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一章 ━━━━【咎人を愛した漆黒の天使】
2.5【絶望】
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****♡Side・圭一
****回想1
思い出す、絶望。
━━━あれは、いつのことだったか。
『うわあああああん』
大崎邸、父の書斎から聞こえた愛しい弟の泣き声。
『パパ!パパぁ!ひっく..』
『久隆、どうしたんだ?』
『うわああん、おにぃちゃあん』
泣きじゃくりながら抱きついてくる、まだ幼い弟を抱き上げると、久隆は書斎の奥の方を指差した。そこには泥酔し、横たわる父。
どうやら、動かない父を久隆は死んでしまったと思ったらしい。あれ以来である、父が会社の近くにマンションを借りたのは。
『うわあああああん』
『大丈夫、大丈夫だよ、久隆』
幼い弟を胸に抱き優しくあやしてやる。自分にとっては諦めであっても、弟にとっては大切な家族であった。
久隆の為にいくらたくさんの従業員を雇い屋敷を賑やかにしたところで、肉親の温もりには敵わない。でも、自分にはそれを父に言うことが出来ない。ただ、弟は守りたかった。悲しみから。
それなのに。
社長室のデスクに置かれた調査資料を見つめ眉を潜める。そこには“片倉”の名があった。そして“霧島 咲夜”に関する資料が。父が久隆に何をさせようとしているのか?圭一はしばらく都筑とは居られなくなるような気がした。
“霧島 咲夜”は、都筑の甥っ子。真咲の息子である。つまり、久隆に何かさせる気なら都筑を久隆につける気でいるということだ。何をさせようとしているのかは、面子を見れば圭一には一目瞭然であった。
****回想2
都筑に指令がくだった日、彼は泣きじゃくった。
大人だし、業務で泣くなんて変だと思うかもしれない。しかしこれは、二人が滅多に会うことが出来なくなることを示していた。
あの日から都筑はたまに圭一の住むマンションに来るようになっていた。
圭一は忙しく、大崎邸に帰るのが難しい時に泊まっている場所である。その頃、大里 聖と弟のことが週刊誌に憶測で色々と書かれており、目立つ行動が圭一には命取りであった。
「都筑、大丈夫だよ」
「うぅッ..」
「おいで」
都筑は、心を許せばびっくりするほど甘えん坊で、元々甘えられることの好きな圭一にはそんな都筑が可愛くてたまらなかった。
圭一の膝に突っ伏し泣きじゃくる都筑の髪をただ慰めるように優しく撫でていた。
何が悲しいの?なんて聞かなくてもわかっている。彼はもう、仕事の延長でここに来られなくなる。会社で会うことも滅多になくなるのだ。
どうして、自分はまだ子供なのだろう?
出来ることならば、今すぐにでも都筑を押し倒し自分と繋いでしまいたい。
見も心も手にいれて将来を誓いたい。
都筑が欲しい。
しかし、そんなことをしたら都筑が罪に問われてしまう。今はただ、耐えるしかない。
「圭一さん」
「うん?」
しかし、その願いは見事に打ち砕かれた。
「あなたが..好き」
あの時、圭一には絶望しかなかった。
俺も好きだよと言えたらどんなにか良かったろう?せめて、自分がもっと器用だったなら。
18になるまで待ってと言えたなら。
自信がなかったのだ。気軽に会えなくなるのにと思うと、都筑を繋ぎ止められるだけの自信が。
「ごめんね」
身を切る思いがした。
きっと、これで都筑は他の人にうばわれてしまうことだろう。何代にも渡って繰り返してきた、大崎一族と姫川一族の悲恋がまた一つ結末を迎えるだけ。
都筑はどんな顔をしていただろうか?
神様、いるのならどうか..
都筑のことを忘れさせて..
