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━━━━━1章:彼
1「大好きな彼」
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大好きな彼、大里 聖。
彼とはセフレ歴3年。
セフレと言うと性欲発散の為だけに会うイメージがあるけれど、彼は違った。どちらかと言うと、愛人みたいなイメージ。遊びには連れていってくれるし、ご飯だって連れていってくれる。そもそも、彼から性的なことを求めてくることは稀だった。
彼とセフレになってから初めての僕の誕生日に、
『黒川、何か欲しいものある?』
と聞かれた。
誕生日を覚えていてくれたことがまず嬉しかった。彼はマメで優しい。セレブで末っ子なため、自由奔放なところはあるけれど。
『なんでもいい?』
『俺に手に入れられるものなら』
なんでも買ってやると、言うように。
『あのね』
コソッと、耳元で囁くと彼は驚いたのち
『お前は可愛いなぁ、彩都』
と笑って抱き締めてくれた。
“下の名前で呼んで欲しいなッ”
彼は僕の望みを叶えてくれたのだ。
そのあと、お祝いをしてくれて。
二人きりの誕生日。
周りからは、”彼のお気に入りのセフレ”という見られかたをしていたし、自分でもそれを感じてる。ずっと、そういう日々が続いてゆくと思っていた。
「聖くんッ」
オーディオの置いてある長いサイドボードの上に、彼はだらっと腰かけて音楽を流している。名前を呼べば、おいでと言うように彩都に向かって両手を拡げた。彼は歌が上手い。いつも洋楽ばかりだけれど。
「なんて曲なの?」
聖の膝の上にお膝抱っこされながら、歌を口ずさむ彼を見上げる。彼は長身でイケメンだ、背は180以上ある。金髪に近い色に染めているけれど、髪は艶々で。
「sugar」
彼は曲名を告げると、続きを口ずさむ。開いたシャツの首もとには、シルバーアクセサリー。暖かい彼の温もりが心地よくて、彼の胸に頬を寄せる。どんな好きになったって、彼は振り向いてはくれない。きっと愛しいあの子を思って、ただ口ずさむのだ。
恋人になれたなら、どんなに幸せだろう?
セフレにさえこんなに甘く優しい。
せめて冷たくしてくれたなら、離れられるのに。
「彩都、眠くなったの?」
「ふふッ」
「いいよ、おやすみ。側にいてあげるよ」
頬をくすぐるように撫でると、彼は微笑んだ。
ねえ?振り向いてくれなくてもいい。
ずっと、側にいたい。
「起きたら、飯行こうな」
「うんッ」
夜は大好きな彼に、抱いてもらおう。
そんなことを思いながら彩都は目を閉じた。
**
「何食べたい?」
聖に問われ、彩都は聖を見上げた。
「ん?」
聖くんって、カッコいいなぁ。
キスしてくれないかな?
軽く両手を握ると胸に置く。
聖の親指の腹が唇に触れ、彩都はドキリとする。
「可愛い」
あ...。
心を見透かされてでもいるのだろうか?
聖の顔が近づいてくるので、彩都は目を閉じた。
ちゅッ...
軽いキス。
何故だろう?たったそれだけなのに、奥まで犯されているような気分になる。
「彩都」
もっと欲しくて聖の首に腕を絡めると、
「ダメだよ」
と拒否されてしまった。
キスしたい。キスしたい。
なんでダメなの?
物欲しそうに聖を見つめていると、彼は困った顔をする。
「彩都のことは、後で食べてあげるから。夕飯行こうよ」
彩都は恥ずかしさに真っ赤になった。
恥ずかしい!
頭の中、聖くんとエッチすることでいっぱいになってる。
「えっと、パスタ食べたいッ」
「わかった。行こうか」
聖は、彩都を膝から下ろすと手を掴んだ。彩都は、聖の腕に両腕を絡めた。彩都にとって、聖との時間は夢のような時間であった。外に出ると「寒くないか」と問われる。
「平気ッ」
聖の好きな人は、めちゃくちゃ可愛い。クラスが違うからそれ以外のことは、あまり良く知らない。聖が言うには、塩対応で、クールらしい。冷たいのとはちょっと違うようだ。
聖に好かれたくて
「僕、Sになってあげようか?」
って言ったら、断られた。
しょんぼりしていたら、聖はぎゅっと抱き締めてくれた、そして。
「彩都はそのままでいいよ」
と、キスをくれた。
恋人でもないのに恋人みたいに甘くて優しい。でもきっと、聖くんは誰にでも優しい。そう思うと、泣きたくなるんだ。僕だけじゃない。僕は、聖くんのセフレの一人に過ぎない。振り向いてくれなくてもいいなんて、ただの強がり。
“ねえ、こっち向いてよ”
彩都は、切ない気持ちで聖を見上げた。
**
「ほんと、彩都は安上がりだなぁ」
そう言って、聖はサラダをつついていた。
美味しいレストランに連れていってくれると言ったのに、彩都は近くのファミレスを選んだからだ。
嫌だったのかな?
