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1──勘違いとすれ違い
♡7『既成事実』【微R】
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****side:咲夜
咲夜は一人、指に残る感触に酔いしれていた。
「中、熱かった」
久隆の甘い声がまだ自分にまとわりついているようで、堪らなくなり自分自身を抱き締める。
──ほんとはあのまま久隆を……。
「ねえ、お湯張れたよ」
音楽が鳴り、久隆がバスルームからひょこりと顔を出す。ほんとに可愛らしい。
「ありがとう」
「本当に一緒に入るの?」
久隆は頬を染め、目を泳がせ問う。
「恥ずかしいの? さっき全部見たのに?」
咲夜は手で久隆の身体を洗ってあげようと思っていた。厭らしく身体を撫で回しその気にさせるつもりで。
──泡プレイ、興奮しそう。
「だって」
「背中流してあげるよ」
──何処も彼処も撫で回してあげるから。
咲夜この時とんでもない計画を立てていた。久隆をその気にさせて自分を襲わせる計画を。久隆は付き合いをOKしてはくれない。それならば既成事実を作って無理矢理責任を取らせればいいと考えていた。少なくとも性処理をさせてくれるくらいは自分を許してくれている。嫌いではないはずだ。
そう、咲夜は方向を間違えてしまっていた。自分と久隆が付き合えない理由を探って一緒に解決していれば、遠回りも嫉妬も誤解もせずに済んだものを。
それほどまでに久隆は、普段なら冷静な判断ができる咲夜を夢中にさせていたのである。何としてでも恋人の座が欲しい。一年以上片想いして、ただ見ているだけだった久隆は実際話してみると見ていた時以上に好みだったのだ。
この時二人はまだ、大崎一族と姫川一族の因縁を知らない。何故こんなにも惹かれあい求め合ってしまうのか?知るのはまだまだ先。
「脱がしてあげようか、久隆」
「えっ!」
咲夜が服を脱ぐ傍で脱ぎ辛そうにしている久隆の背後からシャツのボタンに指を掛けながら。後ろから抱き締められるようにしてボタンを外されていく久隆は欲情していた。
****
「んッ……」
「ごめん」
シャツを脱がせながらさり気なく久隆の胸の飾りに触れると、彼は甘い声を漏らし両手で口を塞いだ。
──可愛い。
もっと触りたいな。
恋人になれたらきっと、触れるのに。
咲夜は切なくなって後ろから彼を抱き締める。好きで好きで堪らない好きはどこへやればいいのか?
「咲夜?」
名前を呼ばれハッとしてズボンに手をかける。一枚ずつ脱がせると恥ずかしがるかと思い下着こと脱がせば久隆自身が立ち上がっていた。
「っ……」
まさか一気に脱がさせるとは思わなかったのか、彼は真っ赤になると慌てて股間を両手で隠す。目に涙を浮かべながら。
「ごめん、久隆」
再び謝罪を述べるも、
「酷いよ……」
と震える声で恨み言を言われてしまう。
「感じちゃったの? 俺のせい?」
彼は身を捻り頭を反らして咲夜を見つめた。その反動でポロリと涙が転げ落ち、咲夜をドキドキさせる。
「ちゃんと責任取るから」
それがどんな意味なのか彼は分かっていなかった。促されて湯気の立つ浴室へと入っていく久隆。彼の背を見ながら愛しさが増す、咲夜。
この分なら自分の計画通りになりそうだなと思っていた。久隆の欲情の理由が咲夜への想いの証だとも知らずに。
「えっ……」
「ん? どうしたの?」
背中を洗ってあげるよという咲夜に身を任せていた久隆が驚きに声をあげる。何処まで洗う気なの? とでもいうように。
「えっと…」
「責任取るっていったでしょ?」
久隆自身に絡められた咲夜の指に戸惑う久隆。しかし逃す気はなかった。何としてでも今日、久隆と恋人になるつもりの咲夜には。
****
「ねえッ……自分でするよ」
身体中に手を這わせれば、久隆自身は痛いくらいに熱を集めまるで早くイキたいとでも言うように、びくっと震える。
「ねえ、イキたい?」
後ろから優しく抱き締め耳元で甘く囁く。
──俺のものになってよ。
俺だけに夢中になって。
ねえ? 久隆。
涙目の彼が肩越しに振り返る、雫を滴らせながら。
「咲夜……っ」
「久隆、俺を……抱いて」
彼は凄く驚いた顔をした。
──君を俺のものに出来るなら全て捧げるから。
君を手に入れるためなら、何だってする。
久隆が欲しい。
俺のモノにしたい。
「……え? 今、なんて……」
「セックスしようよ、久隆」
──君が手に入るなら、セフレでもなんでもいい。
久隆が欲しい。
もう誰にも触れさせない。
密着した肌が熱かった。シャワーのお湯を浴びながら、彼の首筋にちゅっと口づけする。彼はただ瞳を揺らしていた。
咲夜の父は姫川一族随一と言われた美人で、自分はその父親似である。虜にする自信なら充分あった。しかも叔父は誰彼構わず引き寄せるフェロモン振りまき男などと影で噂されている。叔父もタイプは違うが美人で、真面目そうに見えるが柔らかい笑みに物腰、一途で頑なところもツボらしい。そんな二人がい身内にいるのだから、自分にも何かしら魅力があると思っていた。
今までは自分など眼中になかった彼が自分の手で欲情するのだから、それを裏付けているのでは? そんな風に感じていたのだが。
しかし、それは咲夜の誤解で。大崎家と姫川家の伝承を知らない彼にはわかっていなかった。
