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2──解かれていく真実
♡2『AGで出来た友人』
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****♡Side・久隆
───はあ……。
絶対、咲夜を誤解させてる。
一体どうしたら……。
久隆は憂鬱になっていた。
一つ良いことがあったと言えば、教室でも咲夜と会話ができるようになったことくらいだ。
「いつの間に、そんなに仲良くなったんだ?」
と、隣の席で幼馴染みの【大里聖】に怪訝そうに尋ねられドキリとする。
相変わらず彼の周りには取り巻きがいっぱいだ。
「AGで仲良くなったんだ」
と久隆が答えると、
「【A world with utopia underground】、な」
と良い発音で、正式名称を言ってのける。
久隆は『そんな正式名称いちいち言うのは、大里くらいだよ』と肩を竦める。
しかしそんな風に正式名称を言える彼はAGをやってはいない。色んな習い事をし、ピアノは弾けるわ、歌はうまいわ、センスはいいわ、長身でイケメンで成績優秀と、非の打ちどころがなさそうに見えるが、ゲームは破壊的に下手だった。
久隆は某無双するゲームで、彼のせいで曹操様がやられてしまい、抗議したことを思い出す。
『ちょっと、なんでそんなにド下手くそなの⁈ 曹操さま死んじゃうじゃん!』
『俺はこういうのは苦手なんだよ。アウトドア派だしな』
と、彼。
『何が、アウトドアだよ、ビリヤードもダーツもインドアじゃん』
『家の外だろ?』
『むう! 屁理屈』
ちょっと大人げなかったとは思うが文句を言いまくったことが記憶に新しい。
「これからカラオケ行くけど、久隆も行く?」
彼の歌声は好きだが、久隆は破壊的音痴であった。
「アウトドア派なんでしょ? キャンプにでも行ったら」
と、久隆は八つ当たりをする。
「こんな時間から?」
真面目に腕時計を見つめ、眉を寄せる大里。
「夕方からだって、行けるでしょ」
「帰るの、何時だよ」
「良いじゃない、泊れば」
彼は久隆の不機嫌な理由を知らない。いや、不機嫌だなんてことすら気づいていないかもしれない。久隆はいつでも、彼には塩対応だから。
「明日、キャンプ場から登校しろって? 偉いハードだな」
まともに相手をする彼に、取り巻き達が笑い出す。そこで初めて冗談だという事に気づいたらしい。彼は両手を拡げ、大げさに肩を竦めるとヤレヤレといってカバンを掴むと立ち上がった。
「んじゃ、またな。久隆」
久隆は気づかなかったが、咲夜が傍まで来ていたようだ。
「久隆、帰ろ」
「咲夜」
呼ばれて初めて気づいた久隆は頬を染めた。花のように綺麗な咲夜が、久隆だけをその瞳に映し微笑む。頷き立ち上がろうとしたところで、にわかに窓際が騒がしくなる。どうやらまだ教室に残っている女子たちが、正門辺りを指して騒いでいるようだ。
──事件かな?
大里以外で、キャーキャー言われる人なんて居たっけ?