しょんぼりしていると、聖の指が首筋を撫でた。
「なんだ?旨くないのか?」
「違う。聖くん..嫌だったのかなって思って」
「気にしなくていいよ」
「だって..」
「ん?」
「早く帰って、聖くんとベタベタしたかったから..」
小さな声でそういうと、彼は彩都の手を取り指先に口づけた。
「可愛いお姫様だな」
「うぅっ」
「早く食べちゃえよ」
聖にじぃっと見つめられながら一所懸命口をモグモグさせる。
「今日、泊まっていけよな」
聖からの甘いお誘いに心が跳ねた。
**
シャワーは別々。
いつも、一緒に入ろうって言われるけれど恥ずかしいし、念入りに洗いたいから。
「彩都」
いつまでも入っていると催促される。
「まだか?」
「待って」
「充分待った」
シャワールームのドアの前で待たれていると、出るに出られない。
「なんでそこ立ってるの?」
「早く出てこいよ、拭いてやるから」
「大丈夫!」
「いいから出てこい」
「やだぁッ」
だって、裸見られちゃう。
そりゃ、エッチの時は見られるけど。
「彩都、俺のこと好きじゃないの?」
「ッ」
ズルい、ズルいッ。
そんなこと言われたら、出るしかないじゃんか。
「早く出ておいで」
「うぅ」
シャワールームのドアをそっと開ける。
「タオルちょおだい」
「なんだよ、拭いてやるって」
「だ、だ、だって見えちゃうし」
「ついてるもん一緒なのに、なんでそんな恥ずかしがるかな」
聖は、仕方ないなと言うようにタオルをくれた。
「早く向こういこう」
タオルを身体に巻くと、シャワールームからでる。そこでまた、聖が笑う。
「なんで胸も隠すわけ?」
「恥ずかしいからッ」
「ひんむきたくなるよな」
「!」
聖がこちらに腕を伸ばすので、ビクッと肩を揺らした。
「処女みたいなこと、いいやがって」
ふわりと抱き上げられリビングに向かう。
でも、知ってる。
聖はビッチは嫌いだ。
そして、恥じらいのある子に興奮することを。
「早く食べさせろよ、彩都」
「聖くん」
「ん?」
「大好き」
リビングを抜け、ベッドルームへ。
「彩都は可愛いなぁ」
チュッと口づけられて、心は期待でいっぱいになった。
彼とはセフレ歴3年。
セフレと言うと性欲発散の為だけに会うイメージがあるけれど、彼は違った。どちらかと言うと、愛人みたいなイメージ。遊びには連れていってくれるし、ご飯だって連れていってくれる。そもそも、彼から性的なことを求めてくることは稀だった。
彼とセフレになってから初めての僕の誕生日に、
『黒川、何か欲しいものある?』
と聞かれた。
誕生日を覚えていてくれたことがまず嬉しかった。彼はマメで優しい。セレブで末っ子なため、自由奔放なところはあるけれど。
『なんでもいい?』
『俺に手に入れられるものなら』
なんでも買ってやると、言うように。
『あのね』
コソッと、耳元で囁くと彼は驚いたのち
『お前は可愛いなぁ、彩都』
と笑って抱き締めてくれた。
“下の名前で呼んで欲しいなッ”
彼は僕の望みを叶えてくれたのだ。
そのあと、お祝いをしてくれて。
二人きりの誕生日。
周りからは、”彼のお気に入りのセフレ”という見られかたをしていたし、自分でもそれを感じてる。ずっと、そういう日々が続いてゆくと思っていた。
「聖くんッ」
オーディオの置いてある長いサイドボードの上に、彼はだらっと腰かけて音楽を流している。名前を呼べば、おいでと言うように彩都に向かって両手を拡げた。彼は歌が上手い。いつも洋楽ばかりだけれど。
「なんて曲なの?」
聖の膝の上にお膝抱っこされながら、歌を口ずさむ彼を見上げる。彼は長身でイケメンだ、背は180以上ある。金髪に近い色に染めているけれど、髪は艶々で。
「sugar」
彼は曲名を告げると、続きを口ずさむ。開いたシャツの首もとには、シルバーアクセサリー。暖かい彼の温もりが心地よくて、彼の胸に頬を寄せる。どんな好きになったって、彼は振り向いてはくれない。きっと愛しいあの子を思って、ただ口ずさむのだ。
恋人になれたなら、どんなに幸せだろう?
