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四章 ━━━━【この世で一番愛しい人】
3.5♡【あの年のバレンタイン1】
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****♡side・圭一
ミノリと付き合っていた頃のバレンタインに、圭一は想いを馳せていた。
「一応、彼女という立場ですし、差し上げるべきなのでは?と思い..」
実はしろどもどろになりながらも、包みを差し出す。先ずは小さな小箱。近くにいた古川が妙な表情をして実と圭一を見比べている。
「これは、一口チョコレート。ビター味ですの」
「ほう」
といって圭一は受け取った。一応、彼氏である。
「で、これは?」
と、白いビニール袋に入った物を受け取り、軽く掲げる。
「カワハギの干物でございますわ。圭一くんがお好きと聞いて」
「なるほど」
圭一は、小箱の下に重ねた。更に袋を突きつけられたので、どうしても片手を空ける必要があったからだ。
「して、これは?」
と、袋を軽く掲げて。
「それはスルメイカでございます。弟さんもお好きと聞いて」
と、彼女。
「いや、好きなのは祖父」
と、圭一は袋を受け取りながら答えた。
「そうでしたの。勘違いを..ご免なさい」
と謝られ、良いよと笑う圭一。
「あ、あのさ」
変なやりとりに黙っていられなくなった古川が口を出そうとするが、圭一は何事もなかったかのようにカバンにしまう。彼をスルーするのはいつものこと。それができるから、親友だ。
「バレンタインだよな?」
と、いう古川の質問に、圭一は眉を潜める。
“何いってんだ、おまえ。頭おかしいのか?”と言わんばかりである。
「ホワイトデー、何が欲しい?」
と、気にせず、ミノリに問いかける圭一。古川は、“何故、カワハギ..”と呟いている。
「頂けるのであれば、なんでも」
と、彼女は微笑んだ。こういうところが楽である。
「うーん。わかった、何か考えとく」
「あ、古川くんにも日頃のお礼を」
実《みのり》は考えこんでしまった圭一をよそに、古川に向き直った。
「日頃の感謝の気持ちを込めて、福引き券とか?」
なんとなく、古川はそんな冗談を言ってみたようだ。
すると、
「いいえ、こちらです」
何故か釣具セットを渡された。
「え、カワハギ釣るところから始める感じ?」
「古川くんの好きな魚を知らなかったので」
「ちょっと待って、バレンタインって魚あげる日じゃないよね?!」
と、古川が思わず大声を出したら、
「うるせえぞ、古川」
と圭一に怒られる。まるで、どっかの誰かのようだ。しかし、圭一は、大里グループの物産部門で展開されているカワハギは美味いんだよな、と別のことを考えていた。
───そうだ、都筑には何をやろうか。
ふらなければならなかった、最愛の人。十八になったら告白しようと思っている。例え、手遅れでも。
ミノリと付き合っていた頃のバレンタインに、圭一は想いを馳せていた。
「一応、彼女という立場ですし、差し上げるべきなのでは?と思い..」
実はしろどもどろになりながらも、包みを差し出す。先ずは小さな小箱。近くにいた古川が妙な表情をして実と圭一を見比べている。
「これは、一口チョコレート。ビター味ですの」
「ほう」
といって圭一は受け取った。一応、彼氏である。
「で、これは?」
と、白いビニール袋に入った物を受け取り、軽く掲げる。
「カワハギの干物でございますわ。圭一くんがお好きと聞いて」
「なるほど」
圭一は、小箱の下に重ねた。更に袋を突きつけられたので、どうしても片手を空ける必要があったからだ。
「して、これは?」
と、袋を軽く掲げて。
「それはスルメイカでございます。弟さんもお好きと聞いて」
と、彼女。
「いや、好きなのは祖父」
と、圭一は袋を受け取りながら答えた。
「そうでしたの。勘違いを..ご免なさい」
と謝られ、良いよと笑う圭一。
「あ、あのさ」
変なやりとりに黙っていられなくなった古川が口を出そうとするが、圭一は何事もなかったかのようにカバンにしまう。彼をスルーするのはいつものこと。それができるから、親友だ。
「バレンタインだよな?」
と、いう古川の質問に、圭一は眉を潜める。
“何いってんだ、おまえ。頭おかしいのか?”と言わんばかりである。
「ホワイトデー、何が欲しい?」
と、気にせず、ミノリに問いかける圭一。古川は、“何故、カワハギ..”と呟いている。
「頂けるのであれば、なんでも」
と、彼女は微笑んだ。こういうところが楽である。
「うーん。わかった、何か考えとく」
「あ、古川くんにも日頃のお礼を」
実《みのり》は考えこんでしまった圭一をよそに、古川に向き直った。
「日頃の感謝の気持ちを込めて、福引き券とか?」
なんとなく、古川はそんな冗談を言ってみたようだ。
すると、
「いいえ、こちらです」
何故か釣具セットを渡された。
「え、カワハギ釣るところから始める感じ?」
「古川くんの好きな魚を知らなかったので」
「ちょっと待って、バレンタインって魚あげる日じゃないよね?!」
と、古川が思わず大声を出したら、
「うるせえぞ、古川」
と圭一に怒られる。まるで、どっかの誰かのようだ。しかし、圭一は、大里グループの物産部門で展開されているカワハギは美味いんだよな、と別のことを考えていた。
───そうだ、都筑には何をやろうか。
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