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四章 ━━━━【この世で一番愛しい人】
5♡【あの年のバレンタイン4】
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****♡Side・都筑
───あなたは、欲しいと言えば
何でもくれる
でも、欲しいのは物じゃない
圭一に好きだと言ったら振られ、それだけならまだ良かった。職場でしょっちゅう一緒になるのも好きだから我慢できた。
だけど、直後に圭一は大里家の次女と付き合い始め、休みの日には彼女と出かけるようになった。
「要りません」
都筑は泣きたくなって圭一に腕時計を突っ返すと食堂から出ていった。
圭一がため息をつき、立ち上がるのがわかった。
───子供みたいなことして
あなたは呆れるのだろうか?
あなたよりも年上なのに
食堂を出ると近くの人気のない場所で壁に寄りかかる。
「都筑」
自分よりも背の高い圭一を見上げた。
「腕時計じゃだめか?」
“なんでも良いっていったじゃないか”と圭一は困った顔をする。
───好き
やっぱりまだ、こんなに好きで
嫉妬してしまうほどに
「俺の身に付けてるものならなんだって良いって」
「あんなの、ただの冗談です」
圭一は社長室でバレンタインの話題になった時、話の流れで“都筑、何かやろうか?”などと言ってきた。
だから“圭一さんの身に付けてるものが欲しい”と。
「どうせ、明日もデートなんですよね?」
───泣きたい
一人になりたい
「あれはデートなんかじゃ..」
「あなたに出会いたくなんかなかった。なんで自分ばかりこんな..」
「都筑、そんなに俺が好きなのか?」
都筑は圭一を見つめ返し瞳を揺らした。圭一のほうが何倍も辛そうにこちらを見ている。まるで、圭一の方が片思いをしているとでも言うように。
“キスも犯罪になるのかな..”
圭一は呟いたかと思うと、都筑の顎を掴む。
「じゃあ、俺のファーストキス、都筑にやるから」
「え?」
「目ぐらい閉じろよ」
何故か怒られながら目を閉じたのだった。
**
圭一のいなくなった廊下で、一人泣いた。膝を抱えて。圭一を自分のものにしたいと思った。心ごと全部。自分は彼にとって”運命の恋人”であるはずなのに。一族間で認められた存在のはずなのに、どうして振り向いてくれないのだろう。他の人のところへ行ってしまうのだろう。
「圭一さん…行かないで」
本人に伝える勇気もないのに。
「傍に居てよ…」
とめどなく溢れる涙。唇に残る温もり。胸が締め付けられて苦しい。いつか忘れられるのだろうか、この痛みは。
「他の人じゃ…イヤだ」
こんな時に兄が居てくれたなら、どんなに良かったろうか。
───あの時、好きだなんて言わなければ。
こんなに辛い想いをしなくて良かったのだろうか。その答えが分かるのは随分先の話である。
───あなたは、欲しいと言えば
何でもくれる
でも、欲しいのは物じゃない
圭一に好きだと言ったら振られ、それだけならまだ良かった。職場でしょっちゅう一緒になるのも好きだから我慢できた。
だけど、直後に圭一は大里家の次女と付き合い始め、休みの日には彼女と出かけるようになった。
「要りません」
都筑は泣きたくなって圭一に腕時計を突っ返すと食堂から出ていった。
圭一がため息をつき、立ち上がるのがわかった。
───子供みたいなことして
あなたは呆れるのだろうか?
あなたよりも年上なのに
食堂を出ると近くの人気のない場所で壁に寄りかかる。
「都筑」
自分よりも背の高い圭一を見上げた。
「腕時計じゃだめか?」
“なんでも良いっていったじゃないか”と圭一は困った顔をする。
───好き
やっぱりまだ、こんなに好きで
嫉妬してしまうほどに
「俺の身に付けてるものならなんだって良いって」
「あんなの、ただの冗談です」
圭一は社長室でバレンタインの話題になった時、話の流れで“都筑、何かやろうか?”などと言ってきた。
だから“圭一さんの身に付けてるものが欲しい”と。
「どうせ、明日もデートなんですよね?」
───泣きたい
一人になりたい
「あれはデートなんかじゃ..」
「あなたに出会いたくなんかなかった。なんで自分ばかりこんな..」
「都筑、そんなに俺が好きなのか?」
都筑は圭一を見つめ返し瞳を揺らした。圭一のほうが何倍も辛そうにこちらを見ている。まるで、圭一の方が片思いをしているとでも言うように。
“キスも犯罪になるのかな..”
圭一は呟いたかと思うと、都筑の顎を掴む。
「じゃあ、俺のファーストキス、都筑にやるから」
「え?」
「目ぐらい閉じろよ」
何故か怒られながら目を閉じたのだった。
**
圭一のいなくなった廊下で、一人泣いた。膝を抱えて。圭一を自分のものにしたいと思った。心ごと全部。自分は彼にとって”運命の恋人”であるはずなのに。一族間で認められた存在のはずなのに、どうして振り向いてくれないのだろう。他の人のところへ行ってしまうのだろう。
「圭一さん…行かないで」
本人に伝える勇気もないのに。
「傍に居てよ…」
とめどなく溢れる涙。唇に残る温もり。胸が締め付けられて苦しい。いつか忘れられるのだろうか、この痛みは。
「他の人じゃ…イヤだ」
こんな時に兄が居てくれたなら、どんなに良かったろうか。
───あの時、好きだなんて言わなければ。
こんなに辛い想いをしなくて良かったのだろうか。その答えが分かるのは随分先の話である。
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