49 / 62
四章 ━━━━【この世で一番愛しい人】
4♡【あの年のバレンタイン2】
しおりを挟む
****♡side・都筑
その日、都筑は圭一が大崎邸に居ることを知り、屋敷へ向かっていた。あれだけ逢いたくて待っていても来なかった人が。今日はバレンタイン。彼が行くとことは大抵決まっている。大崎邸従業員食堂前に着くと、深呼吸する。ドアを開けると、料理長の南がこちらに気づいた。彼が居るだろう方向を見ると、、圭一と目が遭いがギクリとしたようだ。暢気にカワハギを食べていることに、都筑はイラっとする。大方大里の令嬢にでも貰っただろう。
「久隆様」
「あ、和」
彼の弟に声をかけるとそう呼ばれた。自分は特殊な任務の為、この頃はまだ久隆に本名を明かしていなかった。
「いらしてたんですか」
都筑は圭一に視線を移すと“喧嘩でもしたのか?”と疑いたくなるほど冷たい声で言い放つ。圭一はそれに対し、軽く片手をあげた。都筑の目は圭一の元にある紙袋視線を向ける。久隆は知らなかったが、二人は大分前からに振った人と振られた人の関係だった。彼は、あまり家で二人が一緒にいるのを見たことがなかったので知らなかったのである。
「これは、久隆に貰ったんだよ」
「何も言ってません」
南は事情を知っているのか、ただ黙って久隆に給仕をしている。
「つ..和」
何かをいいかけ、圭一は言い直すと都筑に手招きをした。
「なんですか?」
圭一は高等部にあがると父について第一秘書となった。他にも社長秘書はもともと数人いるが正式な肩書きは彼のためにある様なものなのだ。それは副社長になるまでの間のこと。まだ学生であるのでバイト扱いではあるが。
圭一は徐に腕時計を外すと都筑の掌に乗せた。
「え?」
それは圭一がそのバイト代を貯めて買った、高級腕時計である。都筑もそれを彼が凄く気に入っているのを知っていた。
「やる」
恐らく、久隆も。なぜ、こんなものを自分にくれるのだろうか。都筑はなんだか複雑な表情でそれを見つめた。
「俺はこれがあるから」
そういうと、軽く久隆からもらった紙袋を掲げ。
───自分が欲しいのはものではない。
あなたが欲しいのだ。
同情されたいわけじゃない。
何度も屋敷から大里の令嬢と共に出かけていく姿を目撃した。彼の心は自分のものにならないと知り、絶望した。しかし自分たちはやはり”運命の恋人”なのではないか。そう思ってしまうのだ。どんなに彼を諦めようとしても諦められず、忘れることもできない。そして、変わらず圭一は優しい。どうしたら、振り向いてくれるのだろうか。
───どうしたら、わたしのものになってくれるのですか?
その日、都筑は圭一が大崎邸に居ることを知り、屋敷へ向かっていた。あれだけ逢いたくて待っていても来なかった人が。今日はバレンタイン。彼が行くとことは大抵決まっている。大崎邸従業員食堂前に着くと、深呼吸する。ドアを開けると、料理長の南がこちらに気づいた。彼が居るだろう方向を見ると、、圭一と目が遭いがギクリとしたようだ。暢気にカワハギを食べていることに、都筑はイラっとする。大方大里の令嬢にでも貰っただろう。
「久隆様」
「あ、和」
彼の弟に声をかけるとそう呼ばれた。自分は特殊な任務の為、この頃はまだ久隆に本名を明かしていなかった。
「いらしてたんですか」
都筑は圭一に視線を移すと“喧嘩でもしたのか?”と疑いたくなるほど冷たい声で言い放つ。圭一はそれに対し、軽く片手をあげた。都筑の目は圭一の元にある紙袋視線を向ける。久隆は知らなかったが、二人は大分前からに振った人と振られた人の関係だった。彼は、あまり家で二人が一緒にいるのを見たことがなかったので知らなかったのである。
「これは、久隆に貰ったんだよ」
「何も言ってません」
南は事情を知っているのか、ただ黙って久隆に給仕をしている。
「つ..和」
何かをいいかけ、圭一は言い直すと都筑に手招きをした。
「なんですか?」
圭一は高等部にあがると父について第一秘書となった。他にも社長秘書はもともと数人いるが正式な肩書きは彼のためにある様なものなのだ。それは副社長になるまでの間のこと。まだ学生であるのでバイト扱いではあるが。
圭一は徐に腕時計を外すと都筑の掌に乗せた。
「え?」
それは圭一がそのバイト代を貯めて買った、高級腕時計である。都筑もそれを彼が凄く気に入っているのを知っていた。
「やる」
恐らく、久隆も。なぜ、こんなものを自分にくれるのだろうか。都筑はなんだか複雑な表情でそれを見つめた。
「俺はこれがあるから」
そういうと、軽く久隆からもらった紙袋を掲げ。
───自分が欲しいのはものではない。
あなたが欲しいのだ。
同情されたいわけじゃない。
何度も屋敷から大里の令嬢と共に出かけていく姿を目撃した。彼の心は自分のものにならないと知り、絶望した。しかし自分たちはやはり”運命の恋人”なのではないか。そう思ってしまうのだ。どんなに彼を諦めようとしても諦められず、忘れることもできない。そして、変わらず圭一は優しい。どうしたら、振り向いてくれるのだろうか。
───どうしたら、わたしのものになってくれるのですか?
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。



鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる