人で設立された部署である。
皇の先輩にあたる現在の苦情係の課長唯野 修二はこの課が設立される前、営業部から突然の人事によりいろんな課を回されることとなった。
どんな理由があったのかはわからない。
しかし皇はその人事に何か良くないものを感じていた。
苦情係ができ、その人事の意味をなんとなく把握はしたが、会社に慣れていない新入社員の三人が部下だというのに、彼はしょっちゅう社長に呼ばれる始末。見かねた皇はその場に同席した。
──あれは、パワハラだ。
彼が何故社長からパワハラを受けているのかわからない。だが、何か恨みを買っているように感じていた。
苦情係は商品部の奥に作られている。その為、商品部を通らないと入ることができない。
皇が商品部に併設されている商品部開発部に用があり廊下を歩いていると、商品部から出ていく唯野の姿を見かけた。
また社長に呼ばれたのだろうか?
つまり今は新入社員の三人で苦情係を回しているということになる。気になった皇は、商品部のドアを開け中に入っていった。
「副社長、どうされたのですか?」
商品部に足を踏み入れると商品部の部長に声をかけられる。でっぷりとした腹をし、愛想のよいバーコード禿の男性だ。彼はしょっちゅう部下を食事に連れていくことから、彼らに慕われていた。
「ちょっと苦情係の様子を見に」
「そうですか。今、苦情係はてんてこ舞いですよ」
彼にそう言われ、複雑な心境になりながら奥に歩いていく。
苦情係の入り口に着くと、最初に気づいたのは新入社員の板井 小指であった。
「副社長?」
彼は自分のことを知っているらしい。板井はがっちり体形の体育会系に見える、真面目で仕事の良くできる部下だと唯野から聞いていた。
そして、
「何か用か?」
とぞんざいな反応をする男。
彼はわが社の名物社員の塩田 以往である。ストレートの黒髪に、白いワイシャツに黒のスラックスというまるで学生のような見た目の新入社員。彼は上司だろうが客だろうが忖度なしの塩対応だと聞いていた。
「課長なら不在ですよ」
と三人目の新入社員。
彼の名は電車 紀夫。童顔金髪で明るい性格をしており唯野曰く、ムードメーカーになるだろうと。
この課は四人しかいないがヘルプが入ることを想定してか、デスクが六つ用意されている。
入り口に一番近い場所に板井。その正面に電車。板井の隣に唯野の席があり、その正面であり電車の隣が塩田の席らしい。
しかしどこに座るのも自由。たった四人しかいないためだ。
皇は無言で塩田の隣の席に腰かけると、ノートパソコンを開いた。
「何しているんだ?」
とこちらを覗き込む彼。
「手伝ってやる。データ寄こせ」
「は?」
塩田は酷く驚いた顔をした。それを見ていた板井は埴輪顔だ。恐らく板井は塩田の口の利き方に唖然としているのだろう。
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