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二章 ━━━━【その恋のゆくえ】
5*圭一と都筑
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****♡side・都筑
『もうすぐ解放してやるよ』
今、なんて?
また会えなくなる?
「っ..」
キラキラ光る都筑の左手薬指の指輪。
形のあるもので都筑を縛ったはずの圭一は、タイムリミットがあることを明白にした。
正直、圭一はほとんど大崎邸に帰って来たところを見たことが無かった。超多忙なのである。それを知らずに待っていたことは何度もあった。それほど恋い焦がれ、逢いたくてたまらなくて。だから好きだと想いを伝えた。フラれてしまったけれど。
あの頃のこと思い出して切なくなる。
好きだった。
ホントに好きだった。
会いたくても会えなくて、ずっと待ってた。
けれど、どんなに大崎邸で待っていても圭一さんは帰って来なかった。
二年…。
手遅れになってから圭一は突然やって来て都筑の心を掻き乱し、またいなくなるというのか。
少ない時間を戯れのために..
いや、自分との時間として使ったというのか?
このチャンスを逃したらきっと、もう圭一は側に居てくれない。そういうことなのだろうか?
****
今、手を放したら後悔するよ。
ねえ、また後悔するの?
後悔してもいいの?
都筑の心を揺さぶる声が聞こえた。
急激に頭の芯が冷えていくような気がした。
「なんだ?どうした?」
圭一の服の裾を思わず掴むと優しい瞳を向けられ、都筑は心臓をぎゅっと掴まれたようになった。
「また、いなくなるんですか?」
「しょうがないだろ、仕事なんだから」
「そんなの嫌です」
なんだよ、酔いが醒めたのか?と圭一が苦笑いをする。
「嫌..行かないで」
『都筑は、諦めちゃダメだよ。好きな人が出来たら貫ぬくんだよ?俺みたいに後悔しないで』
亡き兄に言われた言葉を思い出す。
自分は弱いから、ダメだった。
「圭一さん..」
あなたはきっと許してはくれない。
他の男に抱かれたヤツなんて。
「認めたら、側にいてくれますか?」
それでも、もう一度だけ。
あなたを好きになってもいいですか?
この気持ちに素直になってもいいですか?
「都筑?」
「あなたが好き」
都筑は驚きに目を見開く圭一の顔を、じっと見つめていた。
****
「都筑、それは同情?それとも、愛情?」
圭一は、考え事をしていたようでしばらくしてそう都筑に質問をした。
「何故、同情なんてしなければならないのですか?」
「何故って、都筑は佐倉とつき合っているんだろ?」
えええええ?!
自分のものだと公言したのはあなたですよね?
でも佐倉には話さなきゃいけない。
まだ、返事をしていない。
「ちゃんとしたら、一緒に居てくれますか?側に置いて貰えますか?」
都筑の言葉に圭一は戸惑っているように見えた。
「ホントにいいのか?俺で」
「圭一さんがいい」
そう言うと、圭一は優しく微笑んだ。
「明日から親父の出張についていかないといけないんだ。一緒に来るか?」
圭一は頬杖をつくと都筑をじっと見つめて。
「何時に出るのですか?」
都筑はそれまでに片付けて置きたいと思った。
中途半端なまま圭一の側にいたくなかった。
「朝早いよ」
都筑は服を着ると部屋を出る準備をする。
「どこへ行く気だ?」
「佐倉と話をしてきます。ちゃんとケジメをつけてきます」
「一人で大丈夫なのか?」
圭一の目は心配だと言っていた。
「これくらい、一人で大丈夫です」
都筑は圭一に自分の気持ちを信じて欲しかった。ちゃんとしたらきっと圭一はもっと自分を見てくれるのではないかと安易に行動してしまった。
そして、また後悔するのだ。
どうしていつもこうなのだろう?
