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0*運命に逆らいし兄弟

2 超えてはいけないもの【R】

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 むぎゅっと首に腕を回し抱きついてくる弟の背を圭一は優しくなでる。
 今日学校でのことを思い出しながら。

『大崎、おい。大崎ってば』
 窓際の席でぼんやりと頬杖をつき外を眺めていたら、同じクラスであり初等部からの親友、古川《こがわ》が話しかけてきたが気付かなかった。
 傍らには大里家の次女。彼女も同じクラスである。
 圭一に”美の女神に愛されし男”などとわけのわからないニックネームをつけたのは、彼女の姉。つまり大里家長女であった。
 理由を問えば”無駄にイケメンってことよ”と面白くもなさそうな返事が返ってきたことを思い出す。

 モデル体系に眉目秀麗、文武両道な圭一であったがまったくモテなかった為、自分の容姿が優れているとは思っていなかった。
 モテはしないがやたらストーキングはされる。かといって気にも留めない。それが圭一。

『なんだ?』
『今日、大崎んち遊びに行ってもいい?』
『悪い、今日はちょっと』
 最近弟の甘えたが酷くなったのが気になっている。
 もしかしたら寂しいのかもしれないと圭一は思っていた。
 古川たちが遊びに来ると弟はとても喜ぶのだが、二人きりの時間がとれておらず学校の話も聞いてやれていないなと思っていたところなのだ。

 父は仕事で忙しい。
 久隆の四歳の誕生日に”何が欲しい?”と問えば、ママに会いたい”という。
 亡くなった母に逢える筈もなく、寂しがっているのかと思った父は大崎邸に二十名ほどの従業員を突如雇い、まるで旅館のように我が家は賑やかになった。
 大崎邸は三階建てのアンティークな造りの洋館だ。
 父は大崎本家の長男であり、本来なら本家に住んでいてもおかしくは無いのだが洋館に住みたかったらしく、自分で家を建て本家から出た。そんな父には妹が一人いる。とても変わった叔母だ。

「お兄ちゃん」
「ん? 眠いのか?」
「ううん」

 天使のように微笑む弟が愛しい。
 髪を撫でればくすぐったそうに声をあげた。圭一は彼を抱き上げると隣のベッドルームに向かう。
 もっと子猫のように撫で回して構ってあげたい。そんなことを思いながら。



「最近、学校はどう?楽しい?」
 弟は周りより成長が遅いのかまだ小さくて華奢だった。しかもベビーフェイス。
 可愛らしいその造形のせいで余計幼く感じた。
 二人ベッドに転がると圭一は左半身を下にし、横向きになって頬杖をつき右手で久隆の頬をなでる。
 恥ずかしそうに肩をすくめた久隆は胸にすり寄ってくる。甘い香りが鼻先を掠めた。

「いじめられてない?」

 自分たちを悲しませないようにと久隆は幼なじみの聖に、
『パパやお兄ちゃんには内緒にして』
と懇願し、イジメのことを隠していた。
 だからこそ心配。もっと甘えてくれたらいいのだ、また子供なのだから。

「へーき! 大里がね、今日ね」

 聞いてはいけなかったのだ。
 知らなければ良かったのに。
 自分の本心に気づいたのはホントに小さなことだった。それが恋かは知らない。ただの愛情かもしれない。猛烈な嫉妬に襲われた理由がなんだったのか、答えは出ていない。
 ただ、愛しい弟を自分だけのものにしておきたくて、自分だけに甘えて欲しくて道を踏み外したのかもしれない。

「寂しくて、お兄ちゃんに逢いたくて」
「うん?」

 弟を抱き寄せ、背中を優しく撫でていた圭一の心を掻き乱したのは些細なこと。

「元気ないって大里に言われて『お兄ちゃんに逢いたい』って言ったら」
「うん」
「代わりに抱っこしてくれたの」

──自分以外のやつに甘えたのか?
 久隆が?

 それは衝動的なことで。気づけば久隆を組伏せその首筋に舌を這わせていた。
「お兄ちゃん?」
 驚く久隆のシャツをたくしあげ、手を這わす。
 滑らかな絹のような手触りに男オスの本能が目覚める。
「お兄ちゃん! こわいッ」
 押し退けようとする両手首を掴みベッドに抑えつけるとその唇を塞いだ。
「んッ……」
「久隆」
 恐怖で圭一を見上げる久隆の目には、涙が浮かんでいる。

「お兄ちゃん、怒ってるの? 僕、悪い子?」
「いい子だよ、愛しい」
「でも」
「大丈夫、お兄ちゃんと良いことしよう? 怖がらないで。大好きな人とすることだよ」
「僕、お兄ちゃん大好きだよ」


 毎日風呂を共にするせいか全裸になることにはためらいのなかった久隆だったが、まだ肌が敏感過ぎるため、ピンクの小さな胸の飾りに舌を這わせるととても恥ずかしがった。
 それが変化を遂げるのは久隆自身に触れた時。
「あッ……」
 ちゃんと男の子なんだと思えるほど反応するまだ小さなそこは、圭一を興奮させる。
 この時まだ、久隆は精通していなかった。

「お兄ちゃッ……なんか変ッ」
「気持ちいいっていうんだよ」
「んッ」

 可愛い声を漏らし、兄に厭らしく肌を撫でまわされながらもそこはちゃんと主張していた。
 白く小さな象徴。口に含まれ、舌で弄られると彼はむずむずと腰を揺らす。

「可愛い」
「んん……」

 全体を手で包み込み緩く強くと上下してやれば、気持ちよさに身を捩る。
 圭一は久隆の全てが欲しかった。腰を持ち上げ片手で双丘を拡げると小さな小さな蕾に舌を這わせる。
「ひあッ……お兄ちゃん?!」
 指で広げ中に舌を差し入れ、クニクニと嘗め回す。
「やあんッ」
 柔らかく白い肌。イケナイコトをしているのはわかっている。
 しかし先ほど流し始めた”Best 4 you”がお洒落に部屋を包んでゆく。罪悪感を消し去るかのように。
「愛してるよ」
 この愛が家族の愛なのか情愛なのかわからない。
 でも誰にも触らせたくない。ずっと傍に居た。どんなときだって。
「お兄ちゃんッ……」
 潤んだ瞳。自分を呼ぶ声。

──なあ、久隆は俺の傍にいてくれる?
 お前だけは、俺の傍に。
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