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一章 ━━━━【咎人を愛した漆黒の天使】
1*陰謀にまみれた再会【微R】
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****♡Side・都筑
****REAL1
「んッ……圭一さんッ」
都筑は、”もっと”と言うように圭一の首に手を充て引き寄せた。ここまでに至るには長い道のりがあった。出逢いから実に十年の時を刻み、想いを重ねてきた。想いが通じて恋人同士となっても試練が二人の前に幾度となく立ちはだかり、苦しめ続けた。
一途な圭一の心はその出来事により、ズタズタになってしまっていた。それもこれも全部自分が悪いのだ。
愛しい彼が何度も口づけをくれる。圭一のサラサラの黒髪が指先に触れ、ドキリとする。都筑は触れる度、言葉を交わす度どんどん圭一にのめり込んでいった。好きで好きでたまらなかった。想いが通じた今、色んなことを乗り越えた今、やっと彼の腕の中でその温もりを直に感じることができたのだ。
「甘えん坊だな、都筑」
「ダメ?」
彼の端正な顔を見つめる。うっとりするほど整った圭一のその顔を。圭一は自分よりも年下だなんて思えないほど、落ち着いていて都筑は彼に甘えると安心できた。とても心地がよくて、ここが自分の居場所なんだと思える。
「いいよ。だから、俺だけに甘えて」
「んッ」
返事はさせてもらえなかった。圭一は都筑に口づけながらシャツを捲し上げその滑らかな肌に手を這わせてゆく。都筑は、彼のその綺麗な手が好きだった。圭一の左手薬指にはペアリングが煌めいて、それが二人を固く結んでいるように思え嬉しくなる。
「んんんッ」
脇腹を撫でられ、都筑の背中をゾクリと何かがかけ上がった。それは、快感の入り口。
「ああッ」
圭一は捲し上げたシャツを都筑からそのまま脱がせると、胸の飾りに舌を這わせ始めた。
****回想1
━━━━━二年前。
「頼んでないよな? なんで余計なことするんだよ!」
「今のままじゃ、接点ないでしょ」
「だからって、こんなの向こうだって望んでな..」
中から聞こえてくる言い争うようなやり取りに、本日付けて社長秘書となった“姫川 都筑”は困り果てていたのだが、後ろから来たモデルのような美女に“なにやってんの?”という視線を向けられ萎縮した。
「ちょっと、何揉めてんの?」
その女性は平気で社長室のドアを開けヅカヅカと中に入っていく。
「この人が入りづらそうにしてるじゃないのよ」
都筑は申し訳なさそうに中に入ると、先にいた学生らしき人物と目があった。彼は背が高く、端正な顔立ちをしており何故か都筑を見て固まっていた。都筑は都筑で、彼に見惚れてしまい言葉がでない。
──なぜ、こんなにドキドキするのだろう?
黒のスーツに黒に近い色のネクタイ。サラサラのストレートで艶のある髪。大学生だろうか? と思っていたら高校二年生だという。凄く大人びていて、頼りがいがありそうだという印象であった。
「ごめんね、入り辛かったよね?」
社長はそういうと、傍らで不機嫌になった彼を紹介してくれる。さっきの女性は第三秘書らしいが、とっとと資料を持って出ていってしまった。
「都筑、僕の息子の……」
何が気に入らなかったのか、紹介された彼は社長を睨み付ける。“馴れ馴れしい”と彼が呟くように言ったのを都筑は聞き逃さなかった。
「圭一」
──圭一?
あの時の?
嘘、たった八年でこんな変わるの?!
「圭一、都筑に仕事教えてあげるんだよ?」
「はあ?!」
圭一はすっとんきょうな声をあげ、社長と都筑を見比べる。
「親父はどこ行くんだよ?」
「会合」
「俺を置いてか? 正気か?」
都筑は二人のやり取りを見てなんだか不安になった。
もしかしたら自分は圭一に嫌われているのだろうか?
「いいから、あと頼んだよ?」
社長は気にせず二人を置いて社長室から出ていってしまった。
「あのっ……大崎せ……」
「圭一でいい。先輩とかやめろ」
なんて呼んでいいかわからず大崎先輩と呼ぼうとしたら止められてしまう。都筑はただじっと彼を見つめているしかなかった。圭一は溜め息を一つつくと都筑の前まで歩を進め立ち止まり、その手を伸ばし都筑の髪に触れる。袖口がずれて高級そうな腕時計が見えた。
大崎グループといえば、経営者は相当なセレブで住む世界が違うと思っていた。
「背、追い抜いたよ」
見上げれば 優しげな瞳とかち合う。不思議な子だった。
「覚えてる?俺のこと」
忘れるわけはない。兄の葬儀で泣きじゃくる自分の側でずっと慰めていてくれた子なのだから。
「ねえ、都筑」
耳元で囁かれ抱き寄せられると何かが身体中を熱くしていくのを感じた。
都筑は、恋をしていた。
彼に。
「会いたかったよ」
“ねえ、都筑は?”と聞かれ返答に困る。
この腕は回してもいいのだろうかと考えていたらスっと、圭一は離れた。
「困らせて、ごめん」
──あの時、何て言えば正解だった?
