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一章 ━━━━【咎人を愛した漆黒の天使】
3*過ちの代償
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****♡Side・都筑
****回想1
思い出は辛いことばかり。
━━━恋は打ち砕かれ、追い討ちをかけられた。
数日後、圭一が同級生の女子生徒と付き合い始めたことを知った。
昼間は、久隆の依頼を受け資料作りに奮闘していたため考えずに居られたが、夜は大崎邸の従業員食堂に入り浸っていた。
圭一が滅多に大崎邸に帰ることが出来ないことは知っていたが、一目でいいから会いたくて入り浸っているうちに、大崎邸の専属料理長の南と仲良くなっていった。
何がきっかけだったろうか?
久隆の専属運転手の佐倉と話すようになったのは。
気づけば、圭一と一緒にいられなくなってから、二年近くが経っており、圭一は大学生になっていた。
「都筑、そう言えば」
「はい?」
「圭一くんから貰った腕時計はどうしたんだ?」
それは、圭一が高校二年の時のバレンタインの時に貰った腕時計のことであった。都筑の腕には腕時計ではなく、銀のブレスレットが巻かれていた。これは、今年の..高校卒業前のバレンタインに圭一がくれたものだった。
圭一は、高校卒業と同時に恋人と別れた。あれは偽装なのではないか?と、邸内で噂されている。
相手はあの大里グループの令嬢である。
「高価なものなので、飾ってあります」
あの日、圭一は口づけをくれた。
恋人がいるくせに、どうして優しくするのだろう?
「圭一は、不器用だな」
南はそんなことを言った。
「都筑」
南と話をしていたところに、背後から声をかけられ、ドキリとしたが、佐倉であった。
「なんで、残念そうなんだ?」
****回想2
忘れなきゃいけないのだろうか?
ブレスレットを見つめる。
『都筑、あのさ..いや、なんでもない』
何を言いかけたのだろうか?
抱き締められた温もりはもう、残っていない。
鼻先を掠めた圭一の香水の匂い。
まだ、好きだと伝えたかった。でも圭一には恋人がいて、言うことが出来なかった。なぜ、別れたのか知りたくてここにくる。会社では、挨拶程度しか交わせない。と、言うのも互いに忙し過ぎるからだ。
会いたい..
圭一に会いたい
恋人と別れた理由を知りたい
しかし、どんなに待ち続けても圭一に会えることはなかった。そして都筑はまんまと佐倉の罠にかかってしまう。初めは気さくに話しかけ、都筑の寂しさをまぎらわせるだけだったが、酒の弱い都筑に呑んで嫌なことを忘れることを覚えさせた。
南は、都筑に警告をした。しかし、圭一を忘れたかった都筑は言うことを聞かなかったのだ。
そんなある日。
酔って正体不明になったところを佐倉に抱かれてしまった。丁度、社長とのことでも悩みを抱えていた時である。圭一以外と肉体関係になってしまった都筑は、絶望感に襲われた。
「だから、言わんこっちゃない」
それを見てため息をついたのは南であった。
****REAL1
「どうして、泣くの?」
指摘され、そこで初めて自分が泣いていることに気づいた。
「都筑、何が悲しいの?」
「全部、なかったことにしたい」
都筑はぎゅぅッと圭一にしがみつくと、また涙を溢した。
「圭一さんだけが良かった..」
それはレイプだった。佐倉は正体不明の酔いからでた言葉を、自分勝手に良いように解釈し都筑の初めてを奪うとそのまま都筑の身体を好き勝手し快楽に堕としていったのだ。
やっとのことで圭一が時間を作り都筑に会いに行った時には手遅れで。
「全部忘れたい」
自分は弱かった。自分を振るしかなかった圭一の立場も気持ちも知らぬまま、南の警告も聞かず自分だけが辛いと思い続けた。
「俺は咎人だ..圭一さんのこと傷つけてばかり」
“身に付けている物が欲しい”と言ったからと言って、ウン十万もするお気に入りの腕時計を都筑にポンと寄越した、この男の本心を全く考えていなかった。
「もう忘れてくれよ、頼むから。他のやつとのことなんて」
圭一に懇願されてハッとする。
「いくらでも刻むから」
「圭一さん..」
「毎日抱いてあげるから」
悲しげな圭一の瞳を都筑は見つめ返した。
「もう、他のやつのことなんて考えないで」
「ごめんなさい」
「もう、いいから。忘れよう?」
圭一が優しい口づけをくれる。都筑は目を閉じた。
****回想1
思い出は辛いことばかり。
━━━恋は打ち砕かれ、追い討ちをかけられた。
数日後、圭一が同級生の女子生徒と付き合い始めたことを知った。
昼間は、久隆の依頼を受け資料作りに奮闘していたため考えずに居られたが、夜は大崎邸の従業員食堂に入り浸っていた。
圭一が滅多に大崎邸に帰ることが出来ないことは知っていたが、一目でいいから会いたくて入り浸っているうちに、大崎邸の専属料理長の南と仲良くなっていった。
何がきっかけだったろうか?
久隆の専属運転手の佐倉と話すようになったのは。
気づけば、圭一と一緒にいられなくなってから、二年近くが経っており、圭一は大学生になっていた。
「都筑、そう言えば」
「はい?」
「圭一くんから貰った腕時計はどうしたんだ?」
それは、圭一が高校二年の時のバレンタインの時に貰った腕時計のことであった。都筑の腕には腕時計ではなく、銀のブレスレットが巻かれていた。これは、今年の..高校卒業前のバレンタインに圭一がくれたものだった。
圭一は、高校卒業と同時に恋人と別れた。あれは偽装なのではないか?と、邸内で噂されている。
相手はあの大里グループの令嬢である。
「高価なものなので、飾ってあります」
あの日、圭一は口づけをくれた。
恋人がいるくせに、どうして優しくするのだろう?
「圭一は、不器用だな」
南はそんなことを言った。
「都筑」
南と話をしていたところに、背後から声をかけられ、ドキリとしたが、佐倉であった。
「なんで、残念そうなんだ?」
****回想2
忘れなきゃいけないのだろうか?
ブレスレットを見つめる。
『都筑、あのさ..いや、なんでもない』
何を言いかけたのだろうか?
抱き締められた温もりはもう、残っていない。
鼻先を掠めた圭一の香水の匂い。
まだ、好きだと伝えたかった。でも圭一には恋人がいて、言うことが出来なかった。なぜ、別れたのか知りたくてここにくる。会社では、挨拶程度しか交わせない。と、言うのも互いに忙し過ぎるからだ。
会いたい..
圭一に会いたい
恋人と別れた理由を知りたい
しかし、どんなに待ち続けても圭一に会えることはなかった。そして都筑はまんまと佐倉の罠にかかってしまう。初めは気さくに話しかけ、都筑の寂しさをまぎらわせるだけだったが、酒の弱い都筑に呑んで嫌なことを忘れることを覚えさせた。
南は、都筑に警告をした。しかし、圭一を忘れたかった都筑は言うことを聞かなかったのだ。
そんなある日。
酔って正体不明になったところを佐倉に抱かれてしまった。丁度、社長とのことでも悩みを抱えていた時である。圭一以外と肉体関係になってしまった都筑は、絶望感に襲われた。
「だから、言わんこっちゃない」
それを見てため息をついたのは南であった。
****REAL1
「どうして、泣くの?」
指摘され、そこで初めて自分が泣いていることに気づいた。
「都筑、何が悲しいの?」
「全部、なかったことにしたい」
都筑はぎゅぅッと圭一にしがみつくと、また涙を溢した。
「圭一さんだけが良かった..」
それはレイプだった。佐倉は正体不明の酔いからでた言葉を、自分勝手に良いように解釈し都筑の初めてを奪うとそのまま都筑の身体を好き勝手し快楽に堕としていったのだ。
やっとのことで圭一が時間を作り都筑に会いに行った時には手遅れで。
「全部忘れたい」
自分は弱かった。自分を振るしかなかった圭一の立場も気持ちも知らぬまま、南の警告も聞かず自分だけが辛いと思い続けた。
「俺は咎人だ..圭一さんのこと傷つけてばかり」
“身に付けている物が欲しい”と言ったからと言って、ウン十万もするお気に入りの腕時計を都筑にポンと寄越した、この男の本心を全く考えていなかった。
「もう忘れてくれよ、頼むから。他のやつとのことなんて」
圭一に懇願されてハッとする。
「いくらでも刻むから」
「圭一さん..」
「毎日抱いてあげるから」
悲しげな圭一の瞳を都筑は見つめ返した。
「もう、他のやつのことなんて考えないで」
「ごめんなさい」
「もう、いいから。忘れよう?」
圭一が優しい口づけをくれる。都筑は目を閉じた。
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