R18 【同性恋愛】『咎人を愛した漆黒の天使は永遠の愛を紡ぐ』

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二章 ━━━━【その恋のゆくえ】

3*圭一と都筑

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 ****♡side・都筑

「ひッ!」
 その人影に都筑は思わず声をあげる。
 佐倉の部屋は大崎邸の敷地内の宿舎にあった。
 大崎邸にすら滅多に帰らないその人が腕組みをし、壁に寄りかかる。

 時刻は二時。

「都筑」
 声音で相手が怒っていることが伝わってきた。
「な、なんですか?」
「話がある」
 夜中の二時に、他人の部屋の前で待ち伏せをするその人は大崎家長男である“大崎 圭一”であった。
 大学生でありながら社長の第一秘書であり、都筑にとっては職場の先輩にあたる。
「あのッ」
 手首を掴まれ宿舎の外へ連れて行かれた。
「圭一さんッ」

 都筑にとっては初恋の相手でもある。
 彼は、久隆とは異なり父親似でがっちり体型で背も高くキリッとした端正な顔立ちをしていた。
「乗れ」
 言葉が少ないのは兄弟と言ったところか。
「早くしろよ」

 都筑は彼に逆らうことができなかった。
 圭一に言われるまま車の助手席に乗り込む。
「佐倉とどういう関係?」
 冷静なトーン。車は恐らく彼の別宅であるマンションに向かっている。
「同僚です」
「ふぅん?」
 都筑は嘘をついているわけではなかった。

「同僚とセックスするのか?」
「!」
「首」
 痕がついてる。と、圭一が眉を潜めた。
 都筑は首を押さえると青ざめてゆく。

 会いたかったはずの圭一が都筑は怖くてたまらないのだ。
 今さら独占欲を向けられても困る。
 もう、手遅れなのに。

 そうこうしているうちに都筑たちを乗せた車は、彼のマンションに着いていた。

 ****

「やめてくださいッ!圭一さんッ」
「やめろ?誰に向かって口を聞いてるんだよ」
「いやだ..」
 酔いの残った身体では抵抗も虚しく、全裸でベッドの上。手足をなんなく拘束されてしまっていた。
「うぅんッ」
「いや?どの口が言ってるんだ?」
 つつつッと、彼の指先が胸を滑る。

「この、淫乱秘書が」
 社長秘書になって二年。自分が彼に想いを告げたのは二年前、二十五の時。久隆が中学二年、圭一が高校二年の時だった。その頃すでに圭一は社長に付いて色々勉強をしているところで。職歴は自分の方が上でも彼が先輩なのはその為である。

「やめてください!怖い..」
 彼は眉を寄せ険しい顔をしながら太いバイブにコンドームを被せていた。アナル用ではないそれに都筑は怯えた。

 彼に初めて逢ったのは、兄の葬儀の時である。
 第一印象は、弟を溺愛する優しい兄という感じであったが、数年して再会した彼にとてつもなく惹かれてしまった。

 年下でまだ高校生にも関わらず、自分よりしっかりしていて面倒見が良かった。
 しかも、モデルばりのイケメン長身である。
 そこで都筑は自分の恋愛対象が同性であることに気づいた。

 25歳にして初恋。
 モテないわけではなかったが、最愛の兄を亡くした為か心が人に向かなくなってしまったのだと思っていた。そうではなく、自分を恋愛対象としてくれる相手が異性ばかりだったからだと納得した。

 それは致し方ない。
 自分は兄のように美人ではないし、抱かれることがピンと来ないような長身でもあった。

「たかが二年程度で心変わりするんだな」
「振られても想い続けろと言うのですか?」
 それは精一杯の強がり。トロリと奥が湿ってゆくのを感じた。圭一が都筑の秘部にこれでもかというほどジェルを塗り込めているからである。
「淫乱秘書様がどうやって男を誘ってるのか、お手並み拝見だな」
「いやだッ」
「大人なんだろ?何故俺が都筑の想いを受け止められなかったのか少しは考えろよ。バカが」
「い..やッ..」

 大してほぐしもせず圭一は都筑の秘部にバイブを押し込めてゆく。
「ほら、入るじゃないかよ」
「うぅぅ..」
「ほら、腰ふってよがって見せろ」
 圭一の前で嫌らしく奥にバイブを咥えこむ姿態を想像して都筑は泣きたくなった。

 好きなのに!
 どうして今さら..
 なんでもっと早く来てくれなかったのですか?
 誘ってなんていないのに!
 初めてだったのに..

 ****

「抜いてくださ..んんんッ..はぁッ」
「誰がお前の願いを聞いてやると言った?」
「圭一さんッ」
 情けなさに涙が伝うと、何故か腕を組んで眺めているだけだった圭一が満足気に都筑の顔を覗き込む。
「いいね、そそるよ都筑」
「なんでッ..こんなことッ..あんッ..やぁッ」
「これ、試してみようか?」
 圭一は都筑から離れると、小箱から尿道用のメタルボールを取り出した。湾曲したシリコン部分はぺニスに被せられるもので真ん中に長いメタルボールなるものがついている。どうやら電気が流れる仕様らしくコードもついていた。

「いやだ!怖い..痛いのは嫌です!」
 都筑は必死だった。

 尿道に何か入れるなんて!

「俺を怒らせておいて、優しくされたいわけ?図々しいにもほどがあるよ」

 そんな無茶苦茶なッ!

「そうだな、都筑が俺のものになるなら許してやるよ」
「!?」
「ほら、早く返事しないと入れるぞ」
「いやだああああッ」
「お前に自由なんてないんだよ」
 ヌルリと、秘部からバイブが引き抜かれる。そして都筑を拘束していたものがほどかれ、代わりに左手薬指に指輪が嵌められた。都筑はぼろぼろと涙を溢しながら圭一を見上げる。
「これ..は?」
「外したら許さない」
 圭一に顎を掴まれ口づけられた。

「淫乱な秘書様は俺だけじゃ足りないだろうから、いくら男遊びしても許してやる」
「何を言って...」
「だが、忘れるなよ。都筑は俺のものだ」
 ”今日も仕事だ、寝ろ”と言われ、都筑は拍子抜けする。てっきり圭一に抱かれるものだと思っていたから。

 抱いてくれないの?
 忘れさせてくれないの?

 ****

 そういえばと、都筑の厭らしい姿態を見ても彼が冷静だったことを思い出す。だが、都筑の奥はバイブのせいで熱いままだった。

 酷い。
 こんな中途半端なことするなんて。

「なんだ、寝ないのか?ほら、なにもしないから来いよ」
 圭一はベッドに横になると、座り込んでいる都筑に向かってポンポンと隣を叩く。都筑は立ち上がったままの自分自身と圭一を交互に見つめた。それを圭一は一瞥しただけで不思議そうな顔をする。

 なんて人だ!
 分かってるくせにッ。

 圭一は、熱を持てあまし眉を寄せる都筑に気づいていながらわざと知らないふりをしているのだ。

「なんだよ?」

 恨みがましい目で圭一を見ていたら、彼はふっと笑った。

「男ってのはな、一度快感を覚えたらその快感が欲しくて欲しくて堪らなくなるんだよ。どんなに清楚なふりしていても同じなんだよ、都筑」

 そんなんじゃないのに 
 私が欲しいのは..

「自慰して見せろよ、都筑」
「えっ」
「俺をその気に出来たら抱いてやる」
 都筑は躊躇いながらも自分自身に指を絡めた。

 ホントに抱いてくれる?
 ねえ、圭一さん..

 ****

 ━━━━━━━━━━━━━━それは日曜日

「おはようございます」
 車に乗り込むと、後部座席には既に不機嫌そうな圭一が居た。
「お兄ちゃん、なんで着いてきたの?」
 社長がとても不思議そうな顔をしている。
「うっさい。親父、助手席!都筑、ここ」
「僕、社長なのに..」
 社長はしぶしぶ助手席に乗り込むが、社長専属の運転手がギョッとした。

「あのう..」
 圭一はいつにも増して不機嫌である。
「なんだ」
「いえ」
 都筑は萎縮した。
 触らぬ神に祟りなしとはこのことだ。と、思いながら。
「こんなのとお見合いするだなんて」
 圭一は、ムッとしながら見合い写真を投げて寄越す。
 中を開いて見ると、美しい女性が微笑していた。

 これの何が気に入らないのだろうか?

「魔性の女だぞ。写真映りがいい女なんて」
「お兄ちゃん、文句言わないでよ」
 社長が困り顔で合いの手を入れてくる。
「それに、都筑は断るんだからそんなにプンスカしないの」
「当然だろう?都筑は俺のものだ」

 ますます面倒なことになりそうだ、と都筑は頭を抱えるのだった。

 ****

「また、そんなに呑んで」
 人の居なくなった従業員食堂で、都筑は強い酒を煽りながら南に悩みを打ち明けていた。

「こんなの、呑まなきゃやってられないッ」

 初恋の人に振られ二年も引きずって、他の男にレイプされ、初恋の相手に今さら私物扱いされる。
 その上、ただの性欲の捌け口...に、すらされないとは。

「振ったクセにッ..今さらなんで」

 南には、その理由がわかっていた。
 二年前の圭一の年齢を考えればわかることで、泣く泣く圭一は都筑を突き放したのだ。
 やっと受け入れることが出来るようになったと思ったらすでに他の男に寝取られているなんてやりきれないだろう。
 正確には寝取られたわけではないが。

 しかし、南は思っていた。
 最後に笑うのは自分だと。

「都筑」

 南が頬杖をつき、都筑を眺めていると都筑の悩みの種が仕事を終えてやってくる。
 勉強と仕事を両立した上に、年上の酔っぱらいの面倒まで見るとは。

「圭一さんがいるぅ」
「酔っぱらいが。上行くぞ」
 圭一は都筑の腕を肩にかけると千鳥足の都筑と共に食堂を出てゆくのだった。
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