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四章 ━━━━【この世で一番愛しい人】
1.5♡【悲しい高校時代】
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****♡Side・圭一
───俺がモテる?都筑は一体、何を言っているんだ。
圭一は、心の中で首を傾げるとサラダに箸をつけた。そして高校時代のことを思い出す。幼なじみで、二つ上の”大里 愛花”が流した噂のお陰かK学園内では虫も寄り付かないと言っても過言ではないほどに、恋愛とは無関係だった。実際、その噂がなくてもモテなかったかもしれないが、と圭一は思う。その為、いつも愛花の妹であるミノリと初等部からの親友の古川《こがわ》とばかりつるんでいた。他に同じ学年で話をしたのは、当時やっかみから酷い噂を流され、唯一無実を疑わなかった生徒会顧問と仲の良かった、白石 奏斗。その顧問、白石両名と仲の良かった楠 和馬という生徒くらいだ。しかし、白石とは今でこそキャンパス内でも会話するようにはなったが、仲が良かったというわけではなく、楠に関しては積極的に会話をしたことがなかった。
孤立していたわけではない。圭一は、高校に入ると同時に、社長秘書として父の仕事に携わり始める。しかも、高校二年時には、生徒会副会長を務め、三年の時には風紀員長を務めた。長年友人、幼馴染みであったミノリ、古川、愛花以外に、新たに仲のいい友人を作る機会がなかったのだ。学園生活は確かに、噂のお陰で平和であった。だが、私生活はそうもいかなかったのである。
ため息をついた都筑を見て圭一は、
「都筑はまだ、俺と大里妹が付き合ってたこと気にしてる?」
と、問う。
「少し」
付き合った経緯は話したし、何もなかったという事も話した。あれは単なる契約だ。
「どうして?」
「彼女は、圭一さんのことが好きだから」
「そっか」
圭一は、ミノリに言われたことを思い出す。
『わたくしは、圭一くんには笑顔でいて欲しいと思っておりますの。この気持ちは、恋だとは思いますが、圭一くんには誰よりも幸せでいていただきたいんですの』
彼女が、契約の話を持ち出した時の言葉だ。好きな人のために、自己を犠牲に出来る彼女に、自分を重ねた。自分もまた、都筑の為に恋を諦めたから。パーティーの度に、誰かに言い寄られる圭一。傷心であるにも関わらず、苦笑いしながらも丁重にお断りする姿を、彼女は胸を痛め見ていたに違いない。圭一は、自分に近づく者たちを、”好意”があって近づいているとは思っていなかった。圭一は二十歳になると同時に、大崎グループの副社長に就任する。久隆を社長に就ける為に選んだ道だが、実質社長と変わらなかった。金銭目当てとしか思わなかったのである。
『恋人が出来れば、圭一くんに近づく者は確実に減りますわ』
それに、と彼女は続けた。
『わたくしは大里グループ社長の娘。圭一くんに集《たか》る虫を一掃できましてよ?』
断る理由など、どこにもなかった。自分の心には都筑しかいない。
「それは、知ってたよ。だから、せめてもと思って、毎週一緒にいろんなところへ遊びに行ってた」
「思い出作り…ですか?」
「そうなるのかな。俺は都筑以外との未来は、考えられないから」
彼女が自身を犠牲にして、圭一にしてくれたこと。少しは、礼として返せれば…償いになればいいと圭一は思っていたのだった。
───俺がモテる?都筑は一体、何を言っているんだ。
圭一は、心の中で首を傾げるとサラダに箸をつけた。そして高校時代のことを思い出す。幼なじみで、二つ上の”大里 愛花”が流した噂のお陰かK学園内では虫も寄り付かないと言っても過言ではないほどに、恋愛とは無関係だった。実際、その噂がなくてもモテなかったかもしれないが、と圭一は思う。その為、いつも愛花の妹であるミノリと初等部からの親友の古川《こがわ》とばかりつるんでいた。他に同じ学年で話をしたのは、当時やっかみから酷い噂を流され、唯一無実を疑わなかった生徒会顧問と仲の良かった、白石 奏斗。その顧問、白石両名と仲の良かった楠 和馬という生徒くらいだ。しかし、白石とは今でこそキャンパス内でも会話するようにはなったが、仲が良かったというわけではなく、楠に関しては積極的に会話をしたことがなかった。
孤立していたわけではない。圭一は、高校に入ると同時に、社長秘書として父の仕事に携わり始める。しかも、高校二年時には、生徒会副会長を務め、三年の時には風紀員長を務めた。長年友人、幼馴染みであったミノリ、古川、愛花以外に、新たに仲のいい友人を作る機会がなかったのだ。学園生活は確かに、噂のお陰で平和であった。だが、私生活はそうもいかなかったのである。
ため息をついた都筑を見て圭一は、
「都筑はまだ、俺と大里妹が付き合ってたこと気にしてる?」
と、問う。
「少し」
付き合った経緯は話したし、何もなかったという事も話した。あれは単なる契約だ。
「どうして?」
「彼女は、圭一さんのことが好きだから」
「そっか」
圭一は、ミノリに言われたことを思い出す。
『わたくしは、圭一くんには笑顔でいて欲しいと思っておりますの。この気持ちは、恋だとは思いますが、圭一くんには誰よりも幸せでいていただきたいんですの』
彼女が、契約の話を持ち出した時の言葉だ。好きな人のために、自己を犠牲に出来る彼女に、自分を重ねた。自分もまた、都筑の為に恋を諦めたから。パーティーの度に、誰かに言い寄られる圭一。傷心であるにも関わらず、苦笑いしながらも丁重にお断りする姿を、彼女は胸を痛め見ていたに違いない。圭一は、自分に近づく者たちを、”好意”があって近づいているとは思っていなかった。圭一は二十歳になると同時に、大崎グループの副社長に就任する。久隆を社長に就ける為に選んだ道だが、実質社長と変わらなかった。金銭目当てとしか思わなかったのである。
『恋人が出来れば、圭一くんに近づく者は確実に減りますわ』
それに、と彼女は続けた。
『わたくしは大里グループ社長の娘。圭一くんに集《たか》る虫を一掃できましてよ?』
断る理由など、どこにもなかった。自分の心には都筑しかいない。
「それは、知ってたよ。だから、せめてもと思って、毎週一緒にいろんなところへ遊びに行ってた」
「思い出作り…ですか?」
「そうなるのかな。俺は都筑以外との未来は、考えられないから」
彼女が自身を犠牲にして、圭一にしてくれたこと。少しは、礼として返せれば…償いになればいいと圭一は思っていたのだった。
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