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8『掛け違えたボタンの行方』
5 変わらぬ脅威と【微R】
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****side■板井
確かに自分は周りから見たら動じない様に見えるだろう。
だが実際は違うのだ。
──修二は以前、黒岩さんのことが好きだったのだろう。
でも、修二が求めているのは安定。変わらない幸せ。
それを黒岩さんに求めても無駄だとわかっていたから踏み切れないでいた。
黒岩と二人で吞んでいた板井は彼が寝ると言ったのを機にお開きにすることにし、客間へ案内する。
「いい部屋だな。有難く使わせてもらうよ」
穏やかに笑う黒岩。
「では、また朝に」
板井の言葉に彼は、ベッドに向かったまま片手を軽く上げた。
二人の寝室へ向かえば、暑かったのか唯野は下着一枚で寝ている。
「そんな恰好で寝ていたら風邪引いちゃいますよ」
「ん……」
ベッドの傍らに腰かけ、唯野の髪を撫でた。
「暑い」
「水、飲みますか」
「飲む……」
板井は唯野の腕を引き起こし、ストローを挿したミネラルウォーターをその口元に持っていく。そして傍らに腰かけると、板井の背中に寄りかかる彼。
酔ってまともに判断が出来ない今なら、きっと答えてくれるだろうと思った。その本心を。
いや、曖昧だった気持ちを形にしてくれるのではないかと思った。
「好きだったんですか? 黒岩さんのこと」
聞いてどうしようと言うのだろうとも思う。ちゃんと過去にしているのか確認したいのだろうか、自分は。
「苦手だって言わなかったか? まだ疑ってんの」
「疑っているわけでは」
「じゃあ、なんでそんなこと聞くんだよ」
空のペットボトルを板井に押し付けると唯野はため息をついた。
「板井は……なんて言えば満足するんだ?」
板井は受け取ったペットボトルをサイドテーブルにおくと彼の肩を引き寄せる。
「黒岩さんには言ったんでしょう?」
「好きだなんて言ってない」
こちらを見上げる彼の瞳は潤んでいた。
「俺を振り回すなって言ったんだ」
「でも、黒岩さんが他の人に目移りするのは許せない。そうではありませんか?」
唯野は分からないと言うように小さく首を横に振る。
こんなこと暴いたところで何にもならない。
「俺が好きなのは板井だ」
シャツを掴まれ、板井はそのまま唯野を押し倒した。
「んんッ……ああああッ」
激情のまま彼を貪る。自分が今感じている感情が何かすら分からないままに。
「そんなに声出したら黒岩さんに聞こえちゃいますよ」
唯野の耳元で囁くが。
「聞こえたって……かまわない」
彼は本気だった。
板井に信じて貰うためなら、そんなことは些細なことだと言うように自ら足を開く。
「はやく……中……」
お酒のせいか今夜は板井の理性も飛んでいた。導かれるままに彼の秘部に自分自身を押し付けると、欲望のままに穿つ。
「んッ……はあッ」
板井は唯野の肌を撫で上げつつ、何度も腰を引いては進めた。
この姿を、愛し合う姿を黒岩に見せつけたいと思いながら。
それでもきっと黒岩の気持ちは変わらないのだろうとも思う。
唯野が婚姻しても、板井とつき合おうとも変わらないのだから。
だからこそ怖いのだ、板井は黒岩の存在が。
唯野の気持ちが変わればいつだって受け入れるのだろう。
「板井」
「はい?」
上気して潤んだ瞳。
「気が変になるほど……お前に愛されたい。板井、お前だけに」
中を締め付け、板井の絶頂を誘う彼の濡れた唇。
「俺は……お前が言う通り、黒岩のこと好きだったと思う。でも、そんなのは過去のことだ」
どうして急にそんなことを吐露しようとしたのか分からない。けれども受け止めるべきだと思った。あるがままに。
「今、俺に必要なのはお前だけなんだよ」
じっと見つめられて板井は瞳を揺らす。
「俺のことを好きだと言いながら、ふらふらしているアイツが許せないのは……そういうのとは違う」
好きだから気になるわけではない。彼はきっとそう言いたいのだろう。その感情の説明はきっとそのうちできる。今は分からないと彼は言う。
「愛してますよ、とても」
黒岩が脅威なのはきっとこれからも変わらないだろう。