何て言えばすっと、一緒に居られたの?
どうしたら未来を変えられた?
「俺、仕事教えるの下手かもしれないけど」
都筑は圭一の香水の残り香を身に纏い、なんだか少し変な気分になった。それからしばらくは圭一に仕事を教わる毎日が続いていた。圭一は思った以上に丁寧で親切で優しくて。どんどん惹かれていった。何時しか自分は、彼の特別になりたいとおもってしまっていた。
****REAL2
ベッドの中で時折2年前のことを反芻しては圭一の名を呼ぶ。
まるで夢と現実の狭間をゆらゆらするように。
「圭一さんッ」
「辛い? 今、下も舐めてあげ……」
「違う。こんなに近くにいるのに、あなたが恋しい」
胸の飾りを執拗に舐めあげていた圭一は顔をあげ都筑を見つめた。
「もっと、ぎゅってしてほしい」
「おいで」
圭一の素肌に性的な行為で触れるのは、今日が初めてだった。彼は行為に至るにあたって、服を脱ぐことは今まで一度もなかった。いや、そこまでいかなかったのだ。一緒に風呂に入ったことは何度もあったが。
「ねえ、都筑」
「ん?」
圭一は都筑の耳たぶを軽く噛んで、肩口に唇を寄せながら優しい声で懇願する。
「一分でも一秒でもいい。俺より長く生きて欲しい」
肩を濡らすそれが唇でないと気づき、都筑はハッとした。
「お願いだから、俺を置いて逝かないで」
それは切実な願いであった。彼は自分の父が愛する人を失い悲しみ、苦しむ様を傍で十年も見続けてきた。
「親父は、死ぬために生きてる」
彼の父、奏の苦しみは都筑も知るところにある。
その苦しみから救いだそうと刹那的に間違った優しさを向けたこともあった。
「俺には耐えられない」
圭一の想いは涙という雫となって、都筑の肩を濡らし続けていくのだった。
****REAL1
「んッ……圭一さんッ」
都筑は、”もっと”と言うように圭一の首に手を充て引き寄せた。ここまでに至るには長い道のりがあった。出逢いから実に十年の時を刻み、想いを重ねてきた。想いが通じて恋人同士となっても試練が二人の前に幾度となく立ちはだかり、苦しめ続けた。
一途な圭一の心はその出来事により、ズタズタになってしまっていた。それもこれも全部自分が悪いのだ。
愛しい彼が何度も口づけをくれる。圭一のサラサラの黒髪が指先に触れ、ドキリとする。都筑は触れる度、言葉を交わす度どんどん圭一にのめり込んでいった。好きで好きでたまらなかった。想いが通じた今、色んなことを乗り越えた今、やっと彼の腕の中でその温もりを直に感じることができたのだ。
「甘えん坊だな、都筑」
「ダメ?」
彼の端正な顔を見つめる。うっとりするほど整った圭一のその顔を。圭一は自分よりも年下だなんて思えないほど、落ち着いていて都筑は彼に甘えると安心できた。とても心地がよくて、ここが自分の居場所なんだと思える。
「いいよ。だから、俺だけに甘えて」
「んッ」
返事はさせてもらえなかった。圭一は都筑に口づけながらシャツを捲し上げその滑らかな肌に手を這わせてゆく。都筑は、彼のその綺麗な手が好きだった。圭一の左手薬指にはペアリングが煌めいて、それが二人を固く結んでいるように思え嬉しくなる。
「んんんッ」
脇腹を撫でられ、都筑の背中をゾクリと何かがかけ上がった。それは、快感の入り口。
「ああッ」
圭一は捲し上げたシャツを都筑からそのまま脱がせると、胸の飾りに舌を這わせ始めた。
****回想1
━━━━━二年前。
「頼んでないよな? なんで余計なことするんだよ!」
「今のままじゃ、接点ないでしょ」
「だからって、こんなの向こうだって望んでな..」
中から聞こえてくる言い争うようなやり取りに、本日付けて社長秘書となった“姫川 都筑”は困り果てていたのだが、後ろから来たモデルのような美女に“なにやってんの?”という視線を向けられ萎縮した。
「ちょっと、何揉めてんの?」
その女性は平気で社長室のドアを開けヅカヅカと中に入っていく。
「この人が入りづらそうにしてるじゃないのよ」
都筑は申し訳なさそうに中に入ると、先にいた学生らしき人物と目があった。彼は背が高く、端正な顔立ちをしており何故か都筑を見て固まっていた。都筑は都筑で、彼に見惚れてしまい言葉がでない。
──なぜ、こんなにドキドキするのだろう?
