R18【同性恋愛】究極純愛♡僕日if 2*First love『狂気なような愛で君を』

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1──勘違いとすれ違い

♡4『仲良くなりたい』

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 ****side:咲夜

 彼は中学の時から高校一年まで彼女がいて、六月のあの日”酷いフラれかた”をしたと仲の良いクラスメイトが言っていたことを思い出す。
 だから、キスくらい慣れているのかと思っていた。
 彼は腕を唇にあて、真っ赤な顔をして立ち尽くしている。仕方ないので話題を変えてみた。
「久隆くんって、ソロなの?」
 ふと、辺りを見渡し訪ねた。連れは居ないようだ。

「呼び捨てでいいよ。ソロっつか、ぼっちかな」
 言って苦笑い。
「組みたいとか思ったりは? 俺と組まない?」
「へ?!」
 すっとんきょうな声をあげる。
「嬉しいけど、でも、俺っ」
「うん?」
「咲夜ってすごいユーザーだってなんかクラスメイトが言ってたの聞いたんだけど?」
「何が?」
「何がって……」
 久隆が困ったという顔をしていて。
 押したらいけそうな気がした。
「一緒に遊ぼう?」
 何故か一瞬、久隆がすごく嬉しそうな顔をしたのに次の瞬間には悲しそうな表情。
「でも、俺……弱いしど下手なんだけど?」
「気にしないよ、苦手なやつなら教えてあげるし」

 咲夜はまだ知らなかった、彼が自分に会うためにこのゲームを始めたことを。それが原因ですでに飛んでもないことに巻き込まれていたことを。
 このとき、彼が一所懸命虚勢を張っていただけなことを。
「久隆と仲良くなりたい」
「え?」
 ぽろりと溢れた本音に驚いてこちらを見上げる彼。特別なことを言ったわけではないのにと逆に驚く。
「俺と?」
「そうだよ」

 もっと早く彼に声をかけていたなら、あんなことにはならなかったのに。彼の想いを独り占めできたのに。
 そして、誰も傷つかずに済んだのに……。

 “君を俺のものにしたい…”
 見ていただけの彼。触れてしまったら、欲望は頭をもたげる。
 惹かれ合っていた二人であったのに、すでに動き出してしまっていた歯車が、二人を”狂気と言う名の愛”に導くことになるなんて誰が想像していただろうか。

 それほどまでに久隆は咲夜を虜にしていくのだった。

   ****

 せっかく話す機会を得たにも関わらず、学校に行けばまた同じ。
 咲夜は勇気がなくて久隆に話しかけることが出来ないでいた。
「どうかした? 元気なくね?」
 傍にいたクラスメイトに話しかけられ曖昧な笑みを浮かべる。何となしに視界に入れた久隆はなんだか寂しそうで。

 ──俺、ヘタレだよな。

 自分にガッカリしていると久隆が教室を出て行くのが見えた。いつも彼に張り付いている幼馴染みの大里は他の友人と話をしている。チャンスだと思った。
「おい、霧島?」
 クラスメイトが話しかけてくるのを聴こえないフリをして彼を追う。あそこは空き教室だ。咲夜は慌てて追いつくと空き教室の前を通り過ぎようとした彼の腕を掴み、そこへ連れ込んだ。彼の背をドアに押し付けじっと見つめると、久隆は驚いていたが次第に赤くなる。その様子があまりにも純情で愛しさが増した。

「咲夜……どうしたの?」
 上目遣いでおずおずと問う彼はゲーム内での堂々とした様子とはまったく違っていて、とても可愛らしくきゅんとした。
「可愛い」
「うん?」
 立場逆転とはこのことだろうか? などとぼんやり思う。
「話しかけて良いって言ったよね? 久隆は」
「うん」
 彼が好きだ。
 もちろん今までも勝手に想いを寄せていたけれど、はっきり自覚した。
 彼と恋人になりたい。久隆を自分のものにしたい。

「好きだよ」
「え?」
「久隆が好きだ」
 ゲーム内とは違うリアルな囁き。彼はドアを背に壁ドン状態。逃げ場なんてない。驚いていた彼が真っ赤になる。どうしてそんな反応をするのか、分からなかった。
「キスしたい」
 彼の顎を掴むと同意を待たずにその唇を奪った。ファーストキス。
「んんッ」
 深く口づけを交わしたかったが舌を噛まれるかもしれない。そう思った咲夜はそっと離れた。

「こんな……ことして……」
「初めてじゃないだろ?」
 久隆は真っ赤になって腕で口元を覆っている。
 彼女がいたわけだからと軽く考えていたら、
「初めてだよッ」
 と涙目で怒られる。
「嘘!?」
「ホント」
 彼への執着はこうして始まってゆくのだった。

   ****

「連絡先、教えて?」
「え?」
 久隆は一つ一つにとても驚く。その理由が分からなかった。
「ゲームや学校以外で久隆に逢いたい」
 久隆は困った表情をして咲夜を見上げる。
「何?」
「咲夜って誰にでもそうなの?」
 じっと見つめる瞳は何かを疑っていた。

「そうってどういう意味?」
「軽いっていうか……」
 ああ、なるほど。と思った。どうやら自分は誰にでも軽くキスを迫って連絡先を聞くようなやつだと疑われているわけだ。つまり、チャラいと。
「久隆にだけだよ」
「ほんと?」
 上目遣いは反則だ。可愛くてたまらない。
「一年の時からずっと、久隆を見てたよ。チャンスをモノにしたいと思うのは普通でしょ?」
 自分でも信じられないくらい饒舌だった。
「はい、これ。見て良いよ」
 咲夜は証拠だというように自分のスマホを渡す。
「電話帳でもメッセでもSNSでも、好きなだけ見て良いよ」

 久隆は渡されたスマホと咲夜を見比べ、電話帳を開くと何かを打ち込んで突っ返してきた。
「?」
「連絡先入れたから」
「連絡して良いってこと?」
「うん」
 咲夜は久隆の返事に心の中でガッツポーズを決める。
「毎晩電話しちゃうかも」
「咲夜の声、好きだよ」
 一所懸命言葉を紡ぐ彼に、咲夜はドキドキした。もしかしたら恋人になれるかもしれないと期待をしてしまう。

「ねえ、咲夜はどうして腕章つけないの?」
 咲夜は生徒会副会長でありながら腕章をつけていなかった。
「目立つから」
「その眼鏡、伊達だよね?」
「賢く見えるから」
「なんでそんなことするの?」
 まるで赤頭きんちゃんのように問う久隆をじっと見つめる。そして耳元でそっと囁く。
「君に好かれたいからだよ……」
 と。
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