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三章 ━━━━【君と紡ぐ永遠の愛】
8♡兄からの二通の手紙
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****♡side・都筑
愛しい弟、都筑へ。
十五歳上の今は亡き兄からの手紙はレポートの間からはらりと落ちた。一通は都筑宛て。もう一通は”いつか都筑の恋人になる人へ”と書かれている。
内容は都筑に対する優しい愛の言葉で溢れていた。どれほど弟を溺愛していたのか計り知れない。それに対し恋人になる人への手紙は淡々としていた。
『都筑は傷つきやすい子だからどうか大事にして欲しい』と括られている。
きっと、愛しい弟を誰かにやりたくは無かったのだろう。
「圭一さん」
「うん?」
「運命の相手だったら、貫くんだよと兄は…」
「貫いてくれる?」
「えっ…」
圭一の意外な言葉に都筑は驚いた。圭一は何かが吹っ切れたように優しい笑みを浮かべ、
「都筑の話、聞かせて」
ぎゅっと胸に抱き寄せられ、都筑はドキドキした。圭一の温もり、優しい笑み。今度こそ乗り越えられそうな気がした。
「圭一さん、あの…何故大里家の次女とおつき合いされたのですか?」
いきなりハードな質問だったらしく、圭一は思いっきりむせる。
「は?!」
むせた後の第一声が何故かそれだ。いったい何故そんな反応なのかとじっと圭一を見上げる。
「聞きたいわけ?」
「聞きたいです」
「なんで?」
なんでって、おかしくない?
普通聞きたいよね?
え、おかしいの自分?!
都筑は何故か混乱したのだった。
****
「んッ?」
圭一の手が髪に触れ、驚いていると胸に抱き寄せられた。
「圭一さ…」
ちゅっと口づけられ唇を塞がれる。言いたくないから誤魔化しているのかと思ったら悲しくなって胸を押しのける。
「なんでッ…」
「都筑」
涙目で見上げるが、彼は困った表情をして都筑を見つめていた。
「大里とはなんでもないよ」
「でも、恋人だったんですよね?」
「あれは…」
都筑が圭一に告白してすぐだったから余計に傷ついて苦しんだというのに。
「そういう契約をしただけだ」
「契約…」
大崎家で行われるパーティには圭一の伴侶の座を狙う輩が多いことは知っている。時代は同性婚可能な時代であったが浮いた噂の一つもない圭一の恋愛対象は異性だと思われていた為、自分の娘を婚約者にという声が耐えなかったことも。圭一は大崎グループの時期副社長。玉の輿狙いというわけである。
「あのあとに行われたパーティで大里が言ったんだよ。お互い平和に高校生活を終えたいねと」
大里グループの令嬢であるミノリもまた同じ境遇だった為、二人で高校卒業まで恋人のフリをしようと取り決めをしたのだった。圭一としては都筑以外の相手と、どうこうなるつもりはない。
「そうだったんですか」
「ごめん」
圭一は再び都筑を抱き締める。
「今度は俺の番だよ、都筑」
都筑は一体何を聞かれるのだろうかとドキマギする。
「佐倉と何回した?どうだった?」
「は?!」
今度は都筑が驚く番であった。
****
もしかして何か誤解を受けているということなのだろうか?
