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四章 ━━━━【この世で一番愛しい人】
6♡『おい、待て。おまえら』1
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****♡Side・圭一
人生とは理不尽である。ある誤解により、”あああ”なことが起きた。”あああ”となにか?それはちょっと、ここでは言えない。
「こーがーわああああああああッ!」
見つけたぞ、曲者め!
見つけたからには生かしてはおけん。
「げ、大崎!」
大崎 圭一の叫び声に、古川 悠は全力で逃げ始める。
「ちょっとッ!なんで、バット持ってるんだよ!」
と、慌てる古川に、
「まて!古川」
と全力で追いかける圭一。
「お前のせいで!あんなッ」
「どんなだよ!」
「言えるか!ボケぇ!」
古川はやたら足が速かった。K学園大学部のキャンパス内を鬼の形相で追いかける圭一の視界にチラリと見知った顔が二つ。幼馴染みの姉妹、大里 愛花とミノリである。
「相変わらず、仲いいですわね」
古川と圭一を見ていたミノリがそう口にすると、彼女の隣に立ってスマホを操作していた愛花が顔を引きつらせ、
「どこをどう見たらそう見えるわけ?」
とミノリに視線を移した。
「美しき友情でしてよ」
ミノリはニコニコしながら一眼レフカメラのシャッターを切っている。
「あんた、何してるのよ」
「美しき青春の一ページを写真に収めていましてよ」
「…」
「はあ…はあ…」
気づけば、圭一は駐車場にいた。ずいぶん遠くまで追ってきたものだ。
ちっ…、古川め。逃げ足が速いな。
圭一は仕方なく駐車場入り口の自動販売機のほうへ向かおうとして、声をかけられた。
「何してんだ?バットなんか持って」
高等部時代、同じ風紀委員会に所属していた同級生の白石 奏斗である。
「白石」
彼は圭一の頭からつま先まで視線を走らせ、再び顔に目を向け、
「しかし、暑くないのか?」
と問う。圭一は年がら年中葬儀屋のようなカッコをしていた。
「別に」
白石はジーパンにTシャツといういでたちである。彼は圭一の返答に面白くない顔をし、自動販売機に向かって歩いていく。圭一もそれに続いた。
「何飲む?」
どうやら白石は奢ってくれるらしい。
「コーヒー」
「缶のブラックって不味くないか?」
「じゃあ、ペットボトル」
「こんなに飲むのか?」
白石は変な顔をしながら、500ミリのペットボトルのボタンを押す。彼は圭一にペットボトルを渡すと紅茶のボタンを押したのだが…。
「さんきゅ」
礼を述べた圭一の瞳は、白石の手元にくぎ付けだった。どうやらいつもの癖が出たようで。
「おい」
彼の飲む紅茶がどうにも旨そうに見え、圭一はおもむろに彼の手元に手を伸ばした。彼が止めるのも聞かず、口元へ。
「その癖やめろって言わなかったか?」
と、白石。
「人のものは旨く見えるんだよ」
「お前は、ジャイア〇か?」
「うるさ…」
紅茶を彼に返しながら顔を上げた圭一は固まる。
「ん?どうした?」
「圭一さん!」
二人の様子を誤解した圭一の婚約者がムッとして立っていたのだった。振り返った白石は、
「どうやら面倒なことになりそうだな」
とため息をついた。
人生とは理不尽である。ある誤解により、”あああ”なことが起きた。”あああ”となにか?それはちょっと、ここでは言えない。
「こーがーわああああああああッ!」
見つけたぞ、曲者め!
見つけたからには生かしてはおけん。
「げ、大崎!」
大崎 圭一の叫び声に、古川 悠は全力で逃げ始める。
「ちょっとッ!なんで、バット持ってるんだよ!」
と、慌てる古川に、
「まて!古川」
と全力で追いかける圭一。
「お前のせいで!あんなッ」
「どんなだよ!」
「言えるか!ボケぇ!」
古川はやたら足が速かった。K学園大学部のキャンパス内を鬼の形相で追いかける圭一の視界にチラリと見知った顔が二つ。幼馴染みの姉妹、大里 愛花とミノリである。
「相変わらず、仲いいですわね」
古川と圭一を見ていたミノリがそう口にすると、彼女の隣に立ってスマホを操作していた愛花が顔を引きつらせ、
「どこをどう見たらそう見えるわけ?」
とミノリに視線を移した。
「美しき友情でしてよ」
ミノリはニコニコしながら一眼レフカメラのシャッターを切っている。
「あんた、何してるのよ」
「美しき青春の一ページを写真に収めていましてよ」
「…」
「はあ…はあ…」
気づけば、圭一は駐車場にいた。ずいぶん遠くまで追ってきたものだ。
ちっ…、古川め。逃げ足が速いな。
圭一は仕方なく駐車場入り口の自動販売機のほうへ向かおうとして、声をかけられた。
「何してんだ?バットなんか持って」
高等部時代、同じ風紀委員会に所属していた同級生の白石 奏斗である。
「白石」
彼は圭一の頭からつま先まで視線を走らせ、再び顔に目を向け、
「しかし、暑くないのか?」
と問う。圭一は年がら年中葬儀屋のようなカッコをしていた。
「別に」
白石はジーパンにTシャツといういでたちである。彼は圭一の返答に面白くない顔をし、自動販売機に向かって歩いていく。圭一もそれに続いた。
「何飲む?」
どうやら白石は奢ってくれるらしい。
「コーヒー」
「缶のブラックって不味くないか?」
「じゃあ、ペットボトル」
「こんなに飲むのか?」
白石は変な顔をしながら、500ミリのペットボトルのボタンを押す。彼は圭一にペットボトルを渡すと紅茶のボタンを押したのだが…。
「さんきゅ」
礼を述べた圭一の瞳は、白石の手元にくぎ付けだった。どうやらいつもの癖が出たようで。
「おい」
彼の飲む紅茶がどうにも旨そうに見え、圭一はおもむろに彼の手元に手を伸ばした。彼が止めるのも聞かず、口元へ。
「その癖やめろって言わなかったか?」
と、白石。
「人のものは旨く見えるんだよ」
「お前は、ジャイア〇か?」
「うるさ…」
紅茶を彼に返しながら顔を上げた圭一は固まる。
「ん?どうした?」
「圭一さん!」
二人の様子を誤解した圭一の婚約者がムッとして立っていたのだった。振り返った白石は、
「どうやら面倒なことになりそうだな」
とため息をついた。
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