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2*俺の弟
4 可愛すぎる弟
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「ねえ、見てあの人カッコいい」
昼を終え映画館に向かっていると、二人組の女性とすれ違い様にそう声がした。
それと同時に久隆が繋いだ手にぎゅっと力を入れるのを感じる。
「どうした?」
圭一は不思議に思い、久隆の顔を覗き込むとちょっと拗ねた表情をしていた。
「お兄ちゃんのこと見てた」
「は?」
何のことだろうと振り返ると『きゃーっ』と黄色い声が。
圭一は自分がモテるという自覚がなかったので、ただ首を傾げた。
「お兄ちゃんは……」
「ヤキモチ妬きだな、可愛い」
むうっとしている久隆が可愛いので腰を引き寄せチュッと口付ける。
「ここっ……外ッ」
「いいだろ? 恋人なんだから」
真っ赤になる久隆の手を掴むと再び歩き出す。
天気がよく、絶好のデート日和だ。
「観たい映画はどんなもの?」
「えっとアクション×コメディ。凄く面白いんだって」
「前評判がいいものはなあ……」
期待値があがってあまり面白くないものだ。圭一は最近公開されたばかりのイタリア映画が気になっていた。好きな相手と結ばれず、二人で手を取り合い異国でひっそり暮らす純愛ストーリーだ。
「凄く楽しみなんだ」
しかし久隆の笑顔を見ると、そんな考えも一瞬で吹き飛ぶ。
すべては愛しい弟の為に。大切な恋人の為に。
結ばれた瞬間から大事にすると決めていた。
世界中の誰よりも幸せと感じて欲しい。自分と居ることを。
後悔なんて絶対にしてほしくないし、させないと誓った。誰に許されなくとも、二人で幸せになると。なってみせると圭一は固く心に誓ったのだった。
「わあ! 見て、お洒落だよ」
はしゃぐ久隆を圭一は優しい笑みを浮かべ見つめていた。
赤と黒のお洒落な建物が映画館であった。
「ポップコーン買っていい?」
セレブ一家で溺愛されて育ったにも関わらず、久隆は倹約家で無駄遣いを好まない。
服装だっていつもラフでジーパンにTシャツといういでたち。モノを強請ることもない。そんな久隆がお土産を欲しがったりこんな風に承諾を得ようとするのが新鮮であり、微笑ましかった。
それだけデートを楽しんでおり、はしゃいでいるということなのだ。
「もちろんだよ」
「やった。映画館ではポップコーンが定番でしょ?」
ニコニコしながら見上げてくる久隆が可愛い、今すぐ抱き締めたいほど。
「飲み物は?」
「アイスティがいい」
「了解、待ってて」
列に並ぼうとしたら服の裾を掴まれた。
「一緒に……」
うっかりしていた。
久隆が知らない場所で一人にされると怖がるのを忘れていたなんて。
自分の馬鹿さ加減に嫌気がさした。
”待って居られないの?”と言われるのが怖くて小さな声で控えめに言うのが何とも切なくさせる。
怒ったりなんてしないのに。
「!」
震える手を掴み列に並ぶと、久隆がこちらを見上げた。
怖くないよと言い聞かせるように微笑んでみせる。全て自分のせい。あの日手を放してしまったから。久隆の心に深い傷を残してしまったから。
ホッとしたように小さく微笑んで俯くその髪を撫で引き寄せる。傍にいるよというように。
「お兄ちゃん」
「ん?」
背の低い彼のために少し屈めば、
「ありがとう、大好き」
と言われ、今すぐ押し倒したい衝動に駆られた。
本当に可愛すぎる、天使だ。
「愛してるよ」
耳元で囁けば、頬を染める。
「楽しみだな」
「うん」
夜のことに想いを馳せた。
夜景は喜んでくれるだろうか?
