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━━━━4章:悲鳴
1「クヌギ」
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「おいで」
駅からタクシーで到着したクヌギ旅館は老舗らしくとても風流に見えた。黒塗りの木、赤いのれん。シマトネリコ。黒、赤、緑。とでも鮮やかな色合いで二人を迎えてくれる。タクシーから降りた彩都は、聖に差し出された手を掴む。
「さあ、お姫様。こちらへ」
「聖くんは、王子様?」
二人はクスクスと笑いあい、旅館の中へ足を踏み入れると若女将をはじめとする従業員一同が出迎えてくれる。
通された部屋はとても落ち着きのある素敵な和室である。とても高校生が来るような敷居の低い場所ではなかった。
「たかそーっ」
彩都は部屋を見渡して興奮すると、珍しく聖がどや顔をしつつ
「セレブですから」
と、自分の境遇を自慢した。
「知ってたーッ」
そう言って彩都が聖に抱きつくと「あははッ」と彼は笑った。彩都はじっと聖を見上げニコッと微笑む。
こんな風に彼が笑うのを彩都は久々に見た。
そして、違和感。
「ほら、見て見なよ」
外に面した大きな障子をあけ、窓をあけると円の形をしたプライベートの露天風呂。
「夜は、月が見えそうだ」
いつもより饒舌な聖。
何かあったんだろうか?
彩都は聖を見上げながらそんなことを思った。
「まずは、昼ご飯を食べに行こうか」
「うん」
荷物を端に置くと聖は財布とスマホ、部屋の鍵だけを手に取った。
「タクシーの中で調べたんだけど、美味しい鰻屋があるんだって。彩都、鰻は好きか?」
「うんッ。好き」
聖に両腕を絡め答える。そこで、いつもなら言わないことを聖は言った。
「俺よりも?」
どうしたの?と聞きたいのを我慢し
「聖くんが一番だよッ」
と、言うと聖は何故かホッとした表情をした。
なんか、変。
どうしたのかな。
彩都はだんだん聖のことが心配になってきたのだった。
駅からタクシーで到着したクヌギ旅館は老舗らしくとても風流に見えた。黒塗りの木、赤いのれん。シマトネリコ。黒、赤、緑。とでも鮮やかな色合いで二人を迎えてくれる。タクシーから降りた彩都は、聖に差し出された手を掴む。
「さあ、お姫様。こちらへ」
「聖くんは、王子様?」
二人はクスクスと笑いあい、旅館の中へ足を踏み入れると若女将をはじめとする従業員一同が出迎えてくれる。
通された部屋はとても落ち着きのある素敵な和室である。とても高校生が来るような敷居の低い場所ではなかった。
「たかそーっ」
彩都は部屋を見渡して興奮すると、珍しく聖がどや顔をしつつ
「セレブですから」
と、自分の境遇を自慢した。
「知ってたーッ」
そう言って彩都が聖に抱きつくと「あははッ」と彼は笑った。彩都はじっと聖を見上げニコッと微笑む。
こんな風に彼が笑うのを彩都は久々に見た。
そして、違和感。
「ほら、見て見なよ」
外に面した大きな障子をあけ、窓をあけると円の形をしたプライベートの露天風呂。
「夜は、月が見えそうだ」
いつもより饒舌な聖。
何かあったんだろうか?
彩都は聖を見上げながらそんなことを思った。
「まずは、昼ご飯を食べに行こうか」
「うん」
荷物を端に置くと聖は財布とスマホ、部屋の鍵だけを手に取った。
「タクシーの中で調べたんだけど、美味しい鰻屋があるんだって。彩都、鰻は好きか?」
「うんッ。好き」
聖に両腕を絡め答える。そこで、いつもなら言わないことを聖は言った。
「俺よりも?」
どうしたの?と聞きたいのを我慢し
「聖くんが一番だよッ」
と、言うと聖は何故かホッとした表情をした。
なんか、変。
どうしたのかな。
彩都はだんだん聖のことが心配になってきたのだった。
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