この数日後、圭一は、自分の辛さから逃れるため“大里家の次女”からの提案に乗ってしまうのだった。
****REAL1
「んッ..あ..はぁッ」
プチゅプチゅと都筑の奥の蕾に指を抜き差ししてやると都筑は切ない吐息を洩らした。
可愛い、都筑
確かに年上のはずなのに
圭一には素直に甘えてくれる彼が可愛い
「イってもいいよ?」
「いやッ..」
都筑は意地でも一緒にイク気なのだ。一度イってしまえば力が抜け入れやすいのだが、都筑は頑なであった。それはそうだ。
今日までずっと、都筑を落胆させてきたのだから。
必要ないと泣く都筑に、圭一はずっと無理矢理性欲処理を施してきた。
『いらないッ、いやだぁッ』
指と口で無理矢理。どうしても佐倉とのことがチラつき、抱けない代わりにそんなことをするのだ。性欲の処理をしてやらないと、都筑が誰かに奪われそうで圭一は不安で仕方なかった。
『浮気なんてしないからッ』
都筑を泣かせる自分も嫌だった。
『お願いッ、こんなことっ..やめてぇ』
「圭一さん」
「痛かったら言うんだよ?」
圭一は初めてだったが、そんな様子はおくびにも出さない。指を引き抜くと代わりに自分自身をあてがった。
「あ..あああ..ひぁッんッ」
「痛い?」
「ヘンッ..へんになるッ」
圭一はゆっくりゆっくりと進んでゆく。
ずっと、都筑が欲しかった。どうしようもなく欲しくてたまらなかった。
しかし、立場上諦めざるを得なかった。
考えたらいけない
“初めて”が、自分ではないことを
憎しみは今だけ
忘れなければいけない
また、繰り返してしまうから
「あッ..はぁんッ...」
「都筑、きもちい?」
すがるように問いかければ、都筑は両腕を伸ばし圭一にしがみついた。
「きもちい..圭一さんだからッ」
ゆっくりと腰を引き、押し進める。繋がった部分からは卑猥な音が二人を包む。
「圭一さんッ好き」
愛しい都筑を圭一は抱き締め返した。
「愛してるよ、都筑」
「ずっと..離れないで」
「約束するよ。だから、いいよね?」
先ほどの返事を都筑に催促する。
「ホントに俺でいいの?」
「都筑じゃなきゃダメなんだ。俺が、二十歳になったら結婚しよう?」
都筑は嬉しそうな笑みを浮かべ頷いた。
****回想1
思い出す、絶望。
━━━あれは、いつのことだったか。
『うわあああああん』
大崎邸、父の書斎から聞こえた愛しい弟の泣き声。
『パパ!パパぁ!ひっく..』
『久隆、どうしたんだ?』
『うわああん、おにぃちゃあん』
泣きじゃくりながら抱きついてくる、まだ幼い弟を抱き上げると、久隆は書斎の奥の方を指差した。そこには泥酔し、横たわる父。
どうやら、動かない父を久隆は死んでしまったと思ったらしい。あれ以来である、父が会社の近くにマンションを借りたのは。
『うわあああああん』
『大丈夫、大丈夫だよ、久隆』
幼い弟を胸に抱き優しくあやしてやる。自分にとっては諦めであっても、弟にとっては大切な家族であった。
久隆の為にいくらたくさんの従業員を雇い屋敷を賑やかにしたところで、肉親の温もりには敵わない。でも、自分にはそれを父に言うことが出来ない。ただ、弟は守りたかった。悲しみから。
それなのに。
社長室のデスクに置かれた調査資料を見つめ眉を潜める。そこには“片倉”の名があった。そして“霧島 咲夜”に関する資料が。父が久隆に何をさせようとしているのか?圭一はしばらく都筑とは居られなくなるような気がした。
“霧島 咲夜”は、都筑の甥っ子。真咲の息子である。つまり、久隆に何かさせる気なら都筑を久隆につける気でいるということだ。何をさせようとしているのかは、面子を見れば圭一には一目瞭然であった。
****回想2
都筑に指令がくだった日、彼は泣きじゃくった。
大人だし、業務で泣くなんて変だと思うかもしれない。しかしこれは、二人が滅多に会うことが出来なくなることを示していた。
あの日から都筑はたまに圭一の住むマンションに来るようになっていた。
圭一は忙しく、大崎邸に帰るのが難しい時に泊まっている場所である。その頃、大里 聖と弟のことが週刊誌に憶測で色々と書かれており、目立つ行動が圭一には命取りであった。
「都筑、大丈夫だよ」
「うぅッ..」
「おいで」
都筑は、心を許せばびっくりするほど甘えん坊で、元々甘えられることの好きな圭一にはそんな都筑が可愛くてたまらなかった。
圭一の膝に突っ伏し泣きじゃくる都筑の髪をただ慰めるように優しく撫でていた。
何が悲しいの?なんて聞かなくてもわかっている。彼はもう、仕事の延長でここに来られなくなる。会社で会うことも滅多になくなるのだ。
どうして、自分はまだ子供なのだろう?