久隆が嬉しそうに大きな窓に張り付く様を想像して笑みがこぼれる。
恋とは人を変えるものだなと改めて感じていた。
昼を終え映画館に向かっていると、二人組の女性とすれ違い様にそう声がした。
それと同時に久隆が繋いだ手にぎゅっと力を入れるのを感じる。
「どうした?」
圭一は不思議に思い、久隆の顔を覗き込むとちょっと拗ねた表情をしていた。
「お兄ちゃんのこと見てた」
「は?」
何のことだろうと振り返ると『きゃーっ』と黄色い声が。
圭一は自分がモテるという自覚がなかったので、ただ首を傾げた。
「お兄ちゃんは……」
「ヤキモチ妬きだな、可愛い」
むうっとしている久隆が可愛いので腰を引き寄せチュッと口付ける。
「ここっ……外ッ」
「いいだろ? 恋人なんだから」
真っ赤になる久隆の手を掴むと再び歩き出す。
天気がよく、絶好のデート日和だ。
「観たい映画はどんなもの?」
「えっとアクション×コメディ。凄く面白いんだって」
「前評判がいいものはなあ……」
期待値があがってあまり面白くないものだ。圭一は最近公開されたばかりのイタリア映画が気になっていた。好きな相手と結ばれず、二人で手を取り合い異国でひっそり暮らす純愛ストーリーだ。
「凄く楽しみなんだ」
しかし久隆の笑顔を見ると、そんな考えも一瞬で吹き飛ぶ。
すべては愛しい弟の為に。大切な恋人の為に。
結ばれた瞬間から大事にすると決めていた。
世界中の誰よりも幸せと感じて欲しい。自分と居ることを。
後悔なんて絶対にしてほしくないし、させないと誓った。誰に許されなくとも、二人で幸せになると。なってみせると圭一は固く心に誓ったのだった。
「わあ! 見て、お洒落だよ」
はしゃぐ久隆を圭一は優しい笑みを浮かべ見つめていた。
赤と黒のお洒落な建物が映画館であった。
「ポップコーン買っていい?」
セレブ一家で溺愛されて育ったにも関わらず、久隆は倹約家で無駄遣いを好まない。
服装だっていつもラフでジーパンにTシャツといういでたち。モノを強請ることもない。そんな久隆がお土産を欲しがったりこんな風に承諾を得ようとするのが新鮮であり、微笑ましかった。
それだけデートを楽しんでおり、はしゃいでいるということなのだ。
「もちろんだよ」
「やった。映画館ではポップコーンが定番でしょ?」
ニコニコしながら見上げてくる久隆が可愛い、今すぐ抱き締めたいほど。
「飲み物は?」
「アイスティがいい」
「了解、待ってて」
列に並ぼうとしたら服の裾を掴まれた。
「一緒に……」
うっかりしていた。
久隆が知らない場所で一人にされると怖がるのを忘れていたなんて。
自分の馬鹿さ加減に嫌気がさした。
”待って居られないの?”と言われるのが怖くて小さな声で控えめに言うのが何とも切なくさせる。
怒ったりなんてしないのに。
「!」
震える手を掴み列に並ぶと、久隆がこちらを見上げた。
怖くないよと言い聞かせるように微笑んでみせる。全て自分のせい。あの日手を放してしまったから。久隆の心に深い傷を残してしまったから。
ホッとしたように小さく微笑んで俯くその髪を撫で引き寄せる。傍にいるよというように。
「お兄ちゃん」
「ん?」
背の低い彼のために少し屈めば、
「ありがとう、大好き」
と言われ、今すぐ押し倒したい衝動に駆られた。
本当に可愛すぎる、天使だ。
「愛してるよ」
耳元で囁けば、頬を染める。
「楽しみだな」
「うん」
夜のことに想いを馳せた。
夜景は喜んでくれるだろうか?
久隆が嬉しそうに大きな窓に張り付く様を想像して笑みがこぼれる。
恋とは人を変えるものだなと改めて感じていた。
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