自分が欲しいのは、強くいられるための彼からの想いなんだと板井は感じていた。
確かに自分は周りから見たら動じない様に見えるだろう。
だが実際は違うのだ。
──修二は以前、黒岩さんのことが好きだったのだろう。
でも、修二が求めているのは安定。変わらない幸せ。
それを黒岩さんに求めても無駄だとわかっていたから踏み切れないでいた。
黒岩と二人で吞んでいた板井は彼が寝ると言ったのを機にお開きにすることにし、客間へ案内する。
「いい部屋だな。有難く使わせてもらうよ」
穏やかに笑う黒岩。
「では、また朝に」
板井の言葉に彼は、ベッドに向かったまま片手を軽く上げた。
二人の寝室へ向かえば、暑かったのか唯野は下着一枚で寝ている。
「そんな恰好で寝ていたら風邪引いちゃいますよ」
「ん……」
ベッドの傍らに腰かけ、唯野の髪を撫でた。
「暑い」
「水、飲みますか」
「飲む……」
板井は唯野の腕を引き起こし、ストローを挿したミネラルウォーターをその口元に持っていく。そして傍らに腰かけると、板井の背中に寄りかかる彼。
酔ってまともに判断が出来ない今なら、きっと答えてくれるだろうと思った。その本心を。
いや、曖昧だった気持ちを形にしてくれるのではないかと思った。
「好きだったんですか? 黒岩さんのこと」
聞いてどうしようと言うのだろうとも思う。ちゃんと過去にしているのか確認したいのだろうか、自分は。
「苦手だって言わなかったか? まだ疑ってんの」
「疑っているわけでは」
「じゃあ、なんでそんなこと聞くんだよ」
空のペットボトルを板井に押し付けると唯野はため息をついた。
「板井は……なんて言えば満足するんだ?」
板井は受け取ったペットボトルをサイドテーブルにおくと彼の肩を引き寄せる。
「黒岩さんには言ったんでしょう?」
「好きだなんて言ってない」
こちらを見上げる彼の瞳は潤んでいた。
「俺を振り回すなって言ったんだ」
「でも、黒岩さんが他の人に目移りするのは許せない。そうではありませんか?」
唯野は分からないと言うように小さく首を横に振る。
こんなこと暴いたところで何にもならない。
「俺が好きなのは板井だ」
シャツを掴まれ、板井はそのまま唯野を押し倒した。
「んんッ……ああああッ」
激情のまま彼を貪る。自分が今感じている感情が何かすら分からないままに。
「そんなに声出したら黒岩さんに聞こえちゃいますよ」
唯野の耳元で囁くが。
「聞こえたって……かまわない」
彼は本気だった。
板井に信じて貰うためなら、そんなことは些細なことだと言うように自ら足を開く。
「はやく……中……」
お酒のせいか今夜は板井の理性も飛んでいた。導かれるままに彼の秘部に自分自身を押し付けると、欲望のままに穿つ。
「んッ……はあッ」
板井は唯野の肌を撫で上げつつ、何度も腰を引いては進めた。
この姿を、愛し合う姿を黒岩に見せつけたいと思いながら。
それでもきっと黒岩の気持ちは変わらないのだろうとも思う。
唯野が婚姻しても、板井とつき合おうとも変わらないのだから。
だからこそ怖いのだ、板井は黒岩の存在が。
唯野の気持ちが変わればいつだって受け入れるのだろう。
「板井」
「はい?」
上気して潤んだ瞳。
「気が変になるほど……お前に愛されたい。板井、お前だけに」
中を締め付け、板井の絶頂を誘う彼の濡れた唇。
「俺は……お前が言う通り、黒岩のこと好きだったと思う。でも、そんなのは過去のことだ」
どうして急にそんなことを吐露しようとしたのか分からない。けれども受け止めるべきだと思った。あるがままに。
「今、俺に必要なのはお前だけなんだよ」
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「俺のことを好きだと言いながら、ふらふらしているアイツが許せないのは……そういうのとは違う」
好きだから気になるわけではない。彼はきっとそう言いたいのだろう。その感情の説明はきっとそのうちできる。今は分からないと彼は言う。
「愛してますよ、とても」
黒岩が脅威なのはきっとこれからも変わらないだろう。
自分が欲しいのは、強くいられるための彼からの想いなんだと板井は感じていた。
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