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5*運命の代償
1 不安要素は突然に
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****♡side:久隆(弟)
今日はずっと兄を独り占めできる。
久隆は嬉しさに兄の腕に自分の腕を絡め、兄はそんな久隆を愛しそうに眺めては微笑みをくれた。
「お兄ちゃんッ」
「ん?」
「へへっ」
「なんだよ。可愛い」
ちゅっと口づけされ、顔を赤らめると髪をなでられる。
「久隆は昔から甘えん坊で可愛い」
「お兄ちゃんにだけ、甘えたいのッ」
「大里にも甘えるくせに」
「うぅ」
痛いところをつつかれ、上目遣いで見つめていると抱き寄せられた。
「久隆は俺だけに甘えていればいいんだよ」
「お兄ちゃん」
むぎゅっと抱きつくと、可愛い可愛いとハグされる。
──こんなに幸せでいいのかな?
お兄ちゃんといると幸せいっぱいになれるの。
大好き……。
「何かスイーツでも買ってく?」
「いいの?」
甘いものが特別好きというわけではなかった。
しかし繊細な細工がしてあるスイーツはどれもこれも芸術的で。
「どれがいい?」
「うーん。お兄ちゃんと一緒に食べたいな」
「俺と?」
何故か兄は口元を押さえる。少し照れたように。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「い、いや……」
目を泳がせているが、兄はどうやら一緒に食べたいということを”あーん”し合うことだと思ったらしい。
「苺のタルトにする」
久隆はじっとショーケースを見つめ吟味していたが”甘酸っぱい、甘さ控えめ”と書いてある苺のタルトを差した。兄がそれを見て微笑む。
「あーんしてくれる?」
「ああ」
「お兄ちゃんにもしてあげるね」
「……ッ」
兄はむせた後、凄く嬉しそうな顔をした。
「お兄ちゃん、遅いな」
大崎邸に着くと兄は父の書斎へ行くといって先に二階にあがっていった。
久隆は三階の自室でケーキを冷蔵庫に入れると、代わりに紅茶を取り出しグラスに注ぐ。
てっきり兄がすぐ来るものと思い二つ用意したのだが。仕方なく兄の元へ向かうと、彼はじっと書類を見つめ険しい顔をしていた。姿勢がとても美しく、カッコいい兄にときめいてしまう。
──うう……。
カッコいい。
「ん? 久隆か。悪い、ちょっと……」
久隆はトコトコと兄に近づいて行くとその腕に手を添え、彼の手元の書類を覗き込む。
そこには片倉の再建について書かれていた。片倉と言えば老舗の旅館なども経営している会社で業績が悪化、まずい状況であることは久隆も知っている。
たしか片倉家には久隆と同学年の女の子のように可愛らしい一人息子がおり、その子を巡ったトラブルが発生していた。
「これって」
「親父は久隆に再建をやらせるつもりみたいだな。都筑をつけて」
「都筑……」
──お兄ちゃんが都筑の近くで仕事をしなくなるのは嬉しいけど。
距離は近くなるんだよね、不安だな。
「不安か?」
兄は書類を重厚な木の机に置くと久隆を抱き寄せる。
「久隆が社長になるのに反対している奴らを一気に黙らせたいんだろうと思う」
久隆が兄を見上げていると、彼はそういった。
派閥があるのは知っていたが、自分がどうこうできることでもない。
「今日、呼ばれたのはこの話かもしれないな。俺もサポートするから」
優しく髪を撫でてくれる兄の腕をぎゅっと掴む。
自分たちがどんなに仲が良くたって周りから引き裂かれるようなことがあるのだと怖くなる。
「お兄ちゃん」
「大丈夫だよ、俺がついてるから」
「うん」
どんな時だって兄は頼りになる。
でも、恋人として対等になりたい。兄は思っているよりずっと繊細で傷つきやすいから。
いざという時は支えてあげたいから……。
今日はずっと兄を独り占めできる。
久隆は嬉しさに兄の腕に自分の腕を絡め、兄はそんな久隆を愛しそうに眺めては微笑みをくれた。
「お兄ちゃんッ」
「ん?」
「へへっ」
「なんだよ。可愛い」
ちゅっと口づけされ、顔を赤らめると髪をなでられる。
「久隆は昔から甘えん坊で可愛い」
「お兄ちゃんにだけ、甘えたいのッ」
「大里にも甘えるくせに」
「うぅ」
痛いところをつつかれ、上目遣いで見つめていると抱き寄せられた。
「久隆は俺だけに甘えていればいいんだよ」
「お兄ちゃん」
むぎゅっと抱きつくと、可愛い可愛いとハグされる。
──こんなに幸せでいいのかな?
お兄ちゃんといると幸せいっぱいになれるの。
大好き……。
「何かスイーツでも買ってく?」
「いいの?」
甘いものが特別好きというわけではなかった。
しかし繊細な細工がしてあるスイーツはどれもこれも芸術的で。
「どれがいい?」
「うーん。お兄ちゃんと一緒に食べたいな」
「俺と?」
何故か兄は口元を押さえる。少し照れたように。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「い、いや……」
目を泳がせているが、兄はどうやら一緒に食べたいということを”あーん”し合うことだと思ったらしい。
「苺のタルトにする」
久隆はじっとショーケースを見つめ吟味していたが”甘酸っぱい、甘さ控えめ”と書いてある苺のタルトを差した。兄がそれを見て微笑む。
「あーんしてくれる?」
「ああ」
「お兄ちゃんにもしてあげるね」
「……ッ」
兄はむせた後、凄く嬉しそうな顔をした。
「お兄ちゃん、遅いな」
大崎邸に着くと兄は父の書斎へ行くといって先に二階にあがっていった。
久隆は三階の自室でケーキを冷蔵庫に入れると、代わりに紅茶を取り出しグラスに注ぐ。
てっきり兄がすぐ来るものと思い二つ用意したのだが。仕方なく兄の元へ向かうと、彼はじっと書類を見つめ険しい顔をしていた。姿勢がとても美しく、カッコいい兄にときめいてしまう。
──うう……。
カッコいい。
「ん? 久隆か。悪い、ちょっと……」
久隆はトコトコと兄に近づいて行くとその腕に手を添え、彼の手元の書類を覗き込む。
そこには片倉の再建について書かれていた。片倉と言えば老舗の旅館なども経営している会社で業績が悪化、まずい状況であることは久隆も知っている。
たしか片倉家には久隆と同学年の女の子のように可愛らしい一人息子がおり、その子を巡ったトラブルが発生していた。
「これって」
「親父は久隆に再建をやらせるつもりみたいだな。都筑をつけて」
「都筑……」
──お兄ちゃんが都筑の近くで仕事をしなくなるのは嬉しいけど。
距離は近くなるんだよね、不安だな。
「不安か?」
兄は書類を重厚な木の机に置くと久隆を抱き寄せる。
「久隆が社長になるのに反対している奴らを一気に黙らせたいんだろうと思う」
久隆が兄を見上げていると、彼はそういった。
派閥があるのは知っていたが、自分がどうこうできることでもない。
「今日、呼ばれたのはこの話かもしれないな。俺もサポートするから」
優しく髪を撫でてくれる兄の腕をぎゅっと掴む。
自分たちがどんなに仲が良くたって周りから引き裂かれるようなことがあるのだと怖くなる。
「お兄ちゃん」
「大丈夫だよ、俺がついてるから」
「うん」
どんな時だって兄は頼りになる。
でも、恋人として対等になりたい。兄は思っているよりずっと繊細で傷つきやすいから。
いざという時は支えてあげたいから……。
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