R18 【同性恋愛】『咎人を愛した漆黒の天使は永遠の愛を紡ぐ』

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四章 ━━━━【この世で一番愛しい人】

4♡【あの年のバレンタイン2】

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 ****♡side・都筑

 その日、都筑は圭一が大崎邸に居ることを知り、屋敷へ向かっていた。あれだけ逢いたくて待っていても来なかった人が。今日はバレンタイン。彼が行くとことは大抵決まっている。大崎邸従業員食堂前に着くと、深呼吸する。ドアを開けると、料理長の南がこちらに気づいた。彼が居るだろう方向を見ると、、圭一と目が遭いがギクリとしたようだ。暢気にカワハギを食べていることに、都筑はイラっとする。大方大里の令嬢にでも貰っただろう。

 「久隆様」
 「あ、和」
 彼の弟に声をかけるとそう呼ばれた。自分は特殊な任務の為、この頃はまだ久隆に本名を明かしていなかった。
 「いらしてたんですか」
 都筑は圭一に視線を移すと“喧嘩でもしたのか?”と疑いたくなるほど冷たい声で言い放つ。圭一はそれに対し、軽く片手をあげた。都筑の目は圭一の元にある紙袋視線を向ける。久隆は知らなかったが、二人は大分前からに振った人と振られた人の関係だった。彼は、あまり家で二人が一緒にいるのを見たことがなかったので知らなかったのである。
 「これは、久隆に貰ったんだよ」
 「何も言ってません」
 南は事情を知っているのか、ただ黙って久隆に給仕をしている。

 「つ..和」
 何かをいいかけ、圭一は言い直すと都筑に手招きをした。
 「なんですか?」
 圭一は高等部にあがると父について第一秘書となった。他にも社長秘書はもともと数人いるが正式な肩書きは彼のためにある様なものなのだ。それは副社長になるまでの間のこと。まだ学生であるのでバイト扱いではあるが。

 圭一は徐に腕時計を外すと都筑の掌に乗せた。
 「え?」
 それは圭一がそのバイト代を貯めて買った、高級腕時計である。都筑もそれを彼が凄く気に入っているのを知っていた。
 「やる」
 恐らく、久隆も。なぜ、こんなものを自分にくれるのだろうか。都筑はなんだか複雑な表情でそれを見つめた。
 「俺はこれがあるから」
 そういうと、軽く久隆からもらった紙袋を掲げ。

 ───自分が欲しいのはものではない。
 あなたが欲しいのだ。
 同情されたいわけじゃない。

 何度も屋敷から大里の令嬢と共に出かけていく姿を目撃した。彼の心は自分のものにならないと知り、絶望した。しかし自分たちはやはり”運命の恋人”なのではないか。そう思ってしまうのだ。どんなに彼を諦めようとしても諦められず、忘れることもできない。そして、変わらず圭一は優しい。どうしたら、振り向いてくれるのだろうか。

 ───どうしたら、わたしのものになってくれるのですか?
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