都筑は混乱した。自分が佐倉と関係を持ったのは泥酔していて同意ではない。圭一は自分と佐倉がつきあっているような誤解をしていたような気もする。しかし、何故そんな誤解を受けているのかも定かではない。
「都筑が佐倉の部屋から出てくる前、南がさ」
「はい」
「佐倉が都筑を抱いたと自慢していたらしい」
「は?!そんなのデタラメですッ」
「そうか…」
初めてだったのに自分の不注意で…。
「佐倉、良かった?」
「記憶にありません」
「…」
まだ疑っているのかと圭一をじっと見つめていたら不意に押し倒された。
「抱いていい?」
「!」
ずるい。そういうのは。
ドキドキが止まらない。しかしここで流されてはいけない。聞かなきゃいけないことがある。
「誤解は解けたのですか?」
「ん。嫉妬は収まりそうには無いけど。真咲さんからの手紙を見たら、そんなこともいっていられないかなって」
『君がもし、都筑の運命の相手だったら…離れないでずっと都筑の傍に居てあげて欲しい』
書いたのは亡くなる二年前。圭一の父と恋人に戻ってからだ。愛する人と離れることがどれほど辛かったか後悔したのかが、何枚にも渡り綴られていた。
愛しい弟、都筑へ。
十五歳上の今は亡き兄からの手紙はレポートの間からはらりと落ちた。一通は都筑宛て。もう一通は”いつか都筑の恋人になる人へ”と書かれている。
内容は都筑に対する優しい愛の言葉で溢れていた。どれほど弟を溺愛していたのか計り知れない。それに対し恋人になる人への手紙は淡々としていた。
『都筑は傷つきやすい子だからどうか大事にして欲しい』と括られている。
きっと、愛しい弟を誰かにやりたくは無かったのだろう。
「圭一さん」
「うん?」
「運命の相手だったら、貫くんだよと兄は…」
「貫いてくれる?」
「えっ…」
圭一の意外な言葉に都筑は驚いた。圭一は何かが吹っ切れたように優しい笑みを浮かべ、
「都筑の話、聞かせて」
ぎゅっと胸に抱き寄せられ、都筑はドキドキした。圭一の温もり、優しい笑み。今度こそ乗り越えられそうな気がした。
「圭一さん、あの…何故大里家の次女とおつき合いされたのですか?」
いきなりハードな質問だったらしく、圭一は思いっきりむせる。
「は?!」
むせた後の第一声が何故かそれだ。いったい何故そんな反応なのかとじっと圭一を見上げる。
「聞きたいわけ?」
「聞きたいです」
「なんで?」
なんでって、おかしくない?
普通聞きたいよね?
え、おかしいの自分?!
都筑は何故か混乱したのだった。
****
「んッ?」
圭一の手が髪に触れ、驚いていると胸に抱き寄せられた。
「圭一さ…」
ちゅっと口づけられ唇を塞がれる。言いたくないから誤魔化しているのかと思ったら悲しくなって胸を押しのける。
「なんでッ…」
「都筑」
涙目で見上げるが、彼は困った表情をして都筑を見つめていた。
「大里とはなんでもないよ」
「でも、恋人だったんですよね?」
「あれは…」
都筑が圭一に告白してすぐだったから余計に傷ついて苦しんだというのに。
「そういう契約をしただけだ」
「契約…」
大崎家で行われるパーティには圭一の伴侶の座を狙う輩が多いことは知っている。時代は同性婚可能な時代であったが浮いた噂の一つもない圭一の恋愛対象は異性だと思われていた為、自分の娘を婚約者にという声が耐えなかったことも。圭一は大崎グループの時期副社長。玉の輿狙いというわけである。
「あのあとに行われたパーティで大里が言ったんだよ。お互い平和に高校生活を終えたいねと」
大里グループの令嬢であるミノリもまた同じ境遇だった為、二人で高校卒業まで恋人のフリをしようと取り決めをしたのだった。圭一としては都筑以外の相手と、どうこうなるつもりはない。
「そうだったんですか」
「ごめん」
圭一は再び都筑を抱き締める。
「今度は俺の番だよ、都筑」
都筑は一体何を聞かれるのだろうかとドキマギする。
「佐倉と何回した?どうだった?」
「は?!」
今度は都筑が驚く番であった。
****
もしかして何か誤解を受けているということなのだろうか?
都筑は混乱した。自分が佐倉と関係を持ったのは泥酔していて同意ではない。圭一は自分と佐倉がつきあっているような誤解をしていたような気もする。しかし、何故そんな誤解を受けているのかも定かではない。
「都筑が佐倉の部屋から出てくる前、南がさ」
「はい」
「佐倉が都筑を抱いたと自慢していたらしい」
「は?!そんなのデタラメですッ」
「そうか…」
初めてだったのに自分の不注意で…。
「佐倉、良かった?」
「記憶にありません」
「…」
まだ疑っているのかと圭一をじっと見つめていたら不意に押し倒された。
「抱いていい?」
「!」
ずるい。そういうのは。
ドキドキが止まらない。しかしここで流されてはいけない。聞かなきゃいけないことがある。
「誤解は解けたのですか?」
「ん。嫉妬は収まりそうには無いけど。真咲さんからの手紙を見たら、そんなこともいっていられないかなって」
『君がもし、都筑の運命の相手だったら…離れないでずっと都筑の傍に居てあげて欲しい』
書いたのは亡くなる二年前。圭一の父と恋人に戻ってからだ。愛する人と離れることがどれほど辛かったか後悔したのかが、何枚にも渡り綴られていた。
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