佐倉がそれを簡単に許しはしないなどと、都筑は考えもしなかった。せめて、つきあっているわけでないことを話していたなら。
『もうすぐ解放してやるよ』
今、なんて?
また会えなくなる?
「っ..」
キラキラ光る都筑の左手薬指の指輪。
形のあるもので都筑を縛ったはずの圭一は、タイムリミットがあることを明白にした。
正直、圭一はほとんど大崎邸に帰って来たところを見たことが無かった。超多忙なのである。それを知らずに待っていたことは何度もあった。それほど恋い焦がれ、逢いたくてたまらなくて。だから好きだと想いを伝えた。フラれてしまったけれど。
あの頃のこと思い出して切なくなる。
好きだった。
ホントに好きだった。
会いたくても会えなくて、ずっと待ってた。
けれど、どんなに大崎邸で待っていても圭一さんは帰って来なかった。
二年…。
手遅れになってから圭一は突然やって来て都筑の心を掻き乱し、またいなくなるというのか。
少ない時間を戯れのために..
いや、自分との時間として使ったというのか?
このチャンスを逃したらきっと、もう圭一は側に居てくれない。そういうことなのだろうか?
****
今、手を放したら後悔するよ。
ねえ、また後悔するの?
後悔してもいいの?
都筑の心を揺さぶる声が聞こえた。
急激に頭の芯が冷えていくような気がした。
「なんだ?どうした?」
圭一の服の裾を思わず掴むと優しい瞳を向けられ、都筑は心臓をぎゅっと掴まれたようになった。
「また、いなくなるんですか?」
「しょうがないだろ、仕事なんだから」
「そんなの嫌です」
なんだよ、酔いが醒めたのか?と圭一が苦笑いをする。
「嫌..行かないで」
『都筑は、諦めちゃダメだよ。好きな人が出来たら貫ぬくんだよ?俺みたいに後悔しないで』
亡き兄に言われた言葉を思い出す。
自分は弱いから、ダメだった。
「圭一さん..」
あなたはきっと許してはくれない。
他の男に抱かれたヤツなんて。
「認めたら、側にいてくれますか?」
それでも、もう一度だけ。
あなたを好きになってもいいですか?
この気持ちに素直になってもいいですか?
「都筑?」
「あなたが好き」
都筑は驚きに目を見開く圭一の顔を、じっと見つめていた。
****
「都筑、それは同情?それとも、愛情?」
圭一は、考え事をしていたようでしばらくしてそう都筑に質問をした。
「何故、同情なんてしなければならないのですか?」
「何故って、都筑は佐倉とつき合っているんだろ?」
えええええ?!
自分のものだと公言したのはあなたですよね?
でも佐倉には話さなきゃいけない。
まだ、返事をしていない。
「ちゃんとしたら、一緒に居てくれますか?側に置いて貰えますか?」
都筑の言葉に圭一は戸惑っているように見えた。
「ホントにいいのか?俺で」
「圭一さんがいい」
そう言うと、圭一は優しく微笑んだ。
「明日から親父の出張についていかないといけないんだ。一緒に来るか?」
圭一は頬杖をつくと都筑をじっと見つめて。
「何時に出るのですか?」
都筑はそれまでに片付けて置きたいと思った。
中途半端なまま圭一の側にいたくなかった。
「朝早いよ」
都筑は服を着ると部屋を出る準備をする。
「どこへ行く気だ?」
「佐倉と話をしてきます。ちゃんとケジメをつけてきます」
「一人で大丈夫なのか?」
圭一の目は心配だと言っていた。
「これくらい、一人で大丈夫です」
都筑は圭一に自分の気持ちを信じて欲しかった。ちゃんとしたらきっと圭一はもっと自分を見てくれるのではないかと安易に行動してしまった。
そして、また後悔するのだ。
どうしていつもこうなのだろう?
佐倉がそれを簡単に許しはしないなどと、都筑は考えもしなかった。せめて、つきあっているわけでないことを話していたなら。
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