黒のスーツに黒に近い色のネクタイ。サラサラのストレートで艶のある髪。大学生だろうか? と思っていたら高校二年生だという。凄く大人びていて、頼りがいがありそうだという印象であった。
「ごめんね、入り辛かったよね?」
社長はそういうと、傍らで不機嫌になった彼を紹介してくれる。さっきの女性は第三秘書らしいが、とっとと資料を持って出ていってしまった。
「都筑、僕の息子の……」
何が気に入らなかったのか、紹介された彼は社長を睨み付ける。“馴れ馴れしい”と彼が呟くように言ったのを都筑は聞き逃さなかった。
「圭一」
──圭一?
あの時の?
嘘、たった八年でこんな変わるの?!
「圭一、都筑に仕事教えてあげるんだよ?」
「はあ?!」
圭一はすっとんきょうな声をあげ、社長と都筑を見比べる。
「親父はどこ行くんだよ?」
「会合」
「俺を置いてか? 正気か?」
都筑は二人のやり取りを見てなんだか不安になった。
もしかしたら自分は圭一に嫌われているのだろうか?
「いいから、あと頼んだよ?」
社長は気にせず二人を置いて社長室から出ていってしまった。
「あのっ……大崎せ……」
「圭一でいい。先輩とかやめろ」
なんて呼んでいいかわからず大崎先輩と呼ぼうとしたら止められてしまう。都筑はただじっと彼を見つめているしかなかった。圭一は溜め息を一つつくと都筑の前まで歩を進め立ち止まり、その手を伸ばし都筑の髪に触れる。袖口がずれて高級そうな腕時計が見えた。
大崎グループといえば、経営者は相当なセレブで住む世界が違うと思っていた。
「背、追い抜いたよ」
見上げれば 優しげな瞳とかち合う。不思議な子だった。
「覚えてる?俺のこと」
忘れるわけはない。兄の葬儀で泣きじゃくる自分の側でずっと慰めていてくれた子なのだから。
「ねえ、都筑」
耳元で囁かれ抱き寄せられると何かが身体中を熱くしていくのを感じた。
都筑は、恋をしていた。
彼に。
「会いたかったよ」
“ねえ、都筑は?”と聞かれ返答に困る。
この腕は回してもいいのだろうかと考えていたらスっと、圭一は離れた。
「困らせて、ごめん」
──あの時、何て言えば正解だった?
何て言えばすっと、一緒に居られたの?
どうしたら未来を変えられた?
「俺、仕事教えるの下手かもしれないけど」
都筑は圭一の香水の残り香を身に纏い、なんだか少し変な気分になった。それからしばらくは圭一に仕事を教わる毎日が続いていた。圭一は思った以上に丁寧で親切で優しくて。どんどん惹かれていった。何時しか自分は、彼の特別になりたいとおもってしまっていた。
****REAL2
ベッドの中で時折2年前のことを反芻しては圭一の名を呼ぶ。
まるで夢と現実の狭間をゆらゆらするように。
「圭一さんッ」
「辛い? 今、下も舐めてあげ……」
「違う。こんなに近くにいるのに、あなたが恋しい」
胸の飾りを執拗に舐めあげていた圭一は顔をあげ都筑を見つめた。
「もっと、ぎゅってしてほしい」
「おいで」
圭一の素肌に性的な行為で触れるのは、今日が初めてだった。彼は行為に至るにあたって、服を脱ぐことは今まで一度もなかった。いや、そこまでいかなかったのだ。一緒に風呂に入ったことは何度もあったが。
「ねえ、都筑」
「ん?」
圭一は都筑の耳たぶを軽く噛んで、肩口に唇を寄せながら優しい声で懇願する。
「一分でも一秒でもいい。俺より長く生きて欲しい」
肩を濡らすそれが唇でないと気づき、都筑はハッとした。
「お願いだから、俺を置いて逝かないで」
それは切実な願いであった。彼は自分の父が愛する人を失い悲しみ、苦しむ様を傍で十年も見続けてきた。
「親父は、死ぬために生きてる」
彼の父、奏の苦しみは都筑も知るところにある。
その苦しみから救いだそうと刹那的に間違った優しさを向けたこともあった。
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