セフレにさえこんなに甘く優しい。
せめて冷たくしてくれたなら、離れられるのに。
「彩都、眠くなったの?」
「ふふッ」
「いいよ、おやすみ。側にいてあげるよ」
頬をくすぐるように撫でると、彼は微笑んだ。
ねえ?振り向いてくれなくてもいい。
ずっと、側にいたい。
「起きたら、飯行こうな」
「うんッ」
夜は大好きな彼に、抱いてもらおう。
そんなことを思いながら彩都は目を閉じた。
**
「何食べたい?」
聖に問われ、彩都は聖を見上げた。
「ん?」
聖くんって、カッコいいなぁ。
キスしてくれないかな?
軽く両手を握ると胸に置く。
聖の親指の腹が唇に触れ、彩都はドキリとする。
「可愛い」
あ...。
心を見透かされてでもいるのだろうか?
聖の顔が近づいてくるので、彩都は目を閉じた。
ちゅッ...
軽いキス。
何故だろう?たったそれだけなのに、奥まで犯されているような気分になる。
「彩都」
もっと欲しくて聖の首に腕を絡めると、
「ダメだよ」
と拒否されてしまった。
キスしたい。キスしたい。
なんでダメなの?
物欲しそうに聖を見つめていると、彼は困った顔をする。
「彩都のことは、後で食べてあげるから。夕飯行こうよ」
彩都は恥ずかしさに真っ赤になった。
恥ずかしい!
頭の中、聖くんとエッチすることでいっぱいになってる。
「えっと、パスタ食べたいッ」
「わかった。行こうか」
聖は、彩都を膝から下ろすと手を掴んだ。彩都は、聖の腕に両腕を絡めた。彩都にとって、聖との時間は夢のような時間であった。外に出ると「寒くないか」と問われる。
「平気ッ」
聖の好きな人は、めちゃくちゃ可愛い。クラスが違うからそれ以外のことは、あまり良く知らない。聖が言うには、塩対応で、クールらしい。冷たいのとはちょっと違うようだ。
聖に好かれたくて
「僕、Sになってあげようか?」
って言ったら、断られた。
しょんぼりしていたら、聖はぎゅっと抱き締めてくれた、そして。
「彩都はそのままでいいよ」
と、キスをくれた。
恋人でもないのに恋人みたいに甘くて優しい。でもきっと、聖くんは誰にでも優しい。そう思うと、泣きたくなるんだ。僕だけじゃない。僕は、聖くんのセフレの一人に過ぎない。振り向いてくれなくてもいいなんて、ただの強がり。
“ねえ、こっち向いてよ”
彩都は、切ない気持ちで聖を見上げた。
**
「ほんと、彩都は安上がりだなぁ」
そう言って、聖はサラダをつついていた。
美味しいレストランに連れていってくれると言ったのに、彩都は近くのファミレスを選んだからだ。
嫌だったのかな?
しょんぼりしていると、聖の指が首筋を撫でた。
「なんだ?旨くないのか?」
「違う。聖くん..嫌だったのかなって思って」
「気にしなくていいよ」
「だって..」
「ん?」
「早く帰って、聖くんとベタベタしたかったから..」
小さな声でそういうと、彼は彩都の手を取り指先に口づけた。
「可愛いお姫様だな」
「うぅっ」
「早く食べちゃえよ」
聖にじぃっと見つめられながら一所懸命口をモグモグさせる。
「今日、泊まっていけよな」
聖からの甘いお誘いに心が跳ねた。
**
シャワーは別々。
いつも、一緒に入ろうって言われるけれど恥ずかしいし、念入りに洗いたいから。
「彩都」
いつまでも入っていると催促される。
「まだか?」
「待って」
「充分待った」
シャワールームのドアの前で待たれていると、出るに出られない。
「なんでそこ立ってるの?」
「早く出てこいよ、拭いてやるから」
「大丈夫!」
「いいから出てこい」
「やだぁッ」
だって、裸見られちゃう。
そりゃ、エッチの時は見られるけど。
「彩都、俺のこと好きじゃないの?」
「ッ」
ズルい、ズルいッ。
そんなこと言われたら、出るしかないじゃんか。
「早く出ておいで」
「うぅ」
シャワールームのドアをそっと開ける。
「タオルちょおだい」
「なんだよ、拭いてやるって」
「だ、だ、だって見えちゃうし」
「ついてるもん一緒なのに、なんでそんな恥ずかしがるかな」
聖は、仕方ないなと言うようにタオルをくれた。
「早く向こういこう」
タオルを身体に巻くと、シャワールームからでる。そこでまた、聖が笑う。
「なんで胸も隠すわけ?」
「恥ずかしいからッ」
「ひんむきたくなるよな」
「!」
聖がこちらに腕を伸ばすので、ビクッと肩を揺らした。
「処女みたいなこと、いいやがって」
ふわりと抱き上げられリビングに向かう。
でも、知ってる。
聖はビッチは嫌いだ。
そして、恥じらいのある子に興奮することを。
「早く食べさせろよ、彩都」
「聖くん」
「ん?」
「大好き」
リビングを抜け、ベッドルームへ。
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