久隆が窓際から咲夜に視線を戻すと、彼もどうやら騒ぎが気になるらしく窓の方を見つめている。
「なんだろうね?」
と久隆が口すると、
「行ってみる?」
と、咲夜。
二人はまさか、自分たちに関係ある人物が騒ぎの中心だとは思ってもいなかった。窓際まで咲夜と共に近寄っていくと、同じK学園ではあるが系列の別学区の生徒が正門に立っているのが見える。
顔までは確認できないが、騒がれている意味は直ぐに分かった。どうやら近くにいた生徒がその生徒の写真を、久隆のクラスの女子に送ってきたからのようである。
「ごめん、見せてくれない?」
と、咲夜が写真が送られてきた女子生徒のスマホを覗き込む。
「ねえ、久隆。これって……」
「セトだ」
それは、二人がAGで出逢った、一つ年上のゲーム仲間【瀬戸遥】の写真である。
「相変わらず、人形みたいな人だな」
咲夜の言葉に久隆は思わず笑ってしまったのだった。
───はあ……。
絶対、咲夜を誤解させてる。
一体どうしたら……。
久隆は憂鬱になっていた。
一つ良いことがあったと言えば、教室でも咲夜と会話ができるようになったことくらいだ。
「いつの間に、そんなに仲良くなったんだ?」
と、隣の席で幼馴染みの【大里聖】に怪訝そうに尋ねられドキリとする。
相変わらず彼の周りには取り巻きがいっぱいだ。
「AGで仲良くなったんだ」
と久隆が答えると、
「【A world with utopia underground】、な」
と良い発音で、正式名称を言ってのける。
久隆は『そんな正式名称いちいち言うのは、大里くらいだよ』と肩を竦める。
しかしそんな風に正式名称を言える彼はAGをやってはいない。色んな習い事をし、ピアノは弾けるわ、歌はうまいわ、センスはいいわ、長身でイケメンで成績優秀と、非の打ちどころがなさそうに見えるが、ゲームは破壊的に下手だった。
久隆は某無双するゲームで、彼のせいで曹操様がやられてしまい、抗議したことを思い出す。
『ちょっと、なんでそんなにド下手くそなの⁈ 曹操さま死んじゃうじゃん!』
『俺はこういうのは苦手なんだよ。アウトドア派だしな』
と、彼。
『何が、アウトドアだよ、ビリヤードもダーツもインドアじゃん』
『家の外だろ?』
『むう! 屁理屈』
ちょっと大人げなかったとは思うが文句を言いまくったことが記憶に新しい。
「これからカラオケ行くけど、久隆も行く?」
彼の歌声は好きだが、久隆は破壊的音痴であった。
「アウトドア派なんでしょ? キャンプにでも行ったら」
と、久隆は八つ当たりをする。
「こんな時間から?」
真面目に腕時計を見つめ、眉を寄せる大里。
「夕方からだって、行けるでしょ」
「帰るの、何時だよ」
「良いじゃない、泊れば」
彼は久隆の不機嫌な理由を知らない。いや、不機嫌だなんてことすら気づいていないかもしれない。久隆はいつでも、彼には塩対応だから。
「明日、キャンプ場から登校しろって? 偉いハードだな」
まともに相手をする彼に、取り巻き達が笑い出す。そこで初めて冗談だという事に気づいたらしい。彼は両手を拡げ、大げさに肩を竦めるとヤレヤレといってカバンを掴むと立ち上がった。
「んじゃ、またな。久隆」
久隆は気づかなかったが、咲夜が傍まで来ていたようだ。
「久隆、帰ろ」
「咲夜」
呼ばれて初めて気づいた久隆は頬を染めた。花のように綺麗な咲夜が、久隆だけをその瞳に映し微笑む。頷き立ち上がろうとしたところで、にわかに窓際が騒がしくなる。どうやらまだ教室に残っている女子たちが、正門辺りを指して騒いでいるようだ。
──事件かな?
大里以外で、キャーキャー言われる人なんて居たっけ?
久隆が窓際から咲夜に視線を戻すと、彼もどうやら騒ぎが気になるらしく窓の方を見つめている。
「なんだろうね?」
と久隆が口すると、
「行ってみる?」
と、咲夜。
二人はまさか、自分たちに関係ある人物が騒ぎの中心だとは思ってもいなかった。窓際まで咲夜と共に近寄っていくと、同じK学園ではあるが系列の別学区の生徒が正門に立っているのが見える。
顔までは確認できないが、騒がれている意味は直ぐに分かった。どうやら近くにいた生徒がその生徒の写真を、久隆のクラスの女子に送ってきたからのようである。
「ごめん、見せてくれない?」
と、咲夜が写真が送られてきた女子生徒のスマホを覗き込む。
「ねえ、久隆。これって……」
「セトだ」
それは、二人がAGで出逢った、一つ年上のゲーム仲間【瀬戸遥】の写真である。
「相変わらず、人形みたいな人だな」
咲夜の言葉に久隆は思わず笑ってしまったのだった。
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