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三章 ━━━━【君と紡ぐ永遠の愛】
2.5 [憎しみ]
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****♡Side・圭一
佐倉はそんなにまで俺が憎かったのだろうか?
都筑のきめ細かい肌に浮かび上がる無数の赤い痣。
なんでこんな可哀想なことをするんだ?
圭一には全く理解が出来なかった。
本来ならば晴れて恋人同士になったことだし、契りを交わしたいなどと考えていた。圭一は誠実な男である。
だから、動画のことを思い出すとそんな気分にはなれない。痛がって、嫌がってあんなに泣いている都筑を思い出すと手を出すことが躊躇われた。
以前都筑が佐倉と性的な関係なことを知り、嫉妬から酷いことをしたが、都筑が痛がらないようにと細心の注意を払った。
それなのに、あんな姿を見てしまったら何も出来やしない。
けれど、都筑は愛とは求められることだと思っているだろう。今の都筑の表情を見れば容易に想像がつく。
”どうして何もしてこないの?”彼はきっと疑問に思い、だからこそまた泣きそうな顔をするのだ。
たまらなく愛しい。
どうすれば伝わるのだろう?
自分は口下手だ。
安心させてあげたいのに、気の利いたことの一つも言えない。
「都筑、泣かないで」
しくしくと泣き出してしまう都筑に、自分の無力さを感じた。
「私はそんなに魅力がないですか?それとも、他の人としてしまったから..汚れているから..」
「都筑を大切にしたいだけだよ」
「そんなこと言って、一度も圭一さんは抱いてくれたことがないッ」
ああ..。
理性なんてクソ食らえ。
都筑を不安にしかしてやれない自分なんて。
都筑にこんなことを言わせてしまう自分が嫌でたまらない。
「うぅっ..」
「俺だって都筑を抱きたいよ。我慢してるだけなのに..」
佐倉が憎かった。
本当に憎かった。
****
「都筑、俺はね。真咲さんの葬儀で初めて都筑と逢った時からずっと、都筑のことが好きなんだよ?」
「え?」
しくしくと泣いている都筑が顔をあげた。
「都筑が葬儀でぼろぼろ泣いているのを見て、俺が守ってあげたいって思った」
年のかなり離れた兄を都筑がどれだけ慕っていたのかが伝わって来て切ない。自分にも可愛い弟がいたから、余計に辛かった。
「早く都筑の身長も追い抜いて、頼りがいのある大人になりたかったよ。再会して、都筑が自分を好いてくれたのが嬉しかった」
しかし、法律が弊害となった。
25歳の都筑と、当時高校二年生で誕生日前だった圭一は16歳。つき合うことが出来なかった。誕生日が来ていても17。年齢が足りないのである。都筑はあまり考えていなかったようだが。
いくら同性婚が可能でも、18歳未満では未成年者略取などの罪に問われる場合がある。職場でしか会えないような関係だった。
「俺がどんな想いで都筑を諦めようとしたのか分かってよ」
辛かった。
大崎家の人間と姫川家の人間は代々惹かれあう運命にありながら結ばれることはない。それは言い伝えのように、大崎家では言われてきたことだった。
理由は簡単だ。
姫川家の人間は素直で騙されやすくメンタルが弱い、大崎家の人間は一途でありながら、相手の幸せを優先してしまう。そんな性格を代々受け継いで来てしまっていたからだ。
我が父と、都筑の兄である真咲もまた、騙され引き裂かれた二人である。しかし、我が弟は辛い想いをし乗り越えて結ばれた。だから自分ももう一度頑張ってみようかと思えたのだ。手遅れではあったが、諦めなかったから今がある。
「もう、失いたくないんだよ」
「圭一さん..」
「嫌だと言われても、離せない」
****
「でも、三日しかないのに...」
都筑は俯いた。
圭一は都筑の胸の飾りに目をやる。
執拗に弄られたのであろう、そこはぷっくりと赤く腫れ上がっていた。これ以上何かしたら皮膚が破けて血が滲んでしまいそうで。
「都筑、これからいくらでも一緒に居られるし、なるべく時間も作るからそんなこと言わないで」
愛しい、愛しいと言うように抱き締める。
どう説得すれば納得してくれるのだろう?
何をしてあげたらいいのだろう?
抱き締める腕に心なしか力が入り慌てた。
ふと自分の左手が視界に入る。
そっか。
うん、そうだな。
自分に出来ることなんて、微々たるものだ。その中で、彼を喜ばせてあげられそうなことを探すしかないのだ。
「都筑のそれさ、ペアリングなんだ」
「これですか?」
それは少しの間、都筑を縛る為に無理矢理彼の指に着けさせたもので、期間が終わったら思い出として手元に置こうと思っていたものであった。
「うん」
都筑は左手をかざし、キラキラ輝くプラチナのリングを見つめた。
「都筑を解放する時に、返して貰おうと思ってた」
その言葉に都筑が顔を歪める。
「返したくない」
また泣いてしまうのではないかと圭一はハラハラした。
都筑ときたら、10コ近く上であるにも関わらず、素直で純粋で可愛くて仕方がない。甘えん坊で、泣き虫で。しかも、そんな表情を見せる相手が自分だけときたものだから余計に愛しい。
「返さないで、ずっと」
「ほんとに?」
「うん。そうじゃなくてペアの片割れ、俺もしていいかな?」
圭一が都筑にそう問うと、ぱあああッと明るい表情を見せる。圭一はその表情の意味が判らず首を傾げるしかなかった。
佐倉はそんなにまで俺が憎かったのだろうか?
