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4『交わる愛と想い』
2 初めての【R】
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****side■板井
『シャワー借りますね』
良いムードを台無しにしたのは自分だった。
板井は唯野の肌に泡を滑らせながら、彼の首筋に唇を寄せる。
会社帰りにそのままスナックに行ってしまったのは、失敗だったなと思った。デスクワークとはいえ、身体は汚れるものだ。愛しい人との初めてなら、なおさら清潔でいたかった。
体温が離れていくのを名残惜しそうに見上げている唯野のことが気になり、
『一緒に入りませんか?』
と誘ったのである。
彼は口にこそ出さないが、とても分かりやすい人だと思った。腕を掴み、ベッドから引き揚げれば、板井の胸の中に大人しく納まる。心臓の音が伝わってしまいそうだと思いながら彼を見つめれば、その瞳は板井の唇を捉えていた。密着した彼の中心部は、熱を帯び硬くなっている。
板井は唯野に口づけると、その背中に腕を回す。彼はその口づけに応えたが、もの欲しそうにしていたのかと恥ずかしそうにした。
「はあ……ッ」
後ろから彼の中心部に指を滑らせ、握りこむ。
壁に両手をついた唯野は、身体を捻り潤んだ瞳でこちらを見つめた。
「こんなところでするつもりなの……か?」
「いいえ。辛そうなので」
唯野は結婚後……いや大学卒業以来、誰とも性交渉を行っていなかったという。彼には一人娘がおり、酔った勢いで事に及んだと相手に、既成事実を突きつけられたらしい。しかしながら、唯野には記憶がなかった。
そのことについては離婚に至る過程で、真実が明らかにされる。唯野はそれを受け入れ、離婚届けに判を押したようだ。
彼は元々性欲が薄いのか?
それとも、そのことが原因でそういう気持ちになれないのか。
まだお付き合いを始めたばかりで、深く踏み込んで聞くことはできないが、唯野の様子を見ている限りでは、自分とは自制をするのが難しい状況にあるのではないかと想像できた。
つまり、欲情しているということだ。
そんな彼に一度や二度その熱を吐き出させたくらいで解放する気など、さらさらない。
「一度でやめたりしないでしょう?」
彼の耳元でそう囁くと、彼はぶるっと身体を震わせる。強く彼自身を握り込み、ゆるゆると上下させれば、甘い声を漏らした。
「んッ……」
「修二……」
耳を甘噛みし、首筋を強く吸う。
「痕が……ついちゃうだろ」
抗議する彼の胸へもう片方の手を滑らせ、胸の突起を指先で転がせば、唯野は胸を仰け反らせた。
──この人をドロドロにしてしまいたい。
自分を欲しがらせたい。
愛し愛されていると気づいた途端に理性は崩壊した。ずっと諦めていたのだ。彼には妻子があったから。どんなに思っても手に入らないのだと。
その上、やっと手に入ったと思ったら、強力なライバルがいた。彼は十七年もの間、唯野に執着していたのだ。
誤解だとは言うが、総括黒岩は今後も二人の邪魔をするに違いない。
──あの人に修二は渡さない。
修二を愛していいのは俺だけだ。
誰にも触れさせるものか。
自分の中にこんなにも独占欲の強い自分がいるとは、自覚していなかった。だが今まで彼以外に執着したことはなく、独占欲をむき出しにするようなことも、もちろんない。自分の中で唯野修二ただ一人が特別なのだということに気づく。
「板井……俺、もう……」
絶頂を迎えることを告げる彼は、艶やかだった。滑らかな肌。その肩に板井が唇を寄せ、強く吸い上げるのと同時に彼はその鈴口から熱を放つ。
板井は肩に吸い付いたまま、その鈴口を見つめていたのだった。
『シャワー借りますね』
良いムードを台無しにしたのは自分だった。
板井は唯野の肌に泡を滑らせながら、彼の首筋に唇を寄せる。
会社帰りにそのままスナックに行ってしまったのは、失敗だったなと思った。デスクワークとはいえ、身体は汚れるものだ。愛しい人との初めてなら、なおさら清潔でいたかった。
体温が離れていくのを名残惜しそうに見上げている唯野のことが気になり、
『一緒に入りませんか?』
と誘ったのである。
彼は口にこそ出さないが、とても分かりやすい人だと思った。腕を掴み、ベッドから引き揚げれば、板井の胸の中に大人しく納まる。心臓の音が伝わってしまいそうだと思いながら彼を見つめれば、その瞳は板井の唇を捉えていた。密着した彼の中心部は、熱を帯び硬くなっている。
板井は唯野に口づけると、その背中に腕を回す。彼はその口づけに応えたが、もの欲しそうにしていたのかと恥ずかしそうにした。
「はあ……ッ」
後ろから彼の中心部に指を滑らせ、握りこむ。
壁に両手をついた唯野は、身体を捻り潤んだ瞳でこちらを見つめた。
「こんなところでするつもりなの……か?」
「いいえ。辛そうなので」
唯野は結婚後……いや大学卒業以来、誰とも性交渉を行っていなかったという。彼には一人娘がおり、酔った勢いで事に及んだと相手に、既成事実を突きつけられたらしい。しかしながら、唯野には記憶がなかった。
そのことについては離婚に至る過程で、真実が明らかにされる。唯野はそれを受け入れ、離婚届けに判を押したようだ。
彼は元々性欲が薄いのか?
それとも、そのことが原因でそういう気持ちになれないのか。
まだお付き合いを始めたばかりで、深く踏み込んで聞くことはできないが、唯野の様子を見ている限りでは、自分とは自制をするのが難しい状況にあるのではないかと想像できた。
つまり、欲情しているということだ。
そんな彼に一度や二度その熱を吐き出させたくらいで解放する気など、さらさらない。
「一度でやめたりしないでしょう?」
彼の耳元でそう囁くと、彼はぶるっと身体を震わせる。強く彼自身を握り込み、ゆるゆると上下させれば、甘い声を漏らした。
「んッ……」
「修二……」
耳を甘噛みし、首筋を強く吸う。
「痕が……ついちゃうだろ」
抗議する彼の胸へもう片方の手を滑らせ、胸の突起を指先で転がせば、唯野は胸を仰け反らせた。
──この人をドロドロにしてしまいたい。
自分を欲しがらせたい。
愛し愛されていると気づいた途端に理性は崩壊した。ずっと諦めていたのだ。彼には妻子があったから。どんなに思っても手に入らないのだと。
その上、やっと手に入ったと思ったら、強力なライバルがいた。彼は十七年もの間、唯野に執着していたのだ。
誤解だとは言うが、総括黒岩は今後も二人の邪魔をするに違いない。
──あの人に修二は渡さない。
修二を愛していいのは俺だけだ。
誰にも触れさせるものか。
自分の中にこんなにも独占欲の強い自分がいるとは、自覚していなかった。だが今まで彼以外に執着したことはなく、独占欲をむき出しにするようなことも、もちろんない。自分の中で唯野修二ただ一人が特別なのだということに気づく。
「板井……俺、もう……」
絶頂を迎えることを告げる彼は、艶やかだった。滑らかな肌。その肩に板井が唇を寄せ、強く吸い上げるのと同時に彼はその鈴口から熱を放つ。
板井は肩に吸い付いたまま、その鈴口を見つめていたのだった。
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