咲夜は一人、指に残る感触に酔いしれていた。
「中、熱かった」
久隆の甘い声がまだ自分にまとわりついているようで、堪らなくなり自分自身を抱き締める。
──ほんとはあのまま久隆を……。
「ねえ、お湯張れたよ」
音楽が鳴り、久隆がバスルームからひょこりと顔を出す。ほんとに可愛らしい。
「ありがとう」
「本当に一緒に入るの?」
久隆は頬を染め、目を泳がせ問う。
「恥ずかしいの? さっき全部見たのに?」
咲夜は手で久隆の身体を洗ってあげようと思っていた。厭らしく身体を撫で回しその気にさせるつもりで。
──泡プレイ、興奮しそう。
「だって」
「背中流してあげるよ」
──何処も彼処も撫で回してあげるから。
咲夜この時とんでもない計画を立てていた。久隆をその気にさせて自分を襲わせる計画を。久隆は付き合いをOKしてはくれない。それならば既成事実を作って無理矢理責任を取らせればいいと考えていた。少なくとも性処理をさせてくれるくらいは自分を許してくれている。嫌いではないはずだ。
そう、咲夜は方向を間違えてしまっていた。自分と久隆が付き合えない理由を探って一緒に解決していれば、遠回りも嫉妬も誤解もせずに済んだものを。
それほどまでに久隆は、普段なら冷静な判断ができる咲夜を夢中にさせていたのである。何としてでも恋人の座が欲しい。一年以上片想いして、ただ見ているだけだった久隆は実際話してみると見ていた時以上に好みだったのだ。
この時二人はまだ、大崎一族と姫川一族の因縁を知らない。何故こんなにも惹かれあい求め合ってしまうのか?知るのはまだまだ先。
「脱がしてあげようか、久隆」
「えっ!」
咲夜が服を脱ぐ傍で脱ぎ辛そうにしている久隆の背後からシャツのボタンに指を掛けながら。後ろから抱き締められるようにしてボタンを外されていく久隆は欲情していた。
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「んッ……」
「ごめん」
シャツを脱がせながらさり気なく久隆の胸の飾りに触れると、彼は甘い声を漏らし両手で口を塞いだ。
──可愛い。
もっと触りたいな。
恋人になれたらきっと、触れるのに。
咲夜は切なくなって後ろから彼を抱き締める。好きで好きで堪らない好きはどこへやればいいのか?
「咲夜?」
名前を呼ばれハッとしてズボンに手をかける。一枚ずつ脱がせると恥ずかしがるかと思い下着こと脱がせば久隆自身が立ち上がっていた。
「っ……」
まさか一気に脱がさせるとは思わなかったのか、彼は真っ赤になると慌てて股間を両手で隠す。目に涙を浮かべながら。
「ごめん、久隆」
再び謝罪を述べるも、
「酷いよ……」
と震える声で恨み言を言われてしまう。
「感じちゃったの? 俺のせい?」
彼は身を捻り頭を反らして咲夜を見つめた。その反動でポロリと涙が転げ落ち、咲夜をドキドキさせる。
「ちゃんと責任取るから」
それがどんな意味なのか彼は分かっていなかった。促されて湯気の立つ浴室へと入っていく久隆。彼の背を見ながら愛しさが増す、咲夜。
この分なら自分の計画通りになりそうだなと思っていた。久隆の欲情の理由が咲夜への想いの証だとも知らずに。
「えっ……」
「ん? どうしたの?」
背中を洗ってあげるよという咲夜に身を任せていた久隆が驚きに声をあげる。何処まで洗う気なの? とでもいうように。
「えっと…」
「責任取るっていったでしょ?」
久隆自身に絡められた咲夜の指に戸惑う久隆。しかし逃す気はなかった。何としてでも今日、久隆と恋人になるつもりの咲夜には。
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「ねえッ……自分でするよ」
身体中に手を這わせれば、久隆自身は痛いくらいに熱を集めまるで早くイキたいとでも言うように、びくっと震える。
「ねえ、イキたい?」
後ろから優しく抱き締め耳元で甘く囁く。
──俺のものになってよ。
俺だけに夢中になって。
ねえ? 久隆。
涙目の彼が肩越しに振り返る、雫を滴らせながら。
「咲夜……っ」
「久隆、俺を……抱いて」
彼は凄く驚いた顔をした。
──君を俺のものに出来るなら全て捧げるから。
君を手に入れるためなら、何だってする。
久隆が欲しい。
俺のモノにしたい。
「……え? 今、なんて……」
「セックスしようよ、久隆」
──君が手に入るなら、セフレでもなんでもいい。
久隆が欲しい。
もう誰にも触れさせない。
密着した肌が熱かった。シャワーのお湯を浴びながら、彼の首筋にちゅっと口づけする。彼はただ瞳を揺らしていた。
咲夜の父は姫川一族随一と言われた美人で、自分はその父親似である。虜にする自信なら充分あった。しかも叔父は誰彼構わず引き寄せるフェロモン振りまき男などと影で噂されている。叔父もタイプは違うが美人で、真面目そうに見えるが柔らかい笑みに物腰、一途で頑なところもツボらしい。そんな二人がい身内にいるのだから、自分にも何かしら魅力があると思っていた。
今までは自分など眼中になかった彼が自分の手で欲情するのだから、それを裏付けているのでは? そんな風に感じていたのだが。
しかし、それは咲夜の誤解で。大崎家と姫川家の伝承を知らない彼にはわかっていなかった。
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