都筑のきめ細かい肌に浮かび上がる無数の赤い痣。
なんでこんな可哀想なことをするんだ?
圭一には全く理解が出来なかった。
本来ならば晴れて恋人同士になったことだし、契りを交わしたいなどと考えていた。圭一は誠実な男である。
だから、動画のことを思い出すとそんな気分にはなれない。痛がって、嫌がってあんなに泣いている都筑を思い出すと手を出すことが躊躇われた。
以前都筑が佐倉と性的な関係なことを知り、嫉妬から酷いことをしたが、都筑が痛がらないようにと細心の注意を払った。
それなのに、あんな姿を見てしまったら何も出来やしない。
けれど、都筑は愛とは求められることだと思っているだろう。今の都筑の表情を見れば容易に想像がつく。
”どうして何もしてこないの?”彼はきっと疑問に思い、だからこそまた泣きそうな顔をするのだ。
たまらなく愛しい。
どうすれば伝わるのだろう?
自分は口下手だ。
安心させてあげたいのに、気の利いたことの一つも言えない。
「都筑、泣かないで」
しくしくと泣き出してしまう都筑に、自分の無力さを感じた。
「私はそんなに魅力がないですか?それとも、他の人としてしまったから..汚れているから..」
「都筑を大切にしたいだけだよ」
「そんなこと言って、一度も圭一さんは抱いてくれたことがないッ」
ああ..。
理性なんてクソ食らえ。
都筑を不安にしかしてやれない自分なんて。
都筑にこんなことを言わせてしまう自分が嫌でたまらない。
「うぅっ..」
「俺だって都筑を抱きたいよ。我慢してるだけなのに..」
佐倉が憎かった。
本当に憎かった。
****
「都筑、俺はね。真咲さんの葬儀で初めて都筑と逢った時からずっと、都筑のことが好きなんだよ?」
「え?」
しくしくと泣いている都筑が顔をあげた。
「都筑が葬儀でぼろぼろ泣いているのを見て、俺が守ってあげたいって思った」
年のかなり離れた兄を都筑がどれだけ慕っていたのかが伝わって来て切ない。自分にも可愛い弟がいたから、余計に辛かった。
「早く都筑の身長も追い抜いて、頼りがいのある大人になりたかったよ。再会して、都筑が自分を好いてくれたのが嬉しかった」
しかし、法律が弊害となった。
25歳の都筑と、当時高校二年生で誕生日前だった圭一は16歳。つき合うことが出来なかった。誕生日が来ていても17。年齢が足りないのである。都筑はあまり考えていなかったようだが。
いくら同性婚が可能でも、18歳未満では未成年者略取などの罪に問われる場合がある。職場でしか会えないような関係だった。
「俺がどんな想いで都筑を諦めようとしたのか分かってよ」
辛かった。
大崎家の人間と姫川家の人間は代々惹かれあう運命にありながら結ばれることはない。それは言い伝えのように、大崎家では言われてきたことだった。
理由は簡単だ。
姫川家の人間は素直で騙されやすくメンタルが弱い、大崎家の人間は一途でありながら、相手の幸せを優先してしまう。そんな性格を代々受け継いで来てしまっていたからだ。
我が父と、都筑の兄である真咲もまた、騙され引き裂かれた二人である。しかし、我が弟は辛い想いをし乗り越えて結ばれた。だから自分ももう一度頑張ってみようかと思えたのだ。手遅れではあったが、諦めなかったから今がある。
「もう、失いたくないんだよ」
「圭一さん..」
「嫌だと言われても、離せない」
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「でも、三日しかないのに...」
都筑は俯いた。
圭一は都筑の胸の飾りに目をやる。
執拗に弄られたのであろう、そこはぷっくりと赤く腫れ上がっていた。これ以上何かしたら皮膚が破けて血が滲んでしまいそうで。
「都筑、これからいくらでも一緒に居られるし、なるべく時間も作るからそんなこと言わないで」
愛しい、愛しいと言うように抱き締める。
どう説得すれば納得してくれるのだろう?
何をしてあげたらいいのだろう?
抱き締める腕に心なしか力が入り慌てた。
ふと自分の左手が視界に入る。
そっか。
うん、そうだな。
自分に出来ることなんて、微々たるものだ。その中で、彼を喜ばせてあげられそうなことを探すしかないのだ。
「都筑のそれさ、ペアリングなんだ」
「これですか?」
それは少しの間、都筑を縛る為に無理矢理彼の指に着けさせたもので、期間が終わったら思い出として手元に置こうと思っていたものであった。
「うん」
都筑は左手をかざし、キラキラ輝くプラチナのリングを見つめた。
「都筑を解放する時に、返して貰おうと思ってた」
その言葉に都筑が顔を歪める。
「返したくない」
また泣いてしまうのではないかと圭一はハラハラした。
都筑ときたら、10コ近く上であるにも関わらず、素直で純粋で可愛くて仕方がない。甘えん坊で、泣き虫で。しかも、そんな表情を見せる相手が自分だけときたものだから余計に愛しい。
「返さないで、ずっと」
「ほんとに?」
「うん。そうじゃなくてペアの片割れ、俺もしていいかな?」
圭一が都筑にそう問うと、ぱあああッと明るい表情を見せる。圭一はその表情の意味が判らず首を傾げるしかなかった。
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