出来ることならば、今すぐにでも都筑を押し倒し自分と繋いでしまいたい。
見も心も手にいれて将来を誓いたい。
都筑が欲しい。
しかし、そんなことをしたら都筑が罪に問われてしまう。今はただ、耐えるしかない。
「圭一さん」
「うん?」
しかし、その願いは見事に打ち砕かれた。
「あなたが..好き」
あの時、圭一には絶望しかなかった。
俺も好きだよと言えたらどんなにか良かったろう?せめて、自分がもっと器用だったなら。
18になるまで待ってと言えたなら。
自信がなかったのだ。気軽に会えなくなるのにと思うと、都筑を繋ぎ止められるだけの自信が。
「ごめんね」
身を切る思いがした。
きっと、これで都筑は他の人にうばわれてしまうことだろう。何代にも渡って繰り返してきた、大崎一族と姫川一族の悲恋がまた一つ結末を迎えるだけ。
都筑はどんな顔をしていただろうか?
神様、いるのならどうか..
都筑のことを忘れさせて..
この数日後、圭一は、自分の辛さから逃れるため“大里家の次女”からの提案に乗ってしまうのだった。
****REAL1
「んッ..あ..はぁッ」
プチゅプチゅと都筑の奥の蕾に指を抜き差ししてやると都筑は切ない吐息を洩らした。
可愛い、都筑
確かに年上のはずなのに
圭一には素直に甘えてくれる彼が可愛い
「イってもいいよ?」
「いやッ..」
都筑は意地でも一緒にイク気なのだ。一度イってしまえば力が抜け入れやすいのだが、都筑は頑なであった。それはそうだ。
今日までずっと、都筑を落胆させてきたのだから。
必要ないと泣く都筑に、圭一はずっと無理矢理性欲処理を施してきた。
『いらないッ、いやだぁッ』
指と口で無理矢理。どうしても佐倉とのことがチラつき、抱けない代わりにそんなことをするのだ。性欲の処理をしてやらないと、都筑が誰かに奪われそうで圭一は不安で仕方なかった。
『浮気なんてしないからッ』
都筑を泣かせる自分も嫌だった。
『お願いッ、こんなことっ..やめてぇ』
「圭一さん」
「痛かったら言うんだよ?」
圭一は初めてだったが、そんな様子はおくびにも出さない。指を引き抜くと代わりに自分自身をあてがった。
「あ..あああ..ひぁッんッ」
「痛い?」
「ヘンッ..へんになるッ」
圭一はゆっくりゆっくりと進んでゆく。
ずっと、都筑が欲しかった。どうしようもなく欲しくてたまらなかった。
しかし、立場上諦めざるを得なかった。
考えたらいけない
“初めて”が、自分ではないことを
憎しみは今だけ
忘れなければいけない
また、繰り返してしまうから
「あッ..はぁんッ...」
「都筑、きもちい?」
すがるように問いかければ、都筑は両腕を伸ばし圭一にしがみついた。
「きもちい..圭一さんだからッ」
ゆっくりと腰を引き、押し進める。繋がった部分からは卑猥な音が二人を包む。
「圭一さんッ好き」
愛しい都筑を圭一は抱き締め返した。
「愛してるよ、都筑」
「ずっと..離れないで」
「約束するよ。だから、いいよね?」
先ほどの返事を都筑に催促する。
「ホントに俺でいいの?」
「都筑じゃなきゃダメなんだ。俺が、二十歳になったら結婚しよう?」
都筑は嬉しそうな笑みを浮